日本代表はカタール・ワールドカップで2大会連続のベスト16敗退に終わった。ここから再び、4年後の大舞台に向けて熾烈なメンバー争いが繰り広げられていくが、次のW杯までにA代表へ定着しそうな選手は誰か。サッカーライターの清水英斗氏に、2026年W杯に臨む日本代表の“理想イレブン”を訊いた。

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 カタールW杯の主力メンバーは前回のロシア大会とは異なり、東京五輪世代などの若い選手が多かった。次の大会までの期間は3年半と若干短め、さらに森保一監督の続投濃厚の状況を踏まえても、ロシア→カタールほどには選手の入れ替えは進まないのではないか。というわけで、今大会からあまり変更はない。

 とはいえ、次回大会で35歳を超える吉田麻也、長友佑都、酒井宏樹。さらに川島永嗣に至っては40歳を超えてくるわけで、彼らのポジションには新しい選手が必要になる。3年半後も吉田や酒井は、ならではのプレーをしそうだが、主軸で試合に出続けるのは身体的に厳しい。頼りにするのはリスクがある。
 
 現時点でベテランたちの代替として、パフォーマンス的に不安のあるポジションはないだろう。酒井の右SBは、今大会のメンバーに入ってもおかしくなかった菅原由勢が第一候補だ。怪我で招集辞退となった中山雄太を含め、選手はある程度揃っている。

 むしろ不安が残るのは、チームマネジメントのほうだ。

 ドイツ戦やスペイン戦で久保建英が前半のみで交代を告げられるなど、若手が不貞腐れそうになるタイミングが訪れた瞬間、長友や川島らがサッと声をかけてチームに引き戻す。全体が一体感を持ち続けるうえで、年長者たちの兄貴ぶりは縁の下の力持ちだった。

 逆に今の主軸の世代は、久保や鎌田大地を筆頭に、淡々と冷静なロジカルタイプが多い。それは良い面もあるが、短期決戦に向けて感情と一体感を爆発させようとした時、ブラボー長友の役割を担える選手が少ない。次のW杯はパフォーマンスよりも、モチベ―ティングが気になる。

 その意味で期待したいのは、板倉滉だ。どっしり構える存在感と、人懐っこさ、明るさを持っている。町野修斗もまだ成長の必要はあるが、「マチ!」とみんなに親しまれるキャラクターがチームを盛り上げていた。次も競争に勝ち残ってほしい選手たちだ。
 
 今後、目ざすサッカーの方向性としては、選手の志向を聞く限り、ポゼッション時のゲームコントロールが1つの主眼になりそうだ。

 決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦も前半は上手くコントロールしたが、後半になり、ハイプレスをかけられて操縦桿を手放した。これではゲームコントロールが充分に作用しないので、より全局面に広げ、自陣でのカウンタープレス回避、ハイプレス回避が、次の3年半の主題目になるのではないか。

 もっとも、率直に言えば、クロアチア戦でも大迫勇也がいれば、どうにかなったはず。ロングキックでハイプレスを回避し、それを前線で収めてもらって、押し上げればいい。浅野拓磨にはそれができなかったので、日本が劣勢になったが、大迫ならあの状況は改善できた。
 
 ただ、大迫のような得難い選手は、常にいるわけではない。ならばチームとしてプレス回避に取り組み、全局面の質向上を図るのが第一だろう。

 また大迫については、その誇り高さから考えても、気安くベンチに置けるレベルの選手ではなかったと推測される。ドイツ戦とスペイン戦に前田大然や浅野を起用し、コスタリカ戦やクロアチア戦は大迫でと、当初の筆者は考えていたが、ポルトガル代表がクリスティアーノ・ロナウドをスタメンから外す際に一悶着あったように、同様の問題はどの代表でも大なり小なりある。TVゲームのようにパラメータだけで、スタメンを組むことはできない。

 今後、そうした悶着が現在の主軸メンバーの誰かに起きないとも限らない。筆者の理想のスタメンには、今大会を支えたベテランの名はないが、かといって、一気に世代交代を進めると、個人をチームに引き戻す存在を欠く恐れがある。少しずつゆっくりと、3年半後のスタメンへ向かうのがベストだ。

文●清水英斗(サッカーライター)

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