河野氏に乗っかる理由は自民党改革よりも自分の選挙? 総裁選をめぐる若手議員と参議院議員の思惑
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 金曜に迫った自民党総裁選の告示日。前回の総裁選にも出馬、議員票を固めた岸田文雄前政調会長の選出を有力視する見方もある一方、世論調査を反映しやすいとされる党員票の動向によっては、国民人気が高く、“ポスト菅”にも擬せられてきた小泉進次郎環境大臣や石破茂元幹事長が支援する河野太郎行政改革担当大臣が優勢になるとの見方を示す識者も少なくない。

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 党内の7派閥のうち最大の細田派や麻生派など6派閥が事実上の“自主投票”となる中、メディアが票読み合戦の様相を呈していることについて、リディラバ代表の安部敏樹氏は「政策が立案されていく過程が可視化されるという意味もあるが、自民党は総裁選の話題でメディアをジャックすることによって浮揚を狙っている部分もあると思う。そうだとしたら、メディアは野党の政策立案プロセスについても1カ月かけて報道しなければ、第一党と第二党の間の競争も行われないと思う」と苦言を呈する。

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 その上で、「これまでの8年間を誰か総括してくれているのか。民主主義的な観点からすれば、これまでの系譜を引き継ぐと言っている高市さんが先頭に立って野党と議論し、最終的に衆議院選挙で決まるというのが総括としては正しい。岸田さんはそうでもないと思うし、河野さんも麻生さんに首根っこを掴まれている。政策を進めるためには権力を長期的に握り、勝負してもいいと官僚に思ってもらえないと難しい。河野さんが本当に脱原発を実現させたいのなら、上の世代や偉い人たちの顔色なんか見ていてはいけない。ここで勝負に出るというなら、5年、10年総理をする、負けたら後はないという覚悟、上の世代を一掃する覚悟で踏み込みこんでいくべきだと思う。それこそ二階さんと組んで小池さんや橋下さんを引き出し、もう“安倍・麻生はさようなら”とか、そういう手を打っていかないと、残されたカードは少ない。それがないから、安倍さんや麻生さんに“今度お前のところの選挙の応援行ってやるから”などと口説かれ、切り崩されてしまう」と指摘した。

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 また、政治家コンサルタントの鈴鹿久美子氏は「今回の総裁選は、国民に興味を持ってもらったという意味では成功していると思う。ここが自民党の強いところだ。野党はこれができていない。ただし、現実的に生活が変わったという実感を持たせないと、自民党もダメになる」と指摘。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏も「コミュ力の高い河野さんなら選挙にも勝てるという期待もあるのかもしれないが、政治家には理念・哲学と、官僚も含めた取りまとめ力・政策遂行能力も必要だと思う。その点、河野さんは安倍政権の哲学をそのまま引き継いでいる感じがする高市さんに比べて、理念がわかりにくい。実際、脱原発もすぐ引っ込めてしまったし、例えばマクロ経済について岸田さんはアベノミクスを継承しないと言い、高市さんは継承すると言う。しかし河野さんは法人減税とかフワッとしたことしか言わない。全体的に総花的で、フワッとしている感も否めないのが不安材料だ。また、石破さん・小泉さんと組むことで、かえって党内で浮くということはないのか」と懸念を示した。

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 これに対し、元日本テレビ政治部記者の青山和弘氏は「河野さんとしても、勝てばいいというわけではない。なぜなら、その後は党内をまとめ、政府をまとめ、政策を遂行していかなければならないからだ。その意味では、勝てるかもしれないと思っていればこそ、“焼け野原”にすることはできない。そこが大変なジレンマになっていると思う。佐々木さんの指摘通り、河野さんは菅さんに似ていて、大きな国家像とか理念があって、その中に政策がストーリーとして紐づいているタイプではなく、目についた疑問点をバーンと突破していくタイプだ」、ジャッグジャパン代表で選挙コンサルタントの大濱崎卓真氏は「河野さん中心の議論になってしまうのは致し方ないのかなと思うが、投票となった時、果たして5割、6割を取れるのか。記者会見でいろいろぼかしてしまったところとか、今回の議論の中であったところがどこまで出てくるのかが一つ鍵になってくると思う」と分析した。

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 視聴者からは「小泉純一郎さんが自民党をぶっ壊すと言ったけど、あの時って壊れたの?」とのコメントも寄せられた。元テレビ朝日官邸キャップで政治ジャーナリストの細川隆三氏は「壊れてはいないし、小泉さんみたいに突き抜ける人もいない。異端児と言われていた河野太郎さんも、脱原発などを封印し、凡人になってしまった。年が明けて通常国会が始まれば、野党は集中的にそこを聞いてくるだろう。だから国会議員の人たちも、“河野さんで大丈夫かな”という感じになっているのだと思う。来年に選挙を控えた参議院議員との温度差も非常にある」との見方を示した。

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 さらに佐々木氏は、岸田氏・高市氏についても「高市さんがテレビ番組で“何となく地上波を見ていたら、私が右翼扱いをされているような気がして仕方がない”と発言して話題になっていたが、たしかに左・リベラル系の人から極右だと思われて嫌われている。しかし内面はリベラルで、保守層受けすることを言っているだけなのかなという気がしなくもない。それこそ安倍前総理だって極右のような本を出しておいて、実際の経済政策はリベラルだったし、高市さんもアベノミクス継承、2%インフレ目標は継続、プライマリーバランスを戻すのは凍結するという踏み込んだ発言をしている。一方、岸田さんは“新自由主義を捨てる”と言っているが、アベノミクスに関していえば新自由主義というよりは“大きな政府”の政策だったわけで、党内リベラルを自認している人や、左の人に受けるように言っているのではないか。実際に経済思想についてどう思っているのか詰めてほしいと思うが、そういうことやっているメディアがない」とコメント。

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 これに青山氏は「岸田さんは経済的にも多様性についても元々リベラルなタイプなので立憲民主党の主張とかなり近いところもあるが、高市さんはその真逆だ。本音かどうかは別として、保守層を固めるのがレーゾンデートルだから、姿勢ははっきりしている。また、岸田さんは2位・3位連合、つまり決選投票のことが頭から離れない。そうなれば、高市さんを応援していた人たちに乗っかってもらってようやく河野さんを逆転できるわけだ。そのための布石を打つ意味で保守的な話をしているという状況だろう」と応じた。

■『党風一新の会』は新たな派閥か

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 議論を受け、慶應義塾大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は、「“どうしたいか”じゃなくて、“誰が応援するか”によって表明しなきゃいけない社会が残念だが、結局のところ、日本の政治は直接民主主義ではないのでチーム選びになる。そして、チームの側は生き残れるよう模索する。自民党が強いのも、理由はそこにあると思う。これだけ内部でガチンコの戦いをやっているのに、党としては分裂しない。他の党であれば、党を割ってどんどん縮小化していくだろう。派閥が弱くなったと言われるが、価値観、政策が違う人たちがこれだけ中にいるという意味では、意外と多様性のある組織だなと感じる。だからこそ新陳代謝も起きる」とコメント。

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 佐々木氏は「派閥と聞くと、特に55年体制の頃は利権誘導をするような悪いイメージがあったが、政権交代しない代わりに自民党内で政策集団による政権交代みたいなことが行われやすくなるという意味もあった。今回、福田康夫元総理の息子さんである福田達夫衆議院議員を中心に、『党風一新の会』という若手議員が90名ほど集まった集団ができた。これが今後、派閥に拮抗するくらいの力を持つようになるのだろうか」。

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 細川氏は「福田達夫さんたちは古い自民党の体質を変えないといけないと言ってきた。その古い自民党の象徴が派閥政治で、親分が右を向けと言ったら右向く。しかし、そういう時代であない、自分たちで考えて1票を投じようというのが、この党風一新の会のスタンスだ。ただ、果たしてこの90人が今回の総裁選でも行動できるのかはわからない」との見方を示す。

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 「自民党の衆議院議員のうち、3回生以下の若い人たちは50%近くもいるが、自分の力で当選してきた人は何人かしかいないと思う。その象徴が福田達夫さんで、選挙に強いからこそ、こういうことが言えるのだと思う。そうでない人は、やっぱり安倍さんや麻生さんとかにお世話になって当選した。総裁選は無記名投票だが、派閥の親分に言われればビビる人もいるだろう」。

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 青山氏は「中選挙区制の時代は一つの選挙区に自民党から5人出て3人通るような状況だったので、どの派閥に属しているかで勝っていくし、結束力もあった。当然、親分に歯向かうこともできなかった。でも小選挙区の今はそうではない。特に今の3回生までは安倍さんの勢いがある、野党にいまいち勢いがない、という中、選挙運動もろくにしないで“風”で通ってきている人が多い。だから安倍さんや麻生さんに言われると怖い。

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 それでも総理・総裁が誰になるかが影響してくるからこそ、自分が選挙で生きるか死ぬかを考えれば、派閥の論理なんて関係ないということになる。今回の総裁選で、派閥はますます崩壊の過程を辿ると思う。派閥の上下ではなく横で仲良くなると“上が詰まっている”という話にもなるし、だからこそ河野さんによって時計の針を回そうという、世代間抗争の色が出てきた。一方、細川さんが先ほど言われたとおり、1年後には参議院選挙がある。だから“河野さん1年後まで持つかな。やっぱり岸田さんの方がいいかな”という人も参議院には多く、党内の温度差も不思議な感じがしている」。

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 鈴鹿氏は「福田達夫さんはとてもいい方だと言う評判で、秘書の間でもとても人気があり、彼の言うことなら何とかまとまろうという機運もあるようだ。おじいさまの福田赳夫元総理が昔、『党風刷新連盟』というものを作った。これは当時の池田勇人総理の経済政策に反対している人によるグループで、今の福田派の前身だ。ここに希望を持ち、“新しい革命だ”と言っている議員もいるそうだ。これが固まれば、新しい派閥になる」と解説。

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 その上で、「人にもよるが、3回生以下の方々は選挙が弱い。それどころか、選挙のやり方を知らない人もいる。私は衆議院の時も参議院の時も可能な限り全国の選挙事務所や演説を見て回るが、党員と党友を集めていない。名簿を持っていない。上から怒られても、選挙には勝てるので、いいじゃんと言う人も多い。事務所の秘書も仕事をろくにしないので暇だ。一方で、全部で126人いる3回生以下の中には、選挙区を持っていない人もいる。今のまま大人しくしていたらまた比例だ、二階さん82歳、麻生さん80歳、菅さん72歳だ、もう上には出て行ってほしいと思っている人もいる。そういう人たちが、親分の言う通りに書きますと言っておきながら、こっそり国民人気があり、党員票がたくさん入る候補に加担しようとしているのではないか」とも話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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