「ES細胞」で女性同士の子どもが出産可能に? 専門家「ヒトへの応用はまだ」
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 京都大学高等研究院の斎藤通紀(みちのり)教授らのチームが8日、ES細胞から「精子幹細胞」と呼ばれる、精子の元になる細胞を効率的に作り出す研究に成功したことを発表した。

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 研究では、精子の元になる「精子幹細胞」をマウスの精巣の組織と共に培養し、精子になるまで成熟させたものを卵子に受精させたところ、健康なマウスの赤ちゃんが生まれたという。ES細胞などを使い、試験管の中だけで生殖細胞を作り出す技術は、精子では初となる。

「成果のポイントにつきましては、ES細胞から精子まで、オス生殖細胞の全分化過程を試験管内で再構成できた。これは世界で初めての報告であります。オス生殖細胞の途中の分化過程というのを解析する方法論に新たな可能性を提供するということです」(斎藤教授)

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 試験管の中だけで、精子ができる過程を再現できる――。今後、不妊治療の研究にも役立つ可能性もある。去年、ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、不妊治療に取り組む男性・オオタさん(43歳)を取材。3年ほど前に行った結婚前のブライダルチェックで、精子の数が一般的な数値よりも少ない「高度乏精子症」と診断された。オオタさんは、今回京都大学が発表した新技術について「第一印象は『怖い』と思った」と話す。

「体外受精のような生命同士をくっつける技術であっても、成功の当たりはずれがあります。生命の元自体を生み出す技術は受け入れにくいと感じました。もう一つは『飛躍しすぎ』と感じました。医療は対処療法で、薬にしても治療に『回復させる』という概念ではなく『治す』という考えです。男性不妊の4割が原因不明ですが、その研究や解明がされないまま対処療法だけが進んでいくのはどうなのか」(オオタさん/仮名・43歳)

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 一方で「男性不妊の治療方法が発展して、精子提供などがもっと柔軟に行われてほしい」と“男性不妊”への関心が高まることには「期待している」というオオタさん。今回の京都大学が発表した研究結果について、専門家はどのように見ているのだろうか。

 日本初の個人向け大規模遺伝子検査・解析サービスを手がけるGenequest(ジーンクエスト)の代表取締役・高橋祥子氏は「ES細胞はどのような細胞にもなれる元の細胞。精子の元にする研究は今までずっと行われていて、正常なマウスの子どもが生まれた結果は非常に興味深い」と語る。

「直接ヒトにも応用できるかというと、まだ非常にハードルがあると思う。ES細胞によって作られた精子が本当に安全なのかどうか、確立されていない。まず、本当に安全かどうか調べるハードルが高い。研究の分野では、不妊をどうやったら解決できるのか、男性不妊が起きる原因の研究に活用できると思う」

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 京都大学の実験では、ES細胞から作られたマウスの精子を雌のマウスから採った卵子と受精させた。その受精卵を別の雌の子宮に移植した結果、雄雌1匹ずつ子どもが生まれた。この技術を応用すれば、将来的に女性同士で子どもを出産することも可能なのだろうか。

 この質問に高橋氏は「それはフィクションでアートだ」とした上で「女性のパートナー同士で遺伝子情報を読み取って、子どもを作ることも技術的にはできるだろう。だが、それが安全かどうかまだわかっていない。遺伝子疾患を発症しやすい子どもが生まれる可能性もある」と述べた。 (『ABEMAヒルズ』より)

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