近代サッカーのトレンドを作った世界的名将ジョゼップ・グアルディオラが「私の選手・監督キャリアの中で最も才能あふれる選手だ」と讃えるほどの才能の持ち主であるフォーデンは、22歳にしてマンチェスターシティアカデミー史上最高傑作とも評されている。

そんなフォーデンは現在、競争の激しいマンチェスター・シティで既に欠かせない存在となっている。昨季は最前線でもプレーするなど複数のポジションでプレーできる選手だが、今季は左ウイングでの起用が増えている。

マンチェスター・シティアカデミーで育った生え抜き

2000年5月28日、マンチェスター近郊のストックポートに生まれた。父親の影響で幼い頃からマンチェスターシティのファンとなり、ホームゲームの際には父親とともにスタジアムに足を運んでいたそうだ。7歳の頃、フォーデンがエスコートキッズとして元ブルガリア代表FWのマルティン・ペドロフの手を握ってピッチに入場している映像も残っており、彼にとってマンチェスター・シティというクラブがいかに身近な存在だったかがわかるだろう。

地元クラブでサッカーを始めたフォーデンは8歳のときにシティのアカデミーのトライアルを受けて、見事に合格。物心がついた時からずっと応援していたクラブでプレーできることとなった。シティ加入後はスタンドだけでなく、ボールボーイとしてピッチのすぐそばから夢のピッチをいつも眺めていた。

「ストックポートのイニエスタ」と呼ばれた少年が世界的に話題になったのは2016年である。現在もシティの監督を務めるグアルディオラが16歳のフォーデンをUEFAチャンピオンズリーグ(CL)セルティック戦の招集メンバーに選出したのだ。出場こそなかったものの、ペップが惚れ込んだ若き逸材として多くの人々から注目を浴びた。

2017年には優勝したFIFAU-17ワールドカップで大会最優秀選手賞を受賞したことで、その注目度は日に日に高まった。そうした状況でスペイン人指揮官はフォーデンをローン移籍で放出して育成するのではなく、ファーストチームのトレーニングで成長を促した。そして2019-2020シーズンからは実力で出場機会を増やしている。

2020-2021シーズンにフォーデンは凄まじい速度で進化し続け、ついにチームの主力へ成長を遂げた。リヴァプールとのアウェイゲームでは1得点1アシストの活躍を披露し、”要塞”アンフィールドで4-1の大勝を収める立役者となった。結果としてこのシーズン、フォーデンは公式戦50試合で16得点10アシストを記録し、クラブにとって2年ぶりとなるプレミアリーグ制覇に大きく優勝に貢献した。

2020-2021シーズン、2021-2022シーズンとイングランドで最も活躍した若手選手に贈られるPFA年間若手最優秀賞を2年連続で受賞しており、アーセナルのブカヨ・サカと並んで同国の将来を担うスター選手として評価を高めている。

現代サッカーを象徴する完成されたアタッカー

フォーデンは若くして完成されたアタッカーだ。テクニック、スピード、インテリジェンスを高水準で兼ね備え、守備も怠らない。まさに現代サッカーを象徴する選手の一人だ。

高次元のテクニックを持っており、ライン間でボールを引き出すのも上手い。1対1はもちろん、相手に囲まれてもボールを失わないなど、ボールキープ力にも優れている。またスピードに乗った状態でも技術は落ちることなく、左サイドからトップスピードで抜け出しファーへ強烈なシュートを流し込む形はフォーデンの十八番の形だ。2シーズン連続で公式戦二桁ゴールを記録している得点力もフォーデンの魅力だろう。

現代の選手らしく賢いプレーも魅力の一つだ。常に首を振ってピッチを見渡し、最適なポジションを選択し、最良の判断を下すことができる。攻撃センスに優れているDFアイメリック・ラポルテも「フォーデンのプレービジョンには驚かされるよ」と語っている。

モダンなプレーヤーなためピッチ外でもさぞ優等生なのだろうと思われがちだが、プライベートは実はやんちゃな行動が多い。2020年にはコロナ禍の厳戒態勢の中、行われた代表合宿で、チームの規律を破り、代表を追放された経験がある。また昨シーズンは、プレミアリーグ恒例の過密日程の中迎えたクリスマスで同僚とともにナイトクラブでハメを外しすぎてしまい、ペップに公開説教されてしまった。

余談だが、息子のロニー君はチームメイトから大人気で、選手たちのソーシャルメディアに高い頻度で登場している。

22歳の若武者が自身初のW杯へ

所属クラブでの活躍が評価されて、2020年9月にイングランド代表デビューを飾っている。前線にはサカやメイソン・マウント、ジャック・グリーリッシュらタレントが揃っているが、その中でもフォーデンは比較的多くの出場機会を得ており、FIFAワールドカップ カタール2022(カタールW杯)予選ではケガの影響で招集外となった試合以外は全て出場している。

直近のUEFAネーションズリーグでイングランド代表は、6戦未勝利でリーグAからリーグBに降格が決まるなどチームの調子が悪く、11月に控える本大会に向けて不穏な空気が立ち込めている。22歳の若武者は自身初のワールドカップで母国を上位進出に導くことができるだろうか。

文・熊谷和浩