「年収1000万円の世帯が必ずしも裕福だとは限らない」立憲民主党の“所得税免除”提言に専門家が懸念
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「分配なくして成長なし。みんなを幸せにする経済政策として5項目を発表する」

 衆議院選挙に向け27日、経済対策を発表した立憲民主党の枝野代表。消費税の時限的な5%への減税や、将来的に最低賃金を1500円に引き上げ、派遣法などを見直し、希望する人が正規雇用で働ける社会の実現などが挙げられた中、ひときわ注目を集めたのは「年収1000万円以下に所得税を実質免除する」という内容だ。

【映像】年収1100万円でも…手取りは700万円台? 所得税のカラクリ(5分30秒ごろ〜)

 財源は「国債」とされたこの政策に、SNS上では、大きな反響を呼んだ。

【ネットに寄せられた声】
「一年だけ税制を変えると言っても、家賃や子どもの学費は急には減らせない」
「できるならぜひやってほしい」
「年収1000万以上あったって子供4~5人居る家庭と1人しかいない家庭は違う」

 2020年度の国税収入は60兆8216億円と、2年ぶりに過去最多を更新。そのうち所得税はおよそ19兆円で、3分の1近くを占めている。では、年収1000万円を超える収入の人はどのくらいいるのだろうか。

 2019年度の国税庁調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者およそ5200万人中、年収1000円超は全体のわずか4.8%だった。そして、給与をもらっている人の所得税を、年収別にみると、合計10兆7737億円のうち、年収1000万円を超える人が負担した割合は全体の53.4%と、半分以上を占めている。一方で、年収1000万円以下でも、収入が高くなれば高くなるほど、納める所得税も高くなる。例えば、年収900万円の人の所得税は53万9000円となるため、仮に立憲民主党の経済政策が実現した場合、かなりの額が家計から浮くことになる(※扶養は妻のみの想定、深田晶恵FP試算)。

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 しかし、立憲民主党が掲げた経済政策に、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんは「経済の活性化は難しいと思う」と言及する。

「所得税がかからないということで、その分だけ手取り、使えるお金が増えます。でも、新型コロナで先行き不透明な中で『手取りが増えた分だけお金使っちゃおう』といったマインドにはいかないと思います。経済が活性化するためには、もっと消費に回してもらわないと活性化しません」

 実際に去年配布された一律10万円の特別定額給付金を見てみると、内閣府による2020年4月から6月の家計の調査で、給料などから税金を差し引いた自由に使えるお金が過去最高のおよそ346兆円だったのに対し、消費は前年比マイナス24兆円のおよそ266兆円にとどまった。家計貯蓄率は23.1%と過去最多だったことからも、80兆円近くが貯蓄に回ったと考えられる。

 また、年収が低くなるにつれ所得税も減るため、「家計が助かる」という実感も薄れると深田さんはいう。

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「額面年収が300万円の人だと、(年間の)所得税が5万3000円。400万円の人だと8万4000円。『(1年を通して)このくらい自分の使えるお金が増える』と自覚することはなかなか難しいのではないでしょうか」(※扶養なしを想定)

 枝野代表はこうした所得税の税額が少ない層や、所得税を納めていない人に対し、給付金を支給すると明言している。

 一方で、この経済対策の対象外となった年収1000万円を少し超える世帯からは「そんなに余裕のある暮らしはしていない」などの悲痛な声が寄せられている。これについて深田さんは「1000万円超える人が裕福かというと必ずしもそうとは言えない」と話す。

「額面年収1100万円だと(所得税は)93万9000円と重いです。例えば年収1100万円の手取りは、786万円。手取りは額面の年収から所得税、住民税、健康保険を引いて自分が自由に使えるお金のことです。使えないお金が360万円もあるということですね。1000万円をちょっと超した人が『所得税免除にならないの!?』というショックは大きいでしょう」

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 また、深田さんによると、こうした層では、配偶者が専業主婦だったり、子どもを私立に入れたり、高い住宅を買って住宅ローンの金額が大きかったりするケースも多く「お金が貯まりにくい世帯」だという。

「例えば年収600万円以下は、暮らしていくのも大変だし、(所得税の)実質免除はわかります。年収1000万円以下の所得税免除は微妙ですね。それなりに所得税の負担は重いんだけど、じゃあ1000万円を少し超えた人が全く恩恵受けられないのか、実質免除の対象外になってしまうのか。これは多くの人が受け入れがたいと思います」

 さらに、懸念されるのが「所得税免除の反動」だ。免除は1年間とされているため、仮に来年実現した場合、再来年には元通りの所得税に戻る。免除されていた人たちは「増税された」感覚になると想定されるほか、深田さんは「コロナの影響によって増税の可能性もある」と考えている。根拠は、東日本大震災後に設けられた「復興特別税」だ。

「復興特別税で、震災のあった2年後、所得税が25年間本来の所得税の金額に2.1%上乗されました。住民税は2014年から10年間一律全員1000円を年間で上乗せされています。これをやることによって25年かかって10.5兆円の復興特別税を捻出できます。薄く長く復興するために先に使ったお金を税金で取り戻していく。これが東日本大震災の復興税です。コロナ禍になって定額給付金も受け取りましたし、飲食店の支援だったりさまざまな支援金・給付金などが使われて経済を回していってますよね。それを考えると、どこかでコロナ復興増税があると考えるのが筋でしょう」 (『ABEMAヒルズ』より)

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