11月20日にFIFAワールドカップカタール2022が開幕する。今大会は、2002年に行われた日韓大会以来20年ぶりとなるアジアでの開催。さらに22回の歴史の中で、初めて冬に行われるなど、例年に比べるとイレギュラーな大会だ。

そんなカタールW杯を楽しむべく、今大会の注目選手をポジション別に5人ずつ選出。今回はアンカー&ボランチ編として、ブラジル代表のカゼミーロ、クロアチア代表のマルセロ・ブロゾビッチ、スペイン代表のセルヒオ・ブスケツ、ドイツ代表のヨシュア・キミッヒ、オランダ代表のフレンキー・デ・ヨングを紹介する。

ブラジル代表MFカゼミーロ(マンチェスター・ユナイテッド)

カゼミーロは、レアル・マドリードでUEFAチャンピオンズリーグ3連覇に貢献した選手であり、2019-2020シーズンには、リーグトップのボール奪取数を残し、チームトップの公式戦出場時間を記録した。2022年に、マンチェスター・ユナイテッドへと移籍した、世界を代表するアンカーの一人である。

相手とのコンタクトをいとわないフィジカルの強さを武器に、ボールを奪い切る能力に秀でている。チームのバランサーとしても機能し、中盤の選手が攻撃参加した際には後ろのスペースをしっかりとカバーリングできる。危険なシーンだと判断すれば、迷わずプロフェッショナルファウルで相手を食い止めるクレバーさも、彼の特徴の一つだろう。

そうした守備面の貢献のみならず、攻撃面でも強烈なミドルシュートなど武器を備えている。身体能力の高さを生かしたヘディングも得意であり、セットプレー時に相手の脅威となるなど、ゴールハンターとしても相手の脅威となる、セレソンの心臓だ。

クロアチア代表MFマルセロ・ブロゾビッチ(インテル)

マルセロ・ブロゾビッチは、インテルにおいて、2020-2021シーズンに33試合・2得点・6アシストをマークし、リーグ優勝の立役者となった選手である。2015年からインテルでプレーを続けるブロゾビッチは、2022年に2025-2026シーズンまでの契約延長が発表されるなど、クラブにとって欠かせない選手であることは間違いない。

空中戦に強く、相手のロングボールをヘディングで跳ね返す能力は、クロアチア屈指の実力備えるが、ブロゾビッチの真骨頂は攻撃にある。中盤で味方からボールを受けてパスを左右に展開し、攻撃を組み立てる役割が最大のタスクだ。相手選手の間でボールを受けるポジショニングと高いキック精度で味方につなげる技術を見せたかと思えば、ディフェンスラインの裏に長いパスを通して決定機を演出することもできる。

さらに、ボールキープ力も高く、ドリブルによる推進力も備えるため、出しどころがない場合は自ら持ち運べる能力も特徴だ。ゴール前では精度の高いミドルシュートを武器にスコアを動かすなど、クロアチアの中盤でタクトを振るう選手である。

スペイン代表MFセルヒオ・ブスケツ(バルセロナ)

セルヒオ・ブスケツは、2008年からバルセロナ一筋でプレーし、スペイン代表のキャプテンを務める選手だ。EURO2008、2010年の南アフリカW杯、EURO2012の優勝を知る経験豊富な選手でもあり、元川崎フロンターレの中村憲剛氏が「世界最高のボランチ」と語っているのは有名な話だ。

アンカーとして司令塔の役割を果たし、ビルドアップの際にはディフェンスラインまで下がってボールを散らす。状況判断に優れ、シンプルにボールを動かしながらチームのリズムを作っていくことができる一方で、局面を一気に打開するロングパスや、決定機を生み出すスルーパスなど、勝負を決めるプレーも彼の得意分野である。

その能力は攻撃にとどまらない。守備面では、フィジカルを生かしたボール奪取力を誇り、味方が上がったスペースのカバーリングや、危険な場面では相手への厳しいコンタクトでチームのピンチを未然に防ぐ。攻守において欠かすことのできない存在であり、34歳で迎える今大会も、2010年大会以来の優勝を目指すスペインをけん引している。

ドイツ代表MFヨシュア・キミッヒ(バイエルン・ミュンヘン)

ヨシュア・キミッヒは、バイエルン・ミュンヘンの主力として、昨シーズンのリーグ10連覇にも貢献した。U-17世代から各年代のドイツ代表として活躍してきた選手だ。

本職は守備的ミッドフィルダーだが、右サイドバックでもプレー経験があるように、豊富な運動量を生かした走力は大きな武器である。攻撃から守備への切り替えが早く、広範囲に渡って味方を助けるために動き回るランニングを見せる。スピードにも秀でているため、相手に簡単に剥がされることがなく、判断ミスが少ないことも彼の特徴だ。

ショートパスはもちろんのこと、ロングボールの精度も高いため、大きな展開からのアシストやセットプレーのキッカーを務められることも魅力である。中距離・長距離シュートも武器であり、攻撃でも決定的な仕事ができる万能型のミッドフィルダーだ。2018年のロシアW杯でグループリーグ敗退となったドイツの復活は、この男の足にかかっている。

オランダ代表MFフレンキー・デ・ヨング(バルセロナ)

フレンキー・デ・ヨングは、今夏にマンチェスター・ユナイテッドへの移籍も囁かれたオランダの司令塔だ。かつてはヨハン・クライフやパトリック・クライファートなど、名だたる名選手たちが通ってきたアヤックスからバルセロナへの移籍コネクションを進む期待の若手である。

デ・ヨングの武器と言えば、深い位置からの展開力、狭いエリアでもボールを運ぶ推進力、そして類まれな戦術眼だ。右利きではあるものの、左足でのキック精度も抜群に高く、センターバック間に落ちてビルドアップに加わると、両サイドの深い位置にボールを通して、一気に攻撃を加速させるなど、チームに不可欠な存在だ。

さらに足元のテクニックにも秀でており、相手に囲まれても狭い局面を打破して一気にチャンスを作り出すことが可能だ。それら押し引きのタイミングが秀逸であり、サッカーIQの高さを感じる選手だと言える。オランダの躍進は彼の存在なしにあり得ないだろう。

文・渡邉知晃
 

写真:アフロ