バイエルン・ミュンヘンで築いたストライカーとしての地位

ポーランドの英雄ロベルト・レヴァンドフスキはドルトムントやバイエルン・ミュンヘンなどブンデスリーガのビッグクラブを渡り歩き、今シーズンからバルセロナの背番号9を背負うセンターフォワードだ。

2019-2020シーズンのUEFA 欧州最優秀選手賞受賞者であり、7度のブンデスリーガ得点王、2019-2020シーズンにはブンデスリーガ新記録となる11試合連続ゴールを記録している。また、ブンデスリーガにおける1シーズンでの最高得点記録(41点)を残すなど、リーグを代表するゴールマシーンとして活躍してきた。

2006-2007シーズンからポーランドのズニチュ・プルシュクフでプロキャリアをスタートすると、その年に3部リーグで15ゴールを記録して優勝に貢献。自身は得点王を獲得して、チームの2部昇格に大きく貢献した。すると2007-2008シーズンには2部リーグで21ゴールを決めて、わずか2シーズンでの1部昇格に貢献した。

その後、レフ・ポズナンを経て、2010年7月1日にドイツのボルシア・ドルトムントへ移籍し、4年契約を締結。移籍初年度は同じく加入一年目の日本代表MF香川真司とともにチームの優勝に貢献。2011-2012シーズンからポジションを奪うと、22ゴールを挙げてドルトムントのブンデスリーガ連覇に貢献した。2012-2013シーズンもチームのエースに君臨すると、公式戦49試合36ゴールを挙げて2シーズン連続となる30ゴール超えとなるなど爆発的な得点力を見せる。さらに2013-2014シーズンはブンデスリーガで20ゴールを奪い、初の得点王に輝いた。

ドルトムントでの活躍が認められると、2014年7月1日からドイツの盟主、バイエルン・ミュンヘンへと移籍。バイエルンでも1年目からストライカーとして活躍すると、2シーズン目の2015年9月22日に行われたヴォルフスブルク戦で伝説的な記録を残す。

後半から途中出場したレヴァンドフスキは、51分に同点ゴールを決めると、52分、55分と立て続けにゴールを決めてブンデスリーガ史上最速となる3分22秒でハットトリックを達成した。

しかし怪物っぷりはこれで終わりではなく、57分には、ブンデスリーガ史上最速となる5分42秒で4点目を決める。60分には、ブンデスリーガ史上最速のわずか8分59秒で5点目を決める快挙を達成した。

その後も安定的にゴールを積み重ねていくと、2022年1月15日のケルン戦ではブンデスリーガ通算300得点を達成。これはゲルト・ミュラー以来、史上2人目の記録だ。

バイエルンでは8シーズンで公式戦375試合に出場し344ゴールを奪うなど、圧倒的な成績を残したレヴァンドフスキ。2022年7月19日にバルセロナへの移籍が発表された。新天地でも第2節のレアル・ソシエダ戦で早速結果を残す。移籍後初ゴールを含む2得点を決めると、第6節のエルチェ戦では5試合連続ゴールを決めて、チームの5連勝に貢献した。

足元の技術も高い生粋の点取り屋

レヴァンドフスキは、どちらかといえば古典的なストライカーといえる。昨今のサッカーは、連動しながらゴールを目指すシーンが増えている。それによりFWも中盤まで降りてきて、ビルドアップへの参加が求められることが多くなった。しかしレヴァンドフスキは、ボックス内でどっしりと構えることで強さを発揮するタイプの選手だ。

そんな彼の長所は、ポジショニングの良さとフィジカルの強さ、そして高い決定力にある。

ストライカーらしくボールがくる位置の見定めが秀逸で、誰よりも早くそのポジションに入り、味方のパスを待つ。ドルトムント時代はトップ下に入る香川真司、バイエルン時代はトーマス・ミュラーなどのパスをうまく引き出すポジショニングからゴールを奪ってきた。

また、レヴァンドフスキは185cm・79kgとFWとしてはそれほど大柄の選手というわけではない。それでも、体を当てられて倒れないフィジカルの強さも武器の1つだ。各クラブの屈強なディフェンダーたちと対峙しても当たり負けしない力強さが、ゴールを量産できている要因の一つである。

そして一番の武器は決定力だ。常にゴールへの意識を高く持っており、ループシュートや反転してからのシュート、ヒールで流し込むシュートなどさまざまな得点パターンを持っている。さらにゴール前での冷静さは傑出しており、キーパーとの一対一はほとんど外さない。そして、見落とされがちだが、キックの正確性も高く、直接フリーキックでも多くのゴールを奪っている。

そのほかにも跳躍力が高く、ロングボールをヘディングで味方に落とすプレーもできる上に、足元の技術も高い。それらを活かした前線でのポストプレーも武器の一つだ。

ベテランと呼ばれる年齢になったレヴァンドフスキだが、得点感覚と意欲はまだまだ衰え知らず。今後もゴール量産が期待できる選手だ。

歴代最多得点記録を持つポーランドの英雄

レヴァンドフスキがポーランド代表デビューを飾ったのは、2008年9月10日に行われたFIFAワールドカップ南アフリカ2010・欧州予選のサンマリノ戦。この試合では初得点も記録した。

さらに2009年以降は、ポーランド代表の背番号9番を背負い、センターフォワードとして活躍している。すると自国開催となったUEFA EURO2012では開幕戦のギリシャ戦でオープニングゴールとなる先制点を挙げて、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。

UEFA EURO 2016予選ではエースとしての活躍が期待されると、2位通過をかけて負けられないアイルランドとの最終戦で決勝ゴールをマーク。この得点で、予選13得点とし、デイヴィッド・ヒーリー氏が持っていたEURO予選の得点記録に並び、チームの予選突破に大きく貢献した。

さらにFIFAワールドカップロシア2018の欧州予選では16ゴールを奪い、こちらも予選の歴代最多得点記録となるなど、代表チームでもゴールを量産。2017年10月5日に行われたアルメリア戦でハットトリックを達成し、ヴォジミエシュ・ルバンスキの持つ48ゴールを上回って、通算50ゴールを達成。現在はそのゴール数を「76」にまで伸ばしている。

圧倒的な得点能力を持ち、クラブチームでは数々のタイトルを獲得してきたレヴァンドフスキだが、前回のワールドカップではゴールを奪うことができずにチームもグループリーグ敗退。その悔しさを晴らすためにも、今大会にかける思いは強い。34歳を迎え、名門バルセロナへ加入し磐石の状態で迎えるワールドカップで自身の実力を示し、ポーランドを高みに導くことができるのか期待がかかる。

文・渡邉知晃

写真:AP/アフロ