あと少し届かなかった。渋谷ABEMASは昨シーズン、ファイナルにトップで進出しながら、最終的には3位。3年連続ファイナル進出という偉業も、頂点には立てなかった。チームの紅一点、日向藍子（最高位戦）も「悔しかったですね」と振り返りつつも、チームメイトの男性3選手への絶大な信頼はまるで揺らがない。「自信のなさランキング1位です」という守備的な麻雀と、チームワークをうまく保つ役目。この2つを果たして、チームも目的の地に導こうとしている。
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――昨期、チームは惜しくも3位で終わりました。振り返りをお願いします。
悔しかったですね。だから今年は優勝したいという思いが第一ですね。期間が空いて、俯瞰して見ていると、目標が色濃く出ているというのはいい変化なのかなと思うようになってきました。
――トップでファイナル進出も果たしました。優勝を逃したという感覚ですか。
多井隆晴さんでダメだったら、誰が行ってもダメという感覚が強いから、合っているかわかりませんが、ご縁がなかったのかなというイメージ。強さの証明が本当にしにくいゲームなので。常にファイナルにいることが強さのアピールにはなるから、3年連続ファイナルというのは「頑張ったね」と言える一つのボーダーかと思いました。
――ファイナル最終盤、多井選手が連投せざるを得なかったという印象でしょうか。
するしかなかったとは思っていないんですよ。誰が呼ばれても納得はします。でもドラフト1位の重みがあると思うので。自分が行くのは「どうした？」って思いますが（笑）。日向を使いたいんだと思ってもらえて、スキルアップできていれば、そういう時が来てもいいのかなと思うのですが、それ以上に仲間が本当に強いので。そこでの信頼感はすごいですね。
――個人では各ステージ、全てプラスで終えています。
あんまり言いたくないですが（それへの思いは）1ミリもないですね。Mリーガー32人の中で自信のなさランキング1位だと思うんで（笑）。それはダメなところなんですよ、自信が全く持てていないというのは、性格ですね。
――自信を持っていないと戦えないというのが一般的だと思いますが。
そうですよね、私もそう思いますよ。メンタルはいつもボロボロなんで。なんて言うのかな、やらなきゃいけないと鼓舞しているだけで、自信はいつもない。大負けしていないのも、怖さとか不安がいつも強いんですよ。だから安牌を持ちたがる。
――究極の安全運転とも言えますね。
危険運転は怖いですね、免許ないですけど（笑）。見ている方はつまんないのかなと悩んだ時期もあったんですよ。でもそういう究極の姿を多井さんが見せてくれているじゃないですか。「配牌オリ」という言葉が作られたのは多井さんのおかげだし。「日向はその守備力を買われて藤田晋が選んでいるんだから、基本ベースを曲げる必要はない」と多井さんが言ってくれる。大勝はしないけれど、なるべく損はさせないよというバランスでいたいと、いつも思っています。
――対局前後に卓にぺったりとくっついて礼をしますね。
昔からですね、放送じゃない対局でも。「傲慢になるな、いつも謙虚であれ」と思って。麻雀はうまくいくと調子に乗っちゃう人も多いと思うんですけど、それってよくない。うまくいかない時くらいが自分の実力、くらいで常に謙虚でいたい。Mリーグの舞台にすごく感謝しているし、（最高位戦の）A2リーグにいられることも感謝していて、卓もそうだし、同卓してくださっている3人もそう。選んでくれた監督の藤田さんや仲間とかも、全部のものに「ありがとうございます」という気持ちを忘れたくないと思っています。練習でやれることをやったら、あとやれることは感謝くらいしかないから。
――今期加入した新Mリーガーに対しての印象はいかがですか。
打ったことがないのは本田朋広さんと伊達朱里紗さん。今年は新しい風が吹くんですよ。占い師みたいな言い方ですけど（笑）。そこがちょっと私は不安視していて、これまでの相手はいろんな放送で見たことがある選手ばかりだったけど、今年はそれが変わるんですよ。ひどいことにならないようにしようと。この間のRTD Girls Tournamentも見ていたし、松ヶ瀬隆弥さんのオーディションも見ました。少しでも情報を入れているんですけど、実際に打ってみて感覚を見たいですね。相手にこっちも合わせられたらいいなと思うんですが。常に怖いですね。
――チームは優勝が目標になりますが、個人の目標をお願いします。
自分のポイントは加算できたらそれに越したことはないんですが、ABEMASの男子3人は負けないんですよ。だから私がトントンでいれば、ファイナルへ行けるんですよ。仲間への信頼がすごいんで。ポイントよりもチームのバランスを取れるように、ですね。麻雀はメンタルゲームなんで。仲間が負けている時に勝つ、勝っている時にそれを繋ぐ、どちらもできる繋ぎでありたいですね。片栗粉みたいな感じですよね（笑）
