ファンの行動が社会問題化も 中国の“推し活”規制は「メリット・デメリット以前にちょっとやりすぎだ」
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 先月末、中国のインターネット規制当局は、アイドルや芸能人の人気ランキングを禁止した。中国では推しのアイドルのランキングを上げるために、ファンはネット上で“いいね”をしたり、“投げ銭”などをして好きなアイドルを応援している。

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 しかし、推しをめぐりネット上での言動が過熱し、誹謗中傷にあふれたり、投げ銭で親の金まで使いこむ未成年が増加するなど、ファンの行動が社会問題化していたのだ。

 さらに、中国当局の規制はそれだけにとどまらない。規制当局は未成年の投げ銭の禁止を発表。また、メディアを管理する国家ラジオテレビ総局は2日、「低俗で下品な」娯楽作品を排除するとして、アイドル育成番組などの放送を禁じる通知を出した。

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 この中国当局が次々と行う「ファン経済の正常化」は青少年の保護の一環だと、中国経済に詳しいジャーナリストの浦上早苗氏は話す。

 「共産党政権は青少年の健全な成長を阻害するものは全部ダメ出しをしようとしていて、オンラインゲームも週末の3時間しかやっちゃいけないというものを出したし、小学校1、2年生は宿題を出すなとか、学習塾はダメとか。アイドルはその一つの部分。青少年を暴走させて変な方向にいかせると党が判断したものを、全部今なんとか規制しようとしていて、その1つじゃないかなと」

 一方で、「エンタメ界」そのものにも、中国当局からは厳しい目が向けられている。2018年のファン・ビンビンの巨額脱税事件以降、エンタメ界の取り締まりを強化。先日も、“第2のファン・ビンビン”といわれるジェン・シュアンの脱税事件を巡り、50億円の罰金が命じられている。

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 ネット上では、「なぜ芸能人がそんなに高所得なのか?」と厳しい意見が目立つようになり、習近平国家主席も「所得分配の不均衡が将来の経済成長を脅かす」と懸念を示している。

 今後の中国当局の規制の方向性について、浦上氏は次のように話す。

 「国営メディアなどの論評を見ていたら、ようするに『芸能は本当の芸能に戻れ』みたいな感じで、過度に商業化しているというふうに思ってるのではないか。『歌手は歌うものでしょ』『俳優女優は演技をするものでしょ』っていう、芸能の本質に戻りなさいというような、論説を見るとそういう感じではある」

 中国が打ち出した今回の“推し”ファンの行動規制の数々。ただ、浦上氏は「アイドル育成番組の禁止」など、一方的な規制は解決にはなりえないと指摘する。

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 「オーディション番組、アイドル育成番組の影響力はすごく大きくて、今アイドルを目指す人ってみんなそこが登竜門になっている。どういう副作用が起きるのか、じゃあ芸能界目指す人は今後どうすればいいのかとか、その辺は常に考えていないという感じ。ファン経済が行き過ぎというのは当然あって、そこに対しては誰も否定しない。全部『はいダメ』というのは、メリットデメリットという以前に、ちょっと政府もやりすぎだ」

 党中央財経委員会では先月17日、格差是正と富の配分を強化する「共同富裕」の方針が確認された。合法的な所得は保護するものの、「過剰な高所得を合理的に調整する」という考えだ。ニュース解説YouTuberで「The HEADLINE」編集長の石田健氏は、このキーワードに関連して、2つの側面から指摘した。

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 「中国は長らく経済成長を目指してきて、最初は先富論といって、格差を許容して一部の人や地域が豊かになってもいい、成長した後に格差を是正していこうという考えがあった。共同富裕が急に始まったのではなくて、そういう歴史の中で、みんなで豊かになろうというタイミングにきている。

 じゃあそれがなぜ推し活の禁止につながっているかというと、1つはまず国内に向けて共同富裕をしっかりやっていくという強いアピールになる。共同富裕というのは長年メッセージとして出ていたが、特に2020年頃から強く打ち出され始めた。ちょうど小康社会という、みんながそこそこ豊かに暮らせる社会が達成できたと習近平が言っていたが、だからこそ今が格差是正のタイミングだということで、わかりやすくエンタメや学習塾、ゲームといった、ある種目玉になる政策を打ち出すことで、本格的に共同富裕に向けて手をうっていくということ。

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 2つ目は、これは経済政策ではなく、イデオロギー政策の面も強いところにある。これは言い換えると、消費主義や過度な商業主義の禁止というところにつながってくる。再分配をするとかみんなで豊かになって格差を是正していく、これは一見すると経済政策だが、中国の中には、これは悪しき資本主義の産物だという意識がある。資本主義に対して否定的に見るからこそ、例えばヨーロッパからきた西洋の文化としてみなされるようなアイドルやゲーム、過度な競争といったものを一つずつ攻撃していく。こういうところで、中国式の社会主義のイデオロギーが優れているということをアピールするために共同富裕、その代表格としてのエンタメへの攻撃があるのではないか。いわゆるK-POP出身のアイドルが中国で活躍していることもあって、そういったものを断ち切りたいというところもまとめてできたのだと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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