【専門家の目|斉藤誠司】コスタリカはキャンベル&ベネット、ナバスがキーマン

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は11月27日、カタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第2戦でコスタリカ代表(同31位)と対戦する。決勝トーナメント進出への鍵を握る重要な一戦。コスタリカをはじめ、世界11か国のプロリーグでプレーした斉藤誠司氏に試合のキーポイントを訊いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

   ◇   ◇   ◇

 日本は11月23日のグループリーグ初戦、FW前田大然(セルティック)を1トップに置き、前から果敢にプレスをかける戦術で勝負を仕掛けたが、徐々にドイツにいなされ、前半31分にGK権田修一(清水エスパルス)がペナルティーエリア内でファウルを犯してPKを献上。先制を許す苦しい展開となったなか、森保監督は後半開始からMF久保建英(レアル・ソシエダ)に代えてDF冨安健洋(アーセナル)を投入して4バックから3バックに変更する。

 後半12分にはDF長友佑都(FC東京)に代えてMF三笘薫(ブライトン)、前田に代えてFW浅野拓磨(ボーフム)を投入。その後もMF田中碧(デュッセルドルフ)に代えてMF堂安律(フライブルク)、DF酒井宏樹(浦和レッズ)に代えてFW南野拓実(ASモナコ)と攻撃的な選手を次々にピッチに送り込んだ。すると、この采配が見事に的中。後半30分に左サイドから崩して堂安が同点ゴール。さらに同38分にはDF板倉滉(ボルシアMG)のロングボールに抜け出した浅野が名手マヌエル・ノイアー相手にネットを揺らして逆転に成功し、2-1で劇的な大金星を飾った。

 第2戦で激突するのは、初戦でスペイン代表(同7位)に7失点の大敗を喫したコスタリカ。持ち前の組織的な守備が崩壊したように見えるが、コスタリカをはじめ世界11か国のプロリーグでプレーした斉藤誠司氏は、「コスタリカが弱いというよりも、スペインの仕上がりが良く、強かった」と振り返る。

「0-7という結果だけで見たら、日本のファンの方は余裕で勝てると思われるかもしれません。でも、コスタリカは日本とFIFAランキングはあまり変わらないし、W杯での最高成績(ベスト8/2014年)も日本より上です。コスタリカ人は陽気な一方で、すごく負けず嫌いでハングリー精神にあふれていて、追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮して戦ってきます。きっと戦争に行くような覚悟で来るはずです」

 斉藤氏は、コスタリカの攻守のキーマンとして、FWジョエル・キャンベル(クラブ・レオン/30歳)とFWジュイソン・ベネット(サンダーランド/18歳)、そして守護神のGKケイラー・ナバス(パリ・サンジェルマン/35歳)の3人を挙げる。

「ベネット選手はまだ若くて経験がなく、スペイン戦は後半16分に途中交代しましたが、コスタリカの注目株で、イングランド(2部)でプレーしている実力者です。守備面では、名門のレアル・マドリード、パリ・サンジェルマンでプレーしてきたナバス選手。7失点につながったディフェンスとのコミュニケーション不足、ナバス選手自身のミスはしっかりと修正してくると思います」

相手が前に出てきた背後のスペースを活用せよ

 ただ、コスタリカは初戦を落としたことで、日本戦はこれまでとは全く違う戦い方で挑んでくるはずだと斉藤氏は予想。それゆえに生まれる“弱点”を日本は突くべきだと指摘する。

「コスタリカは元々、守備重視のカウンタースタイル。守備を固めて、ボールを奪って、前のスペースがあるところにフィジカルの強い、スピードある選手でフィニッシュに持ち込んできます。でも、日本戦は勝ち点3を取らないといけないので、点を取りに来る戦術で来るはずです。日本は守備を固める相手は苦手な傾向がありますけど、コスタリカが前からプレッシャーをかけに来てくれれば、真ん中、サイドにスペースが空くので、そこを突けば得点できるチャンスは増えます。フィジカルがあって球際が強いコスタリカは、その一方で、背後のスペースに抜け出るスピードに弱いので、上手くパスで崩してサイドを攻めされるか。浅野拓磨選手のような裏に抜けるタイプの選手がキーマンになると思います」

 グループリーグ突破に向けて重要な一戦を、「普通に戦ったら3-1で日本(の勝利)」と予想した斉藤氏。「W杯は何が起こるか分からないし、1-1の引き分けになる可能性もあるので前半が本当に大事だと思います」と森保ジャパンにエールを送っていた。

[プロフィール]
斉藤誠司(さいとう・せいじ)/1986年5月27日生まれ、埼玉県出身。柏レイソルの下部組織で育ち、16歳でブラジルに渡って名門サンパウロのユースにテスト合格した。その後、ブラジル、ポルトガル、シンガポール、ポーランド、インド、ラトビア、インドネシア、バーレーン、モンゴル、マカオ、コスタリカと計11か国のプロリーグに在籍。今シーズンはプロ選手としては一時休業中で、現在は世界各国で代理人業や、日本とブラジルでサッカーアカデミー運営を行っている。(FOOTBALL ZONE編集部)