サッカー日本代表は27日、カタールワールドカップのグループステージ第2節でコスタリカ代表と対戦する。
「新しい景色を」という合言葉のもと、初のベスト8進出を目指している日本代表はグループステージ第1戦でドイツ代表に2-1の逆転勝利を収めた。世界的強豪相手の歴史的な初勝利は、ある意味で「新しい景色」と言えよう。
ただ、喜んでばかりはいられない。決勝トーナメント進出を確定させるための戦いは続くため、キャプテンのDF吉田麻也は「ここで浮足立たずにしっかりといい準備をして、プラン通りにコスタリカ代表戦で勝ち点を取ることに集中しなければいけない」と気を引き締めていた。
グループステージ初戦からの2連勝も、また別の意味で「新しい景色」になる。
これまで日本代表はワールドカップのグループステージ初戦と第2戦で連勝を飾ったことがない。そもそも初戦に勝利したのは、史上3度目の快挙である。
過去の2回は初戦の勝ち点3を生かし切ることができなかった。2010年の南アフリカ大会ではカメルーン代表との初戦に勝利したが、第2戦のオランダ代表戦は敗れた。2018年のロシア大会では初戦でコロンビア代表を破ったものの、第2戦のセネガル代表戦に引き分けてしまった。
もしコスタリカ代表を退けて2連勝を飾ることができれば、同じ日に他会場で行われるスペイン代表対ドイツ代表の結果しだいで決勝トーナメント進出が決まる可能性がある。
ロシアワールドカップを経験している吉田は4ポイントでは、やっぱり安心できないなというのがあるんですよね。だからやっぱり(初戦からの連勝で)6ポイント取れれば」と語る。もし27日のコスタリカ代表戦に勝利すれば、日本代表は新たな扉を開くことになるだろう。
ただ、現実はそう甘くない。「このグループが決まった時から誰しもがドイツ代表やスペイン代表をフォーカスされがちで、コスタリカ代表は後回しにされてきたんじゃないか」と述べた吉田は、次なる相手を過小評価すべきではないと考えている。
「まずは自分たちがやるべきことに集中しなければいけないですし、まだ1試合終わっただけで、状況は何も変わっていない。ドイツ代表に勝ったことによって注目度も上がっているし、分析・研究もされると思うんですよね。
これから勝ち上がるうえでいろいろなことを研究されると思うので、いろいろな引き出しを用意していかないといけないですし、いろいろな選手が活躍しなきゃいけない。そこがチーム一丸となって、団結して戦うということ。選手が多少代わったり、やり方が変わっていく中で、いい形をいくつも出せるようにしたいなと思います」
チームとしての総合力が改めて問われる一戦になる。吉田はコスタリカ代表戦に勝利するために、「絶対失点してはいけない。そこで勢いに乗らせてはいけない」というポイントを挙げる。相手に先制点を奪われるのが最悪のシナリオだ。それだけは何としても避けたい。
「焦らないことですね。失点して相手にリズムと勢いを持たせたくない。そこが一番かなと。僕らもブラジルワールドカップの時に、コロンビア代表に勝たなければいけない状態で、前からガンガン(プレスをかけに)いって、前半は割と互角に戦えていたんですけど、後半は明らかに落ちて、スペースがある中で得点を重ねられてしまった。そういう経験を活かしたい」
初戦で7失点を喫しているコスタリカ代表は、グループステージ突破のために何としても勝ち点3をもぎ取ろうと向かってくるだろう。そのうえで得失点差を埋めるために多くのゴールを決めようと、どんどん前がかりになってくるかもしれない。
そうなった時は、できるだけ相手を走らせて消耗を誘いたい。苦しい状況でリスクを冒した際の見返りの重みを誰よりも深く理解しているのは、やはりブラジルワールドカップにも出場していた吉田だ。
初戦で勝ったチームが第2戦で困難にぶつかりがちなのは、精神的な余裕が隙につながってしまうから。メンタリティやチームスピリットが試される試合に向け、吉田は釘を刺す。
「2戦目の重要性はすごくある。ワールドカップなので、どの試合も重要なんですけど、ここで確認しとかなければいけないのはワールドカップに出る国に決して楽なチームはないということ。どのチームも自分の国を背負って戦うので、意地をかけて、プライドを持って戦ってくる。
そこに対して自分たちは中途半端な気持ちで臨んでしまうと、一気に飲まるんじゃないかなと。体的には(コンディションは)整っているし、いい状態にある選手が多いので、準備はできている。あとは頭のところだけだと思います」
ベスト8という「新しい景色」に近づくには、前段階にある扉を1つひとつ丁寧に開けて、その先に「新しい道」が本当にあるのかどうかを確認しながら前に進まなければならない。一足飛びで横着をしていては、目的地の前で転んでしまう。
何があろうと、なりふり構わず目の前の試合に全力で勝ちにいく。それが今の日本代表に必要なメンタリティだ。
「2連勝するというのは、やったことがない。正直、僕も(ロシアワールドカップの)コロンビア代表戦はラッキーな部分が多くて勝っていたと思うんです。ドイツ代表に勝って、2連勝して自分たちが新たな道を切り開いているという実感を持ちながら勝ち上がっていくためには、やっぱりここでもう一度、勢いに乗りたいなと思っています」
(取材・文:舩木渉)