スペインを相手に歴史的な逆転勝利を収め、見事にワールドカップで2大会連続の決勝トーナメント進出を決めた日本代表。E組を1位通過した日本はベスト16で前回大会準優勝のクロアチアと激突するが、その前にスペイン戦をデータで振り返ってみよう。

[写真]=Getty Images

■逆転の日本はW杯記録

日本代表

 初戦のドイツ戦に続いて、前半を0-1とリードされて折り返しながら、最終的に2-1で勝利を収めた日本。92年の歴史を誇るワールドカップにおいて、1大会で2度もハーフタイムのビハインドから逆転勝利を収めたのは今回の日本を含めて、わずか「3チーム」しかいないという。日本以外の2チームは1938年大会のブラジルと1970年大会の西ドイツだ。

 その2チームの最終成績を見てみると、1938年のブラジルは準決勝で敗れるも、3位決定戦でスウェーデンを相手に逆転勝利を収めて3位に入った。1970年の西ドイツも、準決勝でイタリアにPK戦の末に敗れるも、3位決定戦でウルグアイを退けて3位。歴史が繰り返されるなら、日本も間違いなくベスト4に入れるのだ!?

 ちなみに、ブラジルは5試合を戦ったうち2試合で、西ドイツは6試合のうち2試合で後半の逆転勝利を収めた。そのため、ワールドカップの歴史において最初の3戦のうち2試合で、リードされて後半を迎えながら逆転勝利を収めたチームは日本しかいないのだ!

 一方で、日本に逆転負けを喫したスペインだが、彼らがワールドカップでリードして後半を迎えながら逆転負けを喫したのは60年ぶりのこと。1962年大会のブラジル戦(1-2)以来だという。そして、その時のブラジルはというと、最終的にトロフィーを掲げているぞ!

■逆転の要因はルールの有効利用

日本代表

 今大会の日本はグループステージで4ゴールを決めたが、そのうち3ゴール(堂安律×2、浅野拓磨×1)が交代出場の選手によるゴールなのだ。実に「75%」が途中出場の選手によるゴールということになる。これは過去の大会のデータと比べると傑出している。ワールドカップに初出場した1998年大会から前回の2018年大会まで、日本は20ゴール決めてきたが、交代選手によるゴールはわずか3点だった(15%)。

 そう考えると、今大会は交代出場のプレーヤーの活躍が目立っているが、それも当然のことだろう。なぜなら、今大会は交代枠がこれまでの3名から5名に拡大したのである。日本は、このルールを他のどのチームよりも有効利用していると言えるはずだ。森保一監督は、3試合とも5枚の交代枠を使い切っているだけでなく、その選手交代で勝機を見出しているのだ。

 0-1で前半を終えたスペイン戦では、ハーフタイムに堂安律と三笘薫を投入して一気に流れを変えて見せた。日本はグループステージの3試合で、実に「5名」もハーフタイムに選手を交代しているのだ。ハーフタイムに一度も選手交代を行っていないチームもいる中で、これは断トツで今大会最多の数字となっている(2番目はイランの4回)。

 交代枠の増加は、多くのタレントを揃える強豪国に有利に働くと思われていたが、使い方次第では格下とされるチームにとっても“奇襲材料”となるのだ。もしかすると、森保一監督は“交代枠5名時代”の新たなスタンダードを築いたのかもしれない。

■歴代最低の17.7%で勝利

日本代表

 今大会、FIFAは独自のポゼッション率を集計しており、両チームのポゼッションの他に、どちらのボールでもない時間も出している。そのためFIFAの発表によると、今回の日本のポゼッション率は16%で、74%のスペインに圧倒されたことになる(どちらでもない10%)。一方で、データサイト『Opta』によると日本のポゼッション率は「17.7%」だったという。これは詳しいデータが残っている1966年大会以降で、ワールドカップにおける最低の数値だそうだ! 勝ったチームに限らず、負けたチームを含めても最低の数値だというのだ。それでも見事にスペインを撃破したのだから、サッカーは本当に不思議なスポーツだ。

■“ティキタカ”ってどうなの?

日本代表

 スペインのパスワークは確かに精度が高かった。『Opta』によるとスペインは前半だけで530本ものパスをつないだ(日本は89本)。最終的にスペインのパス成功数は968本。とりわけDFロドリ(204本)とDFパウ・トーレス(174本)は、日本のチーム全体のパス成功数(153本)を一人で上回ったことになる。さらにパス成功率を見ても、日本の67%に対してスペインは91%と圧倒した。

 それでも試合結果は2-1で日本の勝利。1966年大会以降で、700本以上のパスを繰り出したチームがワールドカップの試合に負けるのは、今回のスペインで2チーム目だという。そして1チーム目は、第1戦で日本に1-2で敗れたドイツだ! “ティキタカ”も“ゲーゲンプレス”も日本には通用しなかった!?

■アジアの歴史を変えた

日本代表

 これまでスペインは、ワールドカップでAFC(アジアサッカー連盟)勢に負けたことがなかった。2002年の日韓大会の準々決勝で韓国にPK戦の末に敗れたが、公式記録は引き分け。そのためスペインは、これまでAFC勢に対して6試合で4勝2分け0敗だった。韓国が2回引き分けているだけで、オーストラリアも、イランも、サウジアラビアも、全てスペインの前に屈してきたのだ。だが今回、日本がアジアの歴史を変えたのである。

■初めて2大会連続での決勝T

日本代表

 7大会連続で出場している日本だが、過去6大会はグループステージ敗退とベスト16を繰り返してきた。初出場の1998年大会に3戦全敗で早々に敗退するも、日韓共催となった4年後の2002年大会で初の決勝トーナメント進出を果たした。そうやってグループステージ敗退と突破を繰り返してきた日本は、前回のロシア大会でベスト16に入っていたため、データ通りなら今大会はグループステージ敗退が濃厚だった。だが、見事にそのパターンを覆して2大会連続の決勝トーナメント進出を果たし、新たな歴史を築いた。

 そもそも、これまで日本はグループステージ初戦で負けた大会は必ずグループステージで敗退してきたが、初戦で勝ち点を稼いだときは100%の確率で決勝トーナメントに進めていたのだ。そして2018年に続いて今大会も初戦に勝利。その時点で日本が新たな歴史を築くことは決まっていたのかもしれない…。

(記事/Footmedia)