若い世代もコロナで“孤立・孤独”の割合増、万能ではないSNS 臨床心理士「つながってない自分が気になってしまう」
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 感染拡大が止まらない新型コロナウイルス。テレワークの普及や外出自粛など、人との接触を減らすことが呼びかけられている中、懸念されているのが孤立・孤独の問題だ。

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 ネット上でも、「ずっと1人で頭がおかしくなる」「コロナが収束した頃には、完全に孤独になってるだろうな」といった声が聞かれる。

 感染予防の中で、断たれてしまう他者とのつながり。孤立・孤独は、うつなどの深刻な健康問題につながることも明らかになっている。政府も今年2月、「孤独・孤立対策担当室」を設置。これらの問題に取り組む方針を示している。そんな中、ある調査結果が発表された。

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 東京都健康長寿医療センター研究所の研究チームが、去年8月から9月に行った2万8000人を対象にした調査によると、家族や親せき、友人などと、対面での交流や通話といった親しい人とのコミュニケーションをとる頻度が週1回未満だった、いわゆる社会的孤立の状態を示す人の割合が、コロナ流行前と比べ増えていることが明らかになった。

 また、男女別の割合を見ると、男性は34.4%、女性は21.4%と、女性に比べ男性が社会的孤立の状態になっていることが調査結果では示されている。調査を行った村山洋史氏は男性の社会的孤立が多く見られた理由について、テレワークの普及が大きく関係していると分析する。

 「男性のほうが社会的に孤立、あるいは社会とのつながりが少ないというのは、コロナ前でも同じような結果が出ている。コロナでテレワークが増えるとか、男性のつながりを作るメインのフィールドである『職場』というのが、関係性が希薄になっていって、多くの男性が孤独感を感じてしまっている。女性のほうが共感力、相手の話に対して相槌を打つ、同意をするという能力が高いので、そこから話がどんどん続いていきやすくて、それによっていろいろな人とのつながりが築きやすいという特徴があると思う」

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 またこの調査では、興味深いデータも浮き彫りに。この表は、年齢ごとの「孤独感」を表すグラフ。グラフを見ると、20代から30代の層にかけて大きな山ができていることがわかる。SNSなどネットを通じた他者とのつながりが多い、「デジタルネイティブ世代」がより多く孤独を感じているのだ。村山氏はこの結果について、SNSならではのつながりのもろさを指摘している。

 「コロナ禍において、人と対面で接触するのが難しい状況では、若い人たちのSNSを使いこなすというところが、社会的孤立の予防、増加の抑制につながっていると思う。ただ、SNSのつながりが万能かというとそうではなくて。相手の顔が見えないだけに、相手の言葉尻だけとらえて、字面だけ見て相手はどう思っているのかなと推し量らなければいけない。そういったSNS等を介したつながりが嫌になってしまって、孤立してしまう人であったりというのも多いのかなと思う」

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 研究チームは今回の調査結果について、「社会的孤立対策では、コロナ禍で孤立した人への支援が特に重要であり、どのような層で孤立化が深刻かを示すことができた」としていて、調査結果を今後の対策に役立てていくということだ。

 コロナで深刻化する孤独の問題について、臨床心理士で明星大学心理学部准教授の藤井靖氏は次のように話す。

 「孤独がどんどん進んでくると、精神的には誰しも考えや物の見方が極端になりやすくなる。我々は知らずしらずのうちに、自分のオリジナルな考えが前向きに自分を支える場合もあるが、一方でエスカレートするとよからぬ方向に進み、結果的に病んだり疲れたりという状態につながる場合がある。それが、人と会って一緒に仕事をしたりとか何気ない話をする中で、『そういう見方、考え方もあるんだ』と、自分でも気づかない間に取り入れられて、バランスを取っていたりすることがある。それが人とつながることの一つの意義でもあるし、人と話すことで単純に愚痴や不満などのガス抜きの場になって、ストレスが貯まるのも防ぐことにもなっていると思う」

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 また、男性のほうが影響を受けやすいという点に対しては、2つの特徴をあげる。

 「一般的に男性が人とコミュニケーションをとる時、“目的的コミュニケーション”などと言うが、何か目的があってコミュニケーションをとるパターンが多い。例えば、友達と会うのでも、ゴルフをするとかスポーツ観戦とか、僕なら写真を撮りに都内を周るとか、そこに何かがあってはじめて会うとか、コミュニケーションをとることが多いとされる。一方で、女性の“お茶をする”なんていうのは、お茶が目的なわけではない。そこでお互いさまざま吐き出せているし、例えば悩みごとやグチがあっても、解決ではなく共有を目的にできる。そういう孤独を解消する手段を持っているのはいいことだと思う。しかも、そこには単純な情報のやりとりだけがあるわけではなく、感情が言葉として乗っているのは大事なこと。

 SNSというのも多少、性差があるように思う。僕のところにカウンセリングにいらっしゃる方にSNSの使い方を聞くと、男性の場合はSNSに書いている内容や利用状況、頻度と、実際の心理的状況が相関していないように感じる。わりと調子がいい時はSNSをたくさん利用してるんだけど、調子が悪い時は使わなくなったりとか、心とちぐはぐなことを書き込んだりリプライしていることがけっこうあって。SNSでのつながりがあって孤独が解消されているというのは、そこで本音が言えたり苦しい時にコミュニケーションが取れたりすることだと思うが、それが男性の場合はあまり成立していないように思う。一般的な傾向として男性のほうが弱音を吐きにくいということもあるかもしれない」

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 さらに、特に20代においては「つながらないことが恥」だと思ってしまっているのではないかと推察した。

 「まだ自分自身というものが完全につくられる前だったりもするので、心理的には人と比べてしまう年代。孤独かどうかというのも、結局は絶対的な指標があるわけではなくて、物理的な孤独とはそんなに関係していない部分もあり、相対的な自己評価だったりする。周りの人と比べて自分が孤独だとなってしまうと、それはより精神的な孤独にもつながっていくと思う。単純につながっていることが孤独を解消するためというよりは、つながってない自分みたいなものが気になってしまって、それを解消する手段になってたりもするので、なかなか複雑だ」

 最後に藤井氏は、孤独解消の方法についても言及した。

 「社会的なつながりの薄さで孤独を定義するのも一つの視点である一方で、孤独かどうかは本人が決める部分もある。その意味では、物理的な孤独解消の手段を増やしたり、そのためのサポートは必要だが、加えて、多様な価値観を保つための啓発や、やりたいことが出来ていたり、打ち込めるものがあるなど『なりたい自分になる』という、いわば自己実現ためのサポートなども考えていく必要がある。国には、孤立や孤独について一面的に捉えることにとどまらない対策を進めていって欲しい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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