世界中で今なお猛威をふるう新型コロナウイルス。様々な行動、活動が制限される中、対人競技である将棋においても、いろいろと不便なことが起きている。対局時であれば、可能な限りマスクを着用。ファンを集めての大盤解説会といったリアルイベントも、その多くが開催を見送られている。この状況で、棋士・女流棋士に影響が出ているものの一つが研究会だ。公式戦に向けてどうすれば勝てるか、新手はないかと集まった面々で検討するものだが、対面で行うことが難しくなった。ただ、タイトル経験もある実力者・高見泰地七段(28)は「この状況で得たものと失ったもの、両方ある」と、決して悪いことばかりではないという。
研究会のメインは練習対局。1局指しては、この局面はどうだったか、あの手はどうだったかと感想戦をして、次につなげていく。これまでは当たり前のように、目の前にいる相手、さらにはその場にいる別の人も一緒になりながら、検討を深めていた。「直接(対面で)やる研究会がなくなったのは激痛」であることに変わりはない。ただ、その分「関西の先生が研究会をやろうと言ってくださった」と、新たな機会に恵まれた。
将棋界は関東、関西に二分され、公式戦も組み合わせも予選などであれば関東同士、関西同士ということが多い。また日々の普及活動でも、まるで交流がないわけでもないが、基本的には関東、関西の棋士・女流棋士がそれぞれ行っている。ところがコロナ禍にあって、日本のどこにいようとも対面での研究会ができないことになり、逆にオンラインで遠方にいる人々ともつながろうという意識が高まった。「(関西棋士とは)指せないと思っていたものが、ネットでやれば楽勝でできるんだと。朝10時前とかにログインすれば指せるので、いいですよね。電車で遅れて遅刻することもないし(笑)」。慌てて身支度を整えることもなく、自宅のパソコンで必要なソフトを立ち上げれば、そこからいきなり研究会スタート。時間効率はいい。
オンラインゆえのやりづらさもある。対面であれば何も気にすることはないのに、高見七段は「動画共有サービスとかで顔出しするのが自分は嫌で。恥ずかしいじゃないですか」と苦笑いした。今や在宅勤務の会社員にも欠かせなくなった動画共有サービス。盤面だけ共有すれば事は足りるが、そこに映る自分の顔が好きではないという人も多い。「先輩が顔出しするんで、やっぱり自分も礼儀として顔出ししないといけないかなと…」と、思わぬ悩みも生んでいた。
社会全体が「人が集まる」ことに対して、何かと気を使うようになっている中、ネットサービスを使って人とつながろうとするのは将棋界とて同じこと。最近では、公式戦の場に来て、久々に駒に触るという声も聞こえるようになってきた。不便の中で便利さを見つけ、そこに順応していくのが、この状況でもパフォーマンスを落とすことなく戦い続ける道だろう。
(ABEMA/将棋チャンネルより)







