ついにベスト4が出そろった、2022FIFAワールドカップカタール(W杯)。日本時間12月14日にアルゼンチンVSクロアチア、15日にフランスVSモロッコが準決勝を控える。
惜しくもベスト16で敗退したサッカー日本代表は、グループリーグでドイツ、スペインという強豪国を倒し、ベスト16でも前回大会準優勝国のクロアチアにPK戦までもつれ込む激闘を演じるなど大健闘。目標のベスト8には届かなかったが、対戦相手を考慮すれば世界からも高い評価を得たと言えるだろう。
一方で、2050年にW杯優勝を目標に掲げている日本サッカー協会(JFA)にとっては、この結果に一喜一憂している暇はない。次期監督選考ももちろんのこと、今カタール大会あるいはアジア予選で頼りにしてきたベテラン選手たちの去就、活躍を見せたいわゆる東京世代選手の今後、引き続き熟考が必要となるだろう。次世代にかかる期待も大きい。
ここでは、4年後となる次回2026年W杯(北米3カ国開催)の日本代表メンバーの陣容について、今カタールW杯メンバーを軸に新旧世代の融合も含めてポジションごとに考察していく。
ゴールキーパー(GK)
カタールW杯には、正GKとして権田修一(清水エスパルス)、シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)、川島永嗣(ストラスブール)と経験豊富なベテラン選手を固めて挑んだ。結果的に出場したのは権田のみ。4年後を考えたとき、43歳となる川島はさすがに代表からは離れそうだ。
4年後、権田は37歳、シュミットは34歳。GKというポジションを考慮すればまだまだ現役と言える年齢だ。今カタール大会に出場している他国のベテランGK、ウーゴ・ロリス(フランス)が35歳、マヌエル・ノイヤー(ドイツ)が36歳ということも踏まえれば、権田とシュミットは次回も選出される可能性は高いと言える。
一方で、川島が抜ける穴、あるいは権田とシュミットに割って入る存在に目を向けると、筆頭は森保一監督体制下でも招集されていた谷晃生(湘南ベルマーレ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)の2名が挙げられる。両名とも国際試合の経験こそ少ないが、東京五輪のメンバーとして戦いまだ若いながらもJリーグでも高い評価を得ている。
次点としてパリ世代から鈴木彩艶(浦和レッズ)にも期待したい。谷、大迫よりもさらに若い20歳でありながら、190cmの長身を生かしたハイボール処理やセービングにはスケールの大きさがうかがえる。谷、大迫、鈴木の3名が権田とシュミットからポジションを奪えるのか。1つしかない正GKの椅子を争う戦いの行方に注目したい。
センターバック(CB)
長く守備の要として君臨した吉田麻也(シャルケ)だが、次回のW杯時には38歳となる。今後の代表活動について明言してはいないが、序列が落ちることは十分に考えられるだろう。また、同じく今カタール大会で安定感を見せた谷口彰悟(川崎フロンターレ)も、次は35歳でW杯を迎えることから最有力とはいいがたい。
だが、CBについては、今大会でも活躍した板倉滉(ボルシアMG)に加え、サイドバックとしてもプレー可能な冨安健洋(アーセナル)や伊藤洋輝(シュツットガルト)など、今後も能力の上積みを期待できる選手が多い。
下の世代を見ても、圧倒的なフィジカルを誇るチェイス・アンリ(シュツットガルト)といった有望株もいる。もちろん、経験値が必要であるポジションであることも確かだ。しかし、前述した選手以外でも瀬古歩夢(グラスホッパー)や町田浩樹(ユニオン・サン=ジロワーズ)など、早々に海外移籍を果たした選手も多い。他のポジションと比較すれば、人材面では最も4年後に不安のない場所と言えるのではないだろうか。
サイドバック(SB)
4年後未知数なのがこのSBというポジションだ。長年不動の存在だった長友佑都(FC東京)が次回のW杯時には40歳、酒井宏樹(浦和レッズ)は36歳となり、世代交代は急務と言える。今カタールW杯では、怪我で離脱してしまった中山雄大(ハダースフィールド)と山根視来(川崎フロンターレ)が招集されていたが、そのまま世代交代というには長友、酒井という先代2名の存在が大きすぎる。
そこで期待が集まるであろう選手として2名を挙げたい。1人目は菅原由勢(AZアルクマール)。積極的な攻撃参加で外側はもちろん内側に入って決定的な仕事もできる。2人目は中野伸弥(サガン鳥栖)。決して恵まれた体格ではないが、絶妙な身体の入れ方でボールを奪い取る技術と足元正確さは19歳とは思えないほど高いものを持っている。
次期代表監督の採用するシステムや戦術によって、SBの重要性は変わってくるだろう。しかし、今大会招集された選手に加え上述2名の成長がなければ、これまで実績十分の選手がいたポジションなだけに一気にウィークポイントになりかねない。
ミッドフィールダー(MF)
次回のW杯時にも比較的安泰と言える中盤(MF)のポジション。
まずボランチは、今カタール大会でもチームの主軸となった遠藤航(シュツットガルト)をはじめ、守田英正(スポルティング)や田中碧(デュッセルドルフ)らが間違いなく今後もチームの中心となってくるだろう。もちろん代表監督にもよるが、攻撃的な選手の層の厚さを考えれば鎌田大地(フランクフルト)のボランチ起用も十分可能性があると言える。
下の世代を見れば、パリ世代の中心である藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)。今季高卒ルーキーながら定位置を確保した松木玖生。そのほか「ピピ」の愛称で知られる中井卓大(レアル・マドリード・カスティージャ)などに期待できる。先を見据えても選手層、経験値ともに充実したポジションと言える。
ウイング(WG)
今カタール大会でも大きな存在感を示した三笘薫(ブライトン)や堂安律(フライブルク)をはじめ、世界的にも高い評価を集める選手のそろうWG。絶対的なスコアラーの育ちづらい日本において、こと得点面では極めて重要な存在になることは、今W杯でも十分に分かったことだろう。
4年後、森保監督体制で主軸となった南野拓実(モナコ)や伊東純也(スタッド・ランス)は30歳を超え、ゲーム運びや精神面などでベテランならではの存在感が期待できる。
もちろん、久保建英(レアル・ソシエダ)を筆頭にパリ世代にも高い攻撃力や突破力を武器に所属クラブで活躍する選手も多数おり、序列争いの激化により各選手のさらなる成長も期待したい。
フォワード(FW)
今カタール大会メンバー招集時に大きな波紋を呼んだFW。森保監督体制下でも長く1トップとして不動の地位を確保していた大迫勇也(ヴィッセル神戸)の落選があった。一方で怪我の影響やクラブでの不調もある中での浅野拓磨(ボーフム)が選出されるなど、最も話題になったポジションだ。
結果を見てみれば、浅野はドイツ戦にて貴重な逆転ゴールで応え、前田大然(セルティック)は圧倒的なスピードとスプリント力で前線からの守備に尽力し相手に自由を与えなかった。次期監督やJFA側の評価にもよるが、今W杯4試合におけるプレスの強度やスピードといった部分はメンバー選考の指標にもなり得る。4年後を考えると、浅野の32歳という年齢には気になる部分もあるが、前田は29歳にして技術的な上積みにも期待できる。
加えて、今大会は選外となった古橋亨梧(セルティック)も、得点力やスピードといった点は高く評価できるだろう。もちろん純粋な得点感覚に優れた上田綺世(サークル・ブルッヘ)や、町野修斗(湘南ベルマーレ)も年齢的に伸びしろは十分。下の世代を含めても様々なタイプのいるポジションなだけに、次のW杯に向けた新体制が始動したとき、FWの人選で4年後の戦い方も分かるのかもしれない。