FIFA ワールドカップ カタール 2022では、多くのトッププレイヤーが至極のプレーで観るものを魅了した。今回はGKの「セーブ」にフォーカスを当てて、今大会のスーパープレーを振り返る。
偉大な父を持つシュマイケルの蜘蛛のような長い手足
36歳の大ベテラン、デンマーク代表GKカスパー・シュマイケルはチュニジア代表とのグループステージ初戦で相手FWと1対1の危機を迎えた。
チュニジア代表FWジェバリも落ち着いており、シュマイケルの動きをみてシュートを浮かせたが、それに対してシュマイケルが右腕を伸ばしてボールにわずかに触れて、失点を防いだ。
この試合は結果として0-0で終わっており、守護神のセーブがなければ敗れていた可能性もあっただろう。
アルゼンチン代表の守護神・マルティネスの神セーブ
今大会のゴールデングローブ(最優秀GK)賞を受賞したアルゼンチン代表GKマルティネスは、メキシコ代表戦とのグループステージ初戦で視聴者が驚くスーパーセーブを見せた。
ゴールから近すぎず、遠すぎず、フリーキックを決めるには絶好の位置から放たれたメキシコ代表FWベガのコースを突いたシュートを、弾くのではなく、キャッチして止めてしまったのだ。
ボールを弾けば相手選手にこぼれ球を詰められてしまう可能性もあるが、キャッチをすればその心配はない。シュートを放ってからの一瞬の時間で「キャッチしよう」と判断する、その瞬間的な状況判断は、頭ではなく、身体に染みついたものなのだろう。
日本代表GK権田修一のピッチピチ海老反りセーブ
日本代表の守護神、権田修一はグループステージからスーパーセーブでチームを救い続けた。
クロアチア代表との決勝トーナメント1回戦では、フリーでボールを受けたモドリッチが、最も得意なエリアから強烈な右足のシュートをゴール左上隅に放ったが、これを権田が左手一本の海老反りセーブで見事に防いだ。
ピックフォードの繊細なポジション移動
イングランド代表GKピックフォードは、フランス代表との準々決勝で、流れるようなダイレクトプレーの応酬をビッグセーブで防いだ。
フランス代表の攻撃は左から右、そして中央とイングランド代表のディフェンスを横に揺さぶっており、ピックフォードもそれに合わせてポジションを何度も調整していた。ダイレクトプレーだったため、このポジショニングは非常に難しいのだが、ピックフォードは中央のジルーがシュートを放った瞬間に、ある程度はゴール中央にポジショニング調整をすることができていた。これがチームを救うビッグセーブへと繋がったのだ。
“神の子”を上回った“神の右手”をもつシュチェスニー
グループステージ終了時点でのベストGKは間違いなくポーランド代表GKシュチェスニーだ。サウジアラビア代表とのグループステージ第2戦、アルゼンチン代表とのグループステージ第3戦の2試合で2本のPKを止めていた。
しかもアルゼンチン代表戦でのPKのキッカーは今大会のMVPメッシのものだった。PKが決まっていれば右のサイドネットに突き刺さっていたであろう、コース、威力ともに完璧なシュートを驚異的な反応で止めて見せたのだ。
今大会でメッシはPK戦を含めて7度PKを蹴るチャンスがあるが、唯一の失敗がこのポーランド代表戦だった。そして全7試合のうち6試合でゴールを決めたが、全試合ゴールとはならなかったのはこのシュチェスニーがPKを止めたからである。
(ABEMA/FIFA ワールドカップ カタール 2022)