マグロの中でも最も大きく、「マグロの王様」と呼ばれる太平洋クロマグロが、絶滅危惧種になっているほど数が減っている。

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おととし国際会議が開かれ、去年から30キロ未満の未成魚、卵が産めないマグロの漁獲量を半減させる国際的な取り組みが始まっている。日本では、水産庁が全国を6つの海域に分けて地域別の幼魚漁獲の上限を示し、上限まで近づいた場合には、都道府県を通じて操業の自粛を要請することにしている。規制を見据えて養殖業者は、養殖マグロをより大きく育てるなどの対策を進めているところだ。

一方で、釣り竿1本で釣り上げる近海クロマグロでは「北の大間、西の壱岐」と称される一大水揚げ港、長崎県の離島・壱岐では、漁師たちが自ら立ち上がっている。

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■壱岐市マグロ資源を考える会会長・中村稔さんにインタビュー

壱岐の漁師たちは「水産庁が決めた未成魚の漁獲制限だけでは不十分」として、クロマグロの産卵時期である昨日6月1日から2か月間、自らが禁漁することを決めた。禁漁の対象は、卵を産める親のマグロだ。

1日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、壱岐市マグロ資源を考える会会長・中村稔さんが中継出演。禁漁についての考えなどを聞いた。

――なかなか大変な決断だったと思いますが。

中村:大変ですけど、将来のこととか考えると、漁を続けるためには早く回復させることが大事だなと思って、やっています。

――国や行政は。

中村:国には訴えているんですけれど、やっぱり自分たちでしなくてはいけないくらい危機的な状況なんです。

――2ケ月休んでどれくらい回復するものなんですか

中村:わからないんですけど、回復して欲しいという気持ちでやっています

――自主地域はどのくらいの範囲で、禁漁する人数は?

中村:壱岐と対馬、1000人近い漁師が協力し合っています。

――反対運動などはありませんでしたか。

中村:自分たちが我慢することでどれくらい増えるのかという(懐疑的な)人もいますけど、やらなくてはと。

――自分たちだけではなく、他の地域の漁師と連携して禁漁できるものでしょうか? みんなでやらないといけないのではないか、という意見については。

中村:誰かが始めないといけない。産卵期になるとマグロは卵を産みやすい場所に集まってくるので、そのあたりの海域だけでも産ませたいなあと。マグロの赤ちゃんが前はたくさんいた。それがいなくなっているので、産ませないことには増えないなあという実感があります。

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■なぜ世界的に天然クロマグロの水揚げ量が減ってきているのか

原因はいろいろあるが、天然クロマグロの水揚げ量が減ってきている理由として、

・中国や台湾の漁船による乱獲

世界的な日本食ブーム

・蓄養

の3つが挙げられる。

蓄養とは、天然マグロの稚魚を捕まえて、いけすで育てる方法。自然の中で繁殖しなくなるため、どんどん天然ものが減っていくのだ。いまや日本のお寿司屋さんで出るマグロの3分の1は、この蓄養マグロという。また、北太平洋まぐろ類国際科学委員会によると、20年前に比べ、天然マグロの数は半分以下。

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■長崎県のクロマグロの漁獲量

長崎県でも、もっとも多かった2008年には4836トンの水揚げがあったが、2013年には半分以下の1306トンまで減り、その後も、完全には回復していない。番組では、クロマグロの資源の状況などを研究している東京海洋大学准教授の勝川俊雄さんがゲスト出演し、クロマグロ漁獲量について解説した。

勝川:まず、親魚資源量の推移をみてみると、1984年は1.9万トン。その後8万トンくらいになったが今2.6万トンといわれている。ただ、計算しなおすたびに値がさがっていく。今年計算しなおしたら、実は2.6万トンの半分しかいなかったともいわれています。

――資源量とは、どのような計算方法で算出されているのでしょうか?

勝川:海の中の魚の数を把握するのは非常に難しい。魚が減ると頑張って獲るから、漁獲量は、資源が減ってもそんなに減らない。

――国内での規制は始まっているのでしょうか?

勝川:国際的に2002年から2004年の漁獲量の半分にしようという取り決めがありますが、もともと今の倍以上いたから、半分にしても意味がない。20年以上生きている魚を、毎年親の半分の量とっていたら、いなくなってしまうのも当然。資源量が半分なら漁獲量も半分など対応していかないと、いまのままで好転するとは思えない。

勝川さんは、「太平洋や、日本の周辺にいるクロマグロは減っていますが、大西洋では規制効果によって増えています。マグロはたくさん卵を産んで成長もはやいし、ちゃんと規制をすれば回復の可能性はある」とも解説する。日頃何気なく食べているマグロ。その裏には、さまざまな事情が渦巻いている。


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