レアル・マドリードとのクラシコで大活躍
トーレスが所属するリーガ・エスパニョーラのバルセロナは、昨年11月にクラブの黄金期を支えたチャビを監督に招へいしており、現在はチームの立て直しが図られている。今シーズンはバイエルン・ミュンヘンからロベルト・レヴァンドフスキが加入し、チームの絶対的エースとして結果を残している。
ウイングの選手に高い位置での打開力を求めるチャビは、ウスマン・デンベレやラフィーニャ、アンス・ファティを起用する機会が多い。そのためチームでの序列が下がりつつあるトーレスだが、レアル・マドリードとのリーグ戦では前回のクラシコに続く2戦連続ゴールを記録し、これが今季のリーグ戦初得点となった。
グアルディオラからチャビへ。バルセロナ色の強い指揮官の下でプレー
フットサルスクールがキャリアの原点となっているトーレスは、その活躍が認められて7歳でバレンシアの下部組織に加入。ユースで順調にステップアップを果たすと、2017年11月のコパ・デル・レイで17歳という若さでトップチームデビューを飾った。また同年の12月にはリーグ戦にも初出場し、リーガでプレーした最初の21世紀生まれの選手となった。シーズンオフに肉体改造を行ったことで翌シーズンはよりコンスタントに出場機会を得られるようになり、チーム内でも頭角を現すようになった。
プロ3年目の2019-2020シーズンは持ち前のスピードやテクニック、質の高いフリーランで多くのチャンスを作り、バレンシアの主力としてチームの攻撃を牽引。公式戦44試合に出場して6得点と結果を残し、シーズン終了後には多くのビッグクラブから関心が寄せられた。
大ブレイクとなったシーズンを終えると、リロイ・サネの後釜を探していたプレミアリーグの名門マンチェスター・シティに移籍。移籍金は最大で44億円となった。ジョゼップ・グアルディオラ監督の下で、ウイングはもちろん偽9番のポジションでも起用されたトーレスはその攻撃センスを大きく飛躍させる。UEFAチャンピオンズリーグのグループステージでは3試合連続ゴールを記録すると、リーグ戦の終盤にはハットトリックを達成。新天地でも公式戦36試合に出場して13得点と大活躍を収めた。
2021-2022シーズンもプレミアリーグで開幕から4試合連続先発と幸先の良いスタートを切っていたが、10月の代表戦で右足を骨折してしまい、長期離脱を強いられることになった。
負傷離脱中の2021年12月には、最大84億円という移籍金でバルセロナへの加入が決まった。
ペップの下で3トップの全ポジションをこなせるようになり、偽9番としての才能も開花させたトーレスは、チャビが率いるバルセロナでも様々な位置で起用された。ケガから復帰すると、新天地でもすぐさま定位置を確保。ゴール前での精度の低さや打開力の乏しさから批判を浴びることもあったが、後半戦だけで公式戦7ゴールを挙げた。
偽9番や両ウイングなど攻撃的ポジションで躍動
トーレスはペップの下で培われた攻撃のマルチ性やスピード、さらにはそれらを活かした質の高いフリーランを武器とする選手だ。
また、サイドでは高い位置を取り、縦への突破を仕掛けてそこからのクロスも得意としている。両ウイングでプレーできるのも魅力で、柔らかなボールタッチで相手をいなしながら自慢のスピードでシンプルに仕掛けていく。
トーレスは偽9番に必要なスキルも兼ね備えている。マークの外し方が上手くフリーになれ、ゴール前ではシンプルにシュートまで運ぶことができる。こぼれ球の反応やボックス内での駆け引きにも秀で、CFとしても高水準である。
カタールW杯では日本の脅威に?
スペインの各世代別代表に招集されており、2020年9月にA代表デビューを飾った。同年11月に行われたUEFAネーションズリーグのドイツ戦で圧巻のハットトリックを記録すると、同大会ではベルギー代表のロメル・ルカクと並び6得点でリーグAの得点王に。チームの準優勝に貢献した。
代表では主にウイングとして起用されているが、バルセロナ移籍後は代表戦でわずか1ゴールと以前のような勢いは見られない。それでもスペイン代表の監督を務めるルイス・エンリケからの評価も高く、FIFA ワールドカップ カタール2022(カタールW杯)では日本代表の脅威になりそうだ。
(文・東方奏海)