「とにかく明日は最高の試合と最高の結果を得られるように。日本サッカーの歴史に黄金の1ページを刻む意気込みで、必ず勝ちたいと思っています」

 36歳の大ベテラン・長友佑都が4日の前日会見で強い目力で毅然と語ったように、5日のFIFAワールドカップカタール2022ラウンド16のクロアチア戦は、森保ジャパンにとっても、彼自身にとっても、集大成となる大一番に他ならない。

 日本は98年フランスW杯に初参戦して以来、02年日韓、10年南アフリカ、18年ロシアと3度、グループリーグを勝ち上がりながら、8強の壁に跳ね返されてきた。

 このうち2回を長友はピッチ上で経験している“生き証人”だ。南ア大会パラグアイ戦でのPK戦敗退、ロシア大会ベルギー戦でラスト14秒の高速カウンターに屈した“ロストフの悲劇”は、今も鮮明な記憶として残っているという。

「ベルギー戦のことは忘れたことはないし、ふとした瞬間に最後のカウンターのことが頭をよぎります。夢にも出てきてますし、あの光景が常に脳裏に浮かび上がった状態でした。だからこそ、毎日の厳しいトレーニングも頑張れたし、批判がある中で『必ず見返すんだ』っていう強い気持ちでやってこれた。全てが原動力になっていると思います」と本人もしみじみと語っていた。

 それほどまでに8強の重みは格別だ。36歳という年齢、中山雄太や伊藤洋輝といった20代の面々が成長していることを考えると、大舞台にチャレンジできるのは今回が最後かもしれない。ここで悲願を達成しなければ、本人も絶対に納得いかないはず。自身のサッカー人生に悔恨を残さないためにも、次の一戦は勝利を手にするしかない。

 森保ジャパン発足後の道のりは紆余曲折の連続だった。最終予選で中山との交代が続いて衰えを指摘されたり、不要論が渦巻いたこともあったが、長友は決してめげることはなかった。今大会もフィールド最年長ながら、開幕前にヘアスタイルを金髪に変え、ドイツ戦に向けて赤髪へとブラッシュアップ。歴史的勝利の後は「ブラボー」と大声で叫ぶなど、ある意味、道化になってチームを盛り上げようとしているのも、8強という前人未到の地に足を踏み入れるため。その思いは森保監督よりも切実かもしれない。

「壁を破るために必要なこと? 『コラッジョ』、勇気かなと思ってます。侍が戦いに行く前に自分の武器を磨いたり、技術を磨いて、いざ戦いになった時、敵を前にビビっていたらそれは使い物にならなくなる。サッカーも同じで、もちろん戦術、技術も大事ですけど、ビビってしまったらそれは絶対に生かせない。4年間、積み上げた戦術や技術を生かすべく、一番大事になるのがコラッジョ。勇敢に戦う日本人の魂を世界中に見せたいと思っています」

 ギラギラと燃えに燃えている長友にクロアチア戦で託されるタスクは、左サイドで敵を完封し、攻撃の起点になることだ。

 クロアチアのグループ3試合を見ると、主に右FWを担っているのはアンドレイ・クラマリッチ。ただ、中に絞ることも多く、空いたスペースにルカ・モドリッチ、マルセロ・ブロゾヴィッチが流れてくる。右サイドバックのヨシプ・ユラノヴィッチも状況に応じて上がってくるため、長友は臨機応変にポジションを取りつつ、周囲とマークを受け渡しながら、敵の攻撃を防がなければならないのだ。

 いずれも能力の高い面々だけに、日本としては混乱に陥らないような意思統一と高度な集中力が求められる。そこに関しては、日本人離れしたコーチング力とコミュニケーション力を誇る長友に託される部分が少なくない。そのうえで、武器である対人守備の強さと研ぎ澄まされた判断力を遺憾なく発揮すること。それが日本勝利の大きなカギになるはずだ。

「僕は2008年から代表で約15年間プレーさせてもらってますけど、このチームは歴代最強。自分が見てきた中で最強のチームだなと自信と誇りを持って言えるチームに育ったとも思います。明日は必ずクロアチアを破って新しい景色を見たい。そしてまた大きな声で『ブラボー』と叫びたいと思っています」

 長友の発信する「ブラボー」が来年の流行語大賞の候補になるという話までまことしやかに流れているが、ここで史上最高の成績を残せば、それも現実になる可能性が高い。

 彼の国際Aマッチ142試合目となるクロアチア戦が、歓喜と興奮、希望に満ちたものになることを心から祈りたい。

取材・文=元川悦子