「差別を受けたり、脆弱な立場に置かれたりしている人たちに寄り添いたい」国連UNHCRで難民選手団をサポート、元テレビ朝日アナウンサー青山愛さん
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 オリンピック・パラリンピックに、母国の国旗を掲げずに出場する選手たちがいることをご存知だろうか。紛争や内戦、迫害により故郷を追われた「難民選手団」だ。前回(2016年)のリオ大会で初めて結成され、東京オリンピックでは29人が出場、さらに6月30日には、パラリンピックに6人が出場することが発表された。

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 水泳に出場するイブラヒム・アル・フセイン選手(シリア出身)は激しい内戦の中、友人を助けようとして右足を失い、その後ギリシャへ。リオ大会では難民選手団の旗手も務めた。また、生まれつき両腕が無いアバス・カリミ選手(アフガニスタン出身)は政情不安の中、特技である水泳とキックボクシングを活かすために難民キャンプからアメリカへ渡った経験を持つ。

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 自身も先天性の障害で13歳から車椅子生活を送り、15歳で母国キューバからアメリカへ渡った選手団団長のイレアナ・ロドリゲスさんは「難民の中には多くの身体障害者がいる。今回の代表たちはそんな人たちの希望だ。人生でどんな苦難に直面していようと能力を発揮できるのだと、これまでの2倍の速さで証明していると思う。彼らが置かれている状況をもっと知り理解してほしい」と訴えている。

 そんな難民選手団を強力にサポートしているのが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で渉外担当官を務める青山愛さんだ。かねてから国連で働きたいという希望を持ち、4年前にテレビ朝日を退職。米国の大学院を修了後、昨年2月からUNHCRに勤務している。

■鮮明に覚えているリオ大会でのスタンディングオベーション

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 「紛争や迫害によって故郷を追われ、庇護を求めて他国に逃れた人々。従来であれば自国を代表して出場するオリンピックやパラリンピックに参加することはできなかった。その転機となったのが2016年のリオ大会だ。2015年から難民危機が加速していたことを受けて、国際競技大会を通じて、難民の現状をより多くの方に知ってもらいたい、の困難を乗り越えた難民アスリートの姿を通して皆さんに希望と勇気を与えたいという思いから、IOCとIPCが史上初めて難民選手団を結成した。

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 私は当時、テレビ朝日でスポーツの担当をしていたが、開会式に選手団が入場した時、割れんばかりの拍手とスタンディングオベーションで迎えられていたのを鮮明に覚えている。困難を乗り越えた難民アスリートの皆さんへの敬意の表れだったと思うし、その反響、成功を受けて、東京オリンピック・パラリンピックにも参加することになった。パラリンピック難民選手団に関してはIPCが資金を調達してトレーニングをサポートしてきたが、リオ大会は2名、東京大会は6名と、少しずつ選手の数が増えているので、この先の大会ではさらにメンバーが増えるということもあるかもしれない。

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 UNHCRとしては国際パラリンピック委員会(IPC)のパートナーとして選手の発掘、トレーニングへのアクセスをサポートしていて、IPCと協力して、難民アスリートの皆さんの姿、そして声を発信して伝えていくことも大切な仕事だ。私は選手の皆さんが大会に参加するため必要な書類や渡航のプロセスをサポートしたり、安心安全にトレーニングできるよう生活面での相談に乗ったりしている。順調にいけば、難民選手団に帯同して東京のパラリンピック村に入る予定だ」。

■大学院時代、クラスメイトにも当事者がいた

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 第8代の国連難民高等弁務官を務めたことで知られる故・緒方貞子氏を始め、数多くの日本人が活躍してきたUNHCR。一方で、日本は先進国の中でも難民の受け入れが極端に少ないことが知られている。

 先月にはサッカーワールドカップ予選のために来日したミャンマーのピエ・リアン・アウン選手が「帰国すると命の危険がある」として大阪出入国在留管理局に難民申請した。アウン選手はクーデターを起こした国軍に反対の立場を取っており、本国では後輩選手が何人も撃たれて亡くなったという。

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 青山さんは「確かに難民として認定された数字だけを見ると少ないし、その点でG7諸国と比較されがちだが、歴史的あるいは地理的な状況を踏まえると、他の先進国と日本を比べるのは難しいところもある。背景には、難民を輩出している国と言語や文化が異なることや、外国人コミュニティが少ないということから、希望する難民の数自体が少ないということもあると思う。一方で、国籍、政治、信仰する宗教、所属する社会集団によって迫害を受ける恐れのある人が他国に庇護を求めるのは基本的人権だ。日本政府は難民条約に加入しているし、難民受け入れのシステムも確立しているので、最終的にはこの政府の判断に委ねられている」とコメント。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「僕自身、こういう仕事をするまで難民についてはニュースでたまに聞くくらいで、考える機会も少なかった。しかし数千人単位で難民がやってくるような国の場合、職場や学校など、日常生活の中で何かしらの接点を持つ機会も多いのだと思う。つまり、単に日本の受け入れが少ないというだけでなく、それによって社会全体が“ほぼゼロ”として扱ってしまっている部分があると思う」と指摘。

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 青山さんは「わずかながらだが、私も海外生活の中でマイノリティとして辛い思いをしたこともあったし、大学院時代、議論の中で難民問題が取り上げられることが多く、クラスメイトにも当事者がいた。そういうところから、少しでも社会の中で差別を受けたり、迫害によって脆弱な立場に置かれたりしている人に寄り添う仕事がしたいなと思い、UNHCRに入った」とコメント。「一緒に勉強をしたり、スポーツプログラムに参加していたりといったことを通じて、難民が新しい国で自分の居場所を見つけたり、コミュニティに所属することができたりできるということも大きいと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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