ウルグアイ戦で前線の基準点作れず苦戦、ポゼッション時の課題顕著に

 第2次森保ジャパンの初戦となった3月24日のウルグアイ代表戦(1-1)で改めて日本の強みが明確になった。MF三笘薫(ブライトン)とMF伊東純也(スタッド・ランス)の突破は、デュエルの強いウルグアイの選手でも1対1の状態では、ほぼ止めることができなかった。

 だが、後半途中から出場した伊東はともかく、三笘の強みを生かし切れたとは言い難い。最初に三笘が会場を沸かしたのは前半3分だった。MF鎌田大地(フランクフルト)からボールを受けると、自陣からドリブルを仕掛けて敵陣深くまでボールを運んだ。1トップのFW浅野拓磨(ボーフム)のコース取りも悪く、三笘のドリブルの進路に相手選手を集めてしまったが、この場面以降も三笘と浅野の連係が機能したようには思えなかった。

 試合後のミックスゾーンで、浅野は「チームとして準備してきたことをチャレンジできた試合だと思うけど、上手くいったかと言えばまだまだ良くしていかなければいけないところがたくさん見つけられた」と試合を振り返った。MF堂安律(フライブルク)も、「やろうとしたことはオプションとしてトライした。ただ、見てもらったら分かるようにそれほど機能しなかった。相手の守備のハメ方も良かった。サイドには入るけど、そこから少し孤立してしまう。それは課題」と、先発出場した試合を振り返っている。

 この試合で日本が取り組もうとしたのは、自分たちでボールを保持しながら攻めること。カタール・ワールドカップ(W杯)ではドイツ代表やスペイン代表に勝利はしたものの、押し込まれる展開になり、苦しい時間帯が続いた。「主体的に保持して戦いたいというのがチームとしてある」と堂安は話すが、この日の日本のボール回しは最終ラインが中心で、相手の守備がはまってしまい、GKシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)へのバックパスも連発した。W杯の時以上にボールを持てたと言えば聞こえはいいが、どちらかというと相手に持たされている感じだった。

 そうなった要因の1つが、1トップの浅野の存在だ。これは浅野が実力不足というわけでは決してない。単純にやろうとするスタイルに彼の特徴が適していないのだ。浅野の持ち味は爆発的なスピードにある。この試合でも前半20分に鎌田を経由してDF菅原由勢(AZアルクマール)から放たれたクロスをシュートに結び付けた。後半9分にも三笘のパスを受けてシュートを放っているが、スピードで相手を剥がすことはできていた。

 最終ラインの裏のスペースを突く、速攻の形では持ち味が生きる浅野だが、ボールを保持するとなると課題が浮き上がる。ミックスゾーンで間近にその身体を見るとゴツさを感じるのだが、ピッチ上ではウルグアイの選手の当たりに飛ばされる場面が多く、ボールを受けてのキープはままならなかった。

浅野起用とポゼッション志向の戦いは不釣り合い

 1トップがボールをキープできないと、全体を押し上げる時間はできない。選手が後方にいれば、ボール回しは必然的に低い位置になる。サイドの三笘や堂安、伊東も前に行き過ぎては孤立することになるため、ポジションを下げざるを得なくなり、ボールを受ける位置はゴールから遠い位置となる。

 スペインやドイツ、ブラジルのような相手との試合で、日本が圧倒的にボールを保持される戦いになり、カウンターを軸に戦う時、あるいは、リードを奪って相手が前に出てくる展開となり裏を取りたいシチュエーションであれば、浅野は極めて有効なオプションになる。だが、ポゼッションを高める戦い方をするうえでは、明らかに適任ではないだろう。

 また、これは森保監督が続投した弊害の1つとも言えるかもしれないが、カタールW杯で注目された日本の戦い方はある程度知れ渡っている。ドイツからもゴールを奪った浅野が1トップでどんなプレーをして、どんなプレーが得意かは、世界中のサッカー関係者が知るものとなった。身体を寄せればボールを奪えることが分かっているため、トップ下の鎌田を警戒すれば、日本は攻撃の基準点が作れなくなる。実際、この日も鎌田は相手に見張られて、味方からボールを受けられずに期待外れに終わったが、これも彼1人のせいにするべきでもないだろう。

 後半16分にはFW上田綺世(セルクル・ブルージュ)と伊東が、浅野と堂安との交代で同時にピッチに入った。その直後には、上田のボールキープからパスを受けた伊東がエリア内で倒れる場面があった。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)でPKは取り消しとなったものの、『これが必要なんだ』と感じたのは筆者だけではないはずだ。ウルグアイにとっても、このプレーで高い位置に基準点を作られることへの警戒が働いたのは間違いない。

 そこからさらに後半29分には鎌田に代わり、カタールW杯メンバーから外れたFW西村拓真(横浜F・マリノス)が投入される。ゴール前に飛び出してフィニッシャーになる場面が、この試合は皆無だった鎌田に代わり、ファーストプレーから積極的にゴールを狙いに行った西村にウルグアイの守備は対応しきれなかった。

 カタールW杯でも、日本は前半を耐えて、途中から出場する選手が持ち味を発揮して後半に攻勢に出るという試合展開で勝利を掴んでいった。新たなスタートを切ったこの試合も、その流れに沿った一戦となったと言えるだろう。代表は活動期間も限られる。そのため、個人的にはこの戦い方を洗練させていくのもありだとは思う。だが、強豪を相手にもポゼッションを高めていくことを目指すのであれば、1トップには異なるタイプの人選が不可欠だろう。(河合 拓 / Taku Kawai)