ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が発動した30万人規模の部分動員に関連して、ロシア・サッカー界が誇る大物にも“招集令状”が届いたようだ。EURO2008でのベスト4進出に貢献した元ロシア代表MF、ディニヤル・ビリャレトディノフ氏である。
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かつてエバートンやロコモティフ・モスクワで声価を高めた名手は現在37歳。彼の元に令状が届いたのは、現地9月28日だった。ロシア・メディア『Sport24』は「ビリャレトディノフ本人は沈黙を守っているが、父親が状況を説明してくれた」と記し、次のように父リナトさんのコメントを紹介している。
「ああ、確かにディニヤルは召喚状を受け取ったよ。でもまだ具体的な行動には出ていない。彼は19年前、ユースチームに所属していた頃に軍隊に籍を置いたことはあったが、あくまでスポーツの範囲内の形式的なものであって、兵役ではなかったんだ。法律上も35歳以下の予備役が召喚の対象者なのに、彼はもう37歳だよ。どうにも矛盾がある」
と、今回の招集に疑問を呈するリナトさんだが、「もし正式な手続きのものならば、彼はカザフスタンやトルコへの鉄道チケットを買ったりはしない。つまり逃げたりはしないってことだ」と強調した。
一部では他の人物と間違って令状が送付されたとの報道もあり、ロシア国内でも情報が錯綜している。かつてロシア代表でビリャレトディノフ氏と共に闘ったFWロマン・パブリュチェンコ氏は『RIA Novosti』の取材に応じ、「たぶん間違いじゃないかな。周りでも誤送されて召喚状を返したひとがけっこういるんだ。ディニヤルが凄腕の戦車隊員やスナイパーなら話は別だけども」と、冗談を交えて話している。
ロシア・スポーツ界ではサッカーのみならず、現役フィギュアスケーターのドミトリ・アリエフとマカル・イグナトフ、総合格闘技家のウラジミール・ミネフ、さらにはボクシングの元世界ヘビー級王者であるニコライ・ワルエフ氏にも令状が届いた。予備役であるワルエフ氏に至っては現在49歳だが、「かならず入隊する。来週にでもね」とSNS上で決意を明かして話題を呼んでいる。
ビリャレトディノフ氏の招集に関して『Sport24』は「かなり不可思議な状況となっており、真相が掴めていないが、もはやこの情勢下では何が起こってもおかしくない」との文言で締めくくっている。ロシア国内ではここ数日、国防省事務局による選抜システムの杜撰さが指摘され、招集令状の誤送が頻発しているのも事実のようだ。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部