義足の方が便利になる時代がやってくる!?「乙武義足プロジェクト」が見据える“人間拡張技術”の未来とは
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 作家の乙武洋匡氏といえば、そのイメージは累計590万部のベストセラー『五体不満足』の著者、そして何より「障害者」なのではないだろうか。

 しかし新著『四肢奮迅』で綴られているのは、自身の障害をテクノロジーで超越しようと2017年から取り組んでいるプロジェクトについてだ。この「乙武義足プロジェクト」は、ロボット義足を装着し街を普通に歩けるようにすることを目標としており、昨年11月に“仁王立ち”する姿は大きな話題をよんだ。また、理学療法士に支えられながら立ち上がり、少しずつ歩き始める映像も公開されている。

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 乙武氏も「僕は一人でトイレに行けない、風呂にも入れない。人に手伝ってもらわないといけないことがほとんどだ。そのせいか、何か違うことで人の役に立つことに大きな喜びを見出す。遠藤さんに初めてお会いした時、“これは乙武さんにしかできない”と言われ、そうかと思った。この体で生まれてきて、今まで40年間、障害や欠損と呼ばれてきたが、遠藤さんは僕の身体を見ながら、“これはテクノロジーを詰め込める余白だ”と言った。これは頑張れば頑張るほど人の役に立てるんだなと思って、いっちょやったるかと思った。やってみたら想像以上に大変だったが」と笑う。

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 プロジェクトのファーストステップは「乙武氏を広告塔にして、義足への関心を高める」、そしてセカンドステップは「ロボット義足が普通になって、障害者が特殊能力者になる」ことだという。「“特殊能力者”と聞いて皆さんがどういうものを思い浮かべるかは分からないが、テクノロジーが身体にマッチすれば、健常者と障害者の境目がなくなるようなことがどんどん起きてくる。障害者と呼ばれている人たちが、10年後は障害者でなくなると思う」(遠藤氏)。

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 遠藤氏の言葉を裏付けるかのように、海外では新たな能力を手に入れた人たちが次々登場している。あるアメリカ人男性は事故で失った右目の代わりに小型カメラを装着して撮影・録画できるようにしたケース、生まれつき色が識別できない男性が頭蓋骨にアンテナを埋設、色を音に変えることで違いを認識できるようになったケースなど、足りない機能や失くした部分をテクノロジーで補うことで、健常者以上の能力を身に付けられるようになっているのだ。

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 「皆さんが乙武さんのプロジェクトを見て“感動した”と言ってくれるが、僕が作っている義足をどのように発信すれば世の中の人に見てくれるのかと考えた時に、乙武さんが歩くのが最もインパクトがあると思った。いずれ自分の足を上回るようなものができたら、足を切ってでも履きたいと思えるのではないかと、この技術に期待している。あるいは僕はドローンで飛べないが、体重の軽い乙武さんは飛べると思う。色んなエンジニアがそういうことを虎視眈々と狙っていると思う」(遠藤氏)。

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 日本でも今年、社会が劇的に変わる新たなテクノロジーを生み出すことを国が支援する「ムーンショット型研究開発制度」が登場。2050年までにサイボーグ化技術の実現(人間拡張技術)を目指すとしている。この「人間拡張技術」には、「マイナスをゼロにする補綴から、ゼロからプラスにする人間拡張」「自動化から自在化」「身体機能拡張から脳機能拡張へ」という3つのステップがあるという。

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 EYジャパンの園田展人氏は、「自動化はやりたくないことをやってもらう。自在化はやりたいことをやる。例えばエクストラアームと呼ばれる腕を付けることで、一方で勉強をしながら一方で家事をするなど、人間をどんどん自由にしていくようなことを自在化技術と呼んでいる。現在は多くの方がスマートフォンを持っているが、これが当たり前だという世界を想像できただろうか。できなかったと思う。だからこのような技術も可能性としてはあり得る」と話す。

 こうした人間拡張技術には、運動・感覚機能の拡張としてパワースーツや義肢、拡張現実(AR)が、時空間・存在の拡張として仮想現実(VR)、テレイグジスタンス、体外離脱視点が、また、身体像・主観的身体位置の拡張としてエクストラパーツ、スパイダービジョンといった技術が研究開発されている。

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 「NIN-NIN(ニンニン)」は人の肩に乗るほどのサイズで、機械を通したテレイグジスタンス(遠隔存在)だ。「ボディシェアリング」という概念を提唱し、これを開発した大瀧篤氏は「例えば、目が不自由で歩ける方と、足をケガしてしまっているが目は見える方。その2人が力を合せることで外を歩くことができる、それによって双方が幸せになれるというようなことを考えている。秋田でお孫さんくらいの方にNIN-NINをつけてもらって、おじいちゃん・おばあちゃんの代わりに買い物に行ってもらうことで、一緒に買い物に行っているという感覚になる実験を行った」と話す。

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 20年前の1999年4月、国会で「障害というものをあまり特別なものとは考えていないんですね。この部屋の中を見回してもらっただけでも、色んな方がいらっしゃいますよね。全く同じ人間って、いないじゃないですか。みんなが違って当たり前。この感覚を子供の頃から持ってもらうことが大切だと思っているんです」と語りかけていた乙武氏(当時23)。番組では、最後に「いつか飛ぶからね」と語っていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:手足がない=障害の考えはもう古い?

手足がない=障害の考えはもう古い?
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