11月20日に開幕するFIFAワールドカップカタール2022。フランス、デンマーク、オーストラリア、チュニジアが同居するグループDを展望する。

本命◎:フランス
対抗◯:デンマーク
3番手▲:オーストラリア
蓮下△:チュニジア

王者フランスと欧州選手権で躍進したデンマークの2強

前回王者のフランスが大本命だが、欧州選手権で躍進したデンマークも侮れない。下馬評という意味では“二強”がはっきりしたグループだが、そこに思わぬ落とし穴があるかもしれない。

フランスは4年前との大きな違いが、バロンドールを受賞したカリム・ベンゼマ(レアル・マドリー)の代表復帰だ。昨夏に行われた欧州選手権の直前に復帰したベンゼマはキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)、アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリー)との3トップが大きな話題を集めたが、やはり連係面は不十分で、早期敗退の要因にもあげられる。そこからW杯の欧州予選やネーションズリーグを戦い、ベンゼマもフィットしている。

ディデュエ・デシャン監督は彼ら3人の同時期用に固執せず、ブンデスリーガでブレイク中の俊英クリストファー・エンクンク(ライプツィヒ)を組み合わせるなど、柔軟な起用が目を引く。そうした采配が可能になるには選手たちを納得させるマネージメントが必要で、2012年から長期体制を築いているデシャンならではと言える。

攻守で最高レベルのタレントを揃えるフランスだが、9月にはネーションズリーグでデンマークと戦い、2-0で敗れている。欧州選手権で心臓発作を起こしたクリスティアン・エリクセンが奇跡のカムバックを果たしたデンマークは、フランスと同じ4-3-3をベースとしながら、よりサイドアタックを武器として効率性の高い攻撃スタイルで、W杯でも上位躍進を狙う。純粋なタレント力はフランスより落ちるが、適材適所のバランスの良さは大会屈指だろう。

オーストラリアとチュニジアは初戦が大事

両者が激突するのは2試合目で、フランスはオーストラリア、デンマークはチュニジアと初戦で当たる。オーストラリアは大陸間プレーオフで南米のペルーとスコアレスドローから、PK戦で世界大会への切符を勝ち取った。ポゼッションを主体とした戦い方を継続してきたが、グラハム・アーノルド監督が本大会でどういった選択をするのか。

セルティック退団後、なかなか新天地が見つからなかったMFトム・ロギッチも9月にウェストブロムウィッチ加入が決まり、順調にコンディションを上げていれば「サッカルーズ(オーストラリア代表の愛称)」復帰を果たすはず。大黒柱であるアイディン・フルスティッチ(ヴェローナ)との大型コンビが復活すれば、フランス相手にもチャンスを見出せるはず。あとは守護神マシュー・ライアン(コペンハーゲン)を中心に、フランスの強力アタッカー陣からゴールを守りきれるか。

デンマークと初戦で対戦するチュニジアは、4-1-4-1の守備ブロックを構築する。エリクセンを起点として、欧州選手権で名をあげた左の仕掛け人ミッケル・ダムズゴー(ブレントフォード)がブロックを切り崩せるか。ネーションズリーグでフランスからゴールを決めたキャスパー・ドルベリ(セビージャ)の決定力にも注目だ。チュニジアもサイドアタック主体のチームだが、19歳の天才MFハンニバル(バーミンガム)が投入されると俄然、中央の突破力も強くなる。歴史の英雄と同じ名前を持つヤングタレントが勝利のゴールをこじ開けるか。

2戦目は突破に向けたアツいカードに

フランスとデンマークの試合がおそらく首位突破を決する戦いになる一方で、オーストラリアとチュニジアは勝った方がグループステージ突破を3試合目にかける権利を得るはず。オーストラリアはデンマーク、チュニジアはフランスに挑むことになるが、希望を残して“格上“の相手に挑んでいくためにも、お互い負けられない。もちろんフランス対デンマークの試合は注目されるが、オーストラリアとチュニジアも単なる裏カードではない、熱いバトルとなりそうだ。

文・河治良幸

写真:AFP/アフロ