2022/23シーズンの開幕前に大型補強を行い、最終ラインにフランス代表のジュール・クンデやデンマーク代表のアンドレアス・クリステンセンが加わったリーガ・エスパニョーラのバルセロナ。チームには重鎮のジェラール・ピケやウルグアイ代表のロナルド・アラウホも所属しており、CBのポジション争いは激しさを増しているが、エリック・ガルシアはその中でも着実に出場機会を重ね、21歳という年齢ながら世界的名門で自身のプレーを磨き続けている。
育成の名門カンテラ出身。ペップ率いるシティで才能開花
エリック・ガルシアは2008年、育成の名門として知られるバルセロナのカンテラ(下部組織)に加入。同クラブのレジェンドであるカルレス・プジョルをロールモデルにセンターバックとしてプレーしながら、ユースで順調に昇格していく。
すると16歳の時にプレミアリーグの強豪マンチェスター・シティからオファーが届き、イングランドで新たな挑戦を始める道を選んだ。その後はアカデミーとトップチームを行き来する生活を送りながら、世界的名将として知られるジョゼップ・グアルディオラの下でビルドアップ能力を磨いていった。
強豪で揉まれながら成長していったエリック・ガルシアだが、結局シティのトップチームでは定期的な出場機会を得られず、2021年にはペップのラブコールを振り切って古巣バルセロナへの復帰を果たした。
高いビルドアップ能力を見せる現代型センターバック
エリック・ガルシアの最大の武器はビルドアップ能力だ。状況に応じて適切なプレーを選択することができ、パスの精度は遠距離、中距離ともに非常に高い。相手FWからプレッシャーをかけられても臆することなくボールを持ち運ぶことができ、ポゼッションを志向するバルセロナやスペイン代表にはもってこいの存在だ。
技術力が高い一方で、狡猾さも身につけている。レアル・マドリードとのエル・クラシコでブラジル代表FWのヴィニシウスと対峙した際には、激しいチャージでボールを奪うとともに「おまえは将来のバロンドール選手なんだろ?」と挑発し、相手の動揺を誘ったという。エリック・ガルシアが先発フル出場を果たしたこの試合、バルセロナは見事にヴィニシウスを完封してみせた。
大一番でダーティーな一面を覗かせたエリック・ガルシアだが、シティ時代の恩師であるグアルディオラは「彼のような振る舞いをする選手は15人だって欲しい。常にチームのことを考えている」と絶賛している。またバルセロナのカンテラ時代は所属した全カテゴリーでキャプテンを務めており、人格者であることがうかがえる。
一方、課題に挙げられるのはスピードやフィジカルの強さで、対人守備ではどうしても後手に回ってしまうケースが多い。身長182cmと決して大柄ではなく、空中戦で競り負ける場面もしばしば見受けられる。守備に関しては全体的に課題が残るため、ある程度のリスクは許容しなければならないタイプのセンターバックとも言える。
ルイス・エンリケ監督も才能を高く評価
スペイン代表の監督を務めるルイス・エンリケはセンターバックのペアを頻繁に入れ替えており、先発出場が保証されている選手は一人もいない。そのため、現在のエリック・ガルシアの代表での立ち位置が盤石であるとは断言できない。
ただ、ルイス・エンリケが同選手を高く評価しているのは間違いないだろう。実際、2020年9月にA代表デビューを果たしてからは代表チームに継続的に招集されており、弱冠20歳にしてURFA EURO2020にも出場。イタリア代表との準決勝でも延長まで堂々たるパフォーマンスを見せ、フランス代表とのUEFAネーションズリーグ決勝という大一番でもスタメンを飾った。