「日本初の『出世払い』。就職に成功するまで、授業料を支払う必要はありません」
ホームページのトップに衝撃のコピーを掲載しているのが、プログラミングを学べる「CODEGYM ISA」。ISA(所得分配契約)とは、「所得に連動した学費の出世払い」のこと。在学中は学費が発生せず、支払いが始まるのは卒業後、就職して年収が276万円以上になってからとなる。
『ABEMAヒルズ』では、CODEGYM ISAの鶴田浩之代表に話を聞いた。
「個人の可能性の考え方に対する、ある種の投資のような考え方に近いんですけども。今はお金がなかったりする方でも、意欲と時間がある方に平等に挑戦できる機会を提供したいと」
給与の10%を30カ月にわたり後払いで支払うため、総支払額は年収によって変動する。スクール側としては、卒業生の年収が高くなるほど回収額が多くなるものの、年収が276万円に達しなければ貸し倒れのリスクも抱える。
そのため、民間のスクールにもかかわらず、受講できるのは選考を通った人に限られており、入学倍率は3.5倍。選考の指標は、現在の能力やスキルではなく、学びの意欲と目的意識を持っているかどうかだ。
「けっこうふわっとした、例えば『お金持ちになりたいです』みたいな形だと、勉強を続けるために必要なモチベーションが長続きすることが難しかったりする。やっぱり具体的に、『こういう人になりたい』『このような人に憧れて』とか『こういった本を読んで自分も影響を受けた』など、エピソードを持っている方は、学習を続ける上でも粘り強くやっていた傾向がこれまでも多く見られた。過去のデータを分析しつつ、それを参考に入校を受け入れ、ISAのカルチャーに合いそうな方を受け入れさせていただいている」
最近では、初期費用をかけずに就職につながるとして、高校生が卒業後の進路として選ぶこともあるということだ。
また、こうした出世払い方式は大学でも採用されている。コロナ禍で困窮した学生を救うため急遽、「HECS型」と呼ばれる奨学金を新設したのが、関西学院大学だ。給与所得者の場合、大学卒業後に年収400万円以上稼げるようになるまで返済が猶予され、毎月の返済額も借りた人が決められる。
冨田宏治副学長は次のように話す。
「普通の奨学金は、卒業したらすぐに返金が義務付けられてしまう。だけど、HECS型というのは、返済能力ができてから返せばいいよと。だいたい困っている学生は、いろんな奨学金を借りている可能性がある。このコロナ禍の経済的困窮で、新たにHECSを借りた人たちが困らない程度の返済額ってどうかな。痛くはないとは言えないけど、年収400万になって、月に1万円ずつの返済だったら、まあなんとかできるかなと」
HECS型を導入した背景には、従来型の奨学金では救えない学生の存在もあった。問題となるのは、「親の収入要件」。多くの奨学金は、親など保証人の収入を基準として支給の可否が決まる。
コロナ禍で臨時に設けられた奨学金でも、親や保証人の収入がどれだけ減ったかという証明が必要だった。しかし、3割ほどの学生は、親の収入に関係なく自分で学費や生活費をまかなっているということで、そうした学生は奨学金が受け取れないことになる。
「そういった学生がコロナの感染拡大の中で、いの一番にアルバイトを失うわけだ。時間短縮とか営業自粛だとか、そういう学生が本当に困っている。その学生たちを従来の奨学金、親御さんの所得に連動する奨学金だけだとすくい取れない、救えない。そういう判断があってHECS型を考えた」(同)
自活する学生にとっては頼もしい制度。ただ、大学側としては、毎年学生ごとに所得証明を受け取り、「年収400万円に達しているか」「返済額をいくらにするか」を確認するなど、膨大な作業が必要になる。
「非常時だからなんとかしてよ、と事務方にはお願いしたんだけど、日常業務としてずっとやりつづけるとすると大変。本当に困っている学生、満額借りている学生は、HECSがなければ大学を辞めていたわけだ。そのことを思えばこの非常時にやってよかったとは思う。大変だけど」(同)
さらに、今後も継続するかについては、「まさにパンドラの箱を開けてしまった」と複雑な心境も明かした。
「今までは、奨学金=親の所得に連動する、という決め打ち。昔から一定数の学生は自活してきたが、そこは見ないようにしていた。ポストコロナで(HECS型を継続するか)また悩まなければならない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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