ニルヴァーナのジャケ写は性的搾取? 赤ちゃん写真の男性が30年後に提訴 「風刺を地でいく金銭問題は皮肉」
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 アメリカのロックバンド「ニルヴァーナ」が1991年に発表したヒットアルバムに使用していたジャケット写真が性的搾取にあたるという理由で、バンドメンバーなどが提訴された。

【映像】ニルヴァーナを提訴したスペンサー・エルデン氏

 問題となっているのは、乳児がプールの中で泳ぎ、目の前に釣り糸でぶら下げられたドル紙幣を掴もうとしているというジャケット写真。かわいらしい赤ちゃんとドル紙幣という対比が印象的な写真で、洋楽に詳しくない人でも一度は目にしたことがあるかもしれない。

 このジャケットは、『ネヴァーマインド』というアルバムで使用されたもので、全世界で3000万枚以上売り上げるなど、史上最も売れたアルバムの一つになっている。

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 今回、同バンドを提訴したのは、ジャケットに映っているスペンサー・エルデン氏(30)。生後4カ月の時、全裸の状態で写真は撮影された。当時、ニルヴァーナはマイナーなバンドで、両親が200ドルで撮影を了承。その後、アルバムは全世界で3000万枚以上売り上げたが、見返りを得ていないという。

 エルデン氏は「被告らは意図的に原告の児童ポルノを商業的に販売し、画像のショッキングな内容を利用して、原告を犠牲にして自らとその音楽を宣伝した」と訴えた。エルデン氏とその保護者はいずれも写真の使用を許可する文書に署名しておらず、「彼を写した商業的児童ポルノの許可ももちろんなかった」と訴状は指摘した。

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 エルデン氏は存命中の元メンバーであるデイヴ・グロール氏とクリス・ノヴォセリック氏など、計15人を相手取り、米カリフォルニア州の裁判所に提訴。各人に対して15万ドル(約1650万円)の損害賠償を求めているということだ。

 一方で、エルデン氏はアルバムの周年に合わせ、同じポーズの再現に何度も応じてきた経緯がある。BuzzFeed Japan News副編集長の神庭亮介氏は「なんで今さら感がすごく強い。彼は大人になってからも、セルフパロディのような形で同じ構図の写真を繰り返し撮っていて、メディアからの取材も度々受けている。6年前のインタビューでは『自分にとってはいつも前向きな、扉を開けてくれるものだ』とまで話している。時には複雑な心境を覗かせることもあったが、総じて前向きに受け止めていたはずなのに、なぜ30年後の今になってこんなことを言い出したのだろう? というのが率直な感想だ」と話す。

 一方、「アルバムは3000万枚以上も売れたが、被写体の自分は両親が200ドルを受け取っただけ。“あの人たちはたくさん稼いでいるのに、なんで自分たちにはこれっぽっちなんだ”という主張であれば、まだ理解できなくもない。レコード会社もたっぷり稼いだはずなので、何百万円、何千万円か“ありがとう”という気持ちであげる分にはいいと思う」とした上で、性的搾取を理由に訴えたことについては異議を唱えた。

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 「児童ポルノだから賠償しろという主張はおかしい。赤ちゃんが本能的にドル札を追いかけるジャケットは、拝金主義や金権主義に対する皮肉であって、これを見て劣情をもよおすということはないだろう。これで児童ポルノなら、ラファエロが描いた天使の絵もアウトになってしまう。数十年後になって『実はあの写真は意に沿わないものだった』というような話が横行すると、法的な安定性が損なわれるという問題もある。発売から30年の時を経て、ジャケットの風刺を地でいくような金銭問題が起こってしまったのは、皮肉としか言いようがない」

 また、神庭氏は『ネヴァーマインド』のジャケットが、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』や、キング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』といったロックの名盤と並んで、アートとしても音楽史に残るものだと指摘。

 「裸の赤ん坊であることに意味がある。『おむつを履かせればいい』とか、『ジャケットを差し替えればいい』と言う人もいるかもしれないが、それは絶対ダメ。このジャケット、アートワークも含めて、ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』という作品だ。今さら児童ポルノと言われたからといって回収したり、ジャケットを差し替えたりすべきではない。レコード会社や権利者側も含めて、断固たる対応を取るべきだと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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