千田翔太七段、AI研究を進めるほどに突きつけられる終盤での「人間力」
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 将棋界は、将棋ソフト(AI)の誕生により、大きく世界が変わった。「人間対AI」という構図は、既にかなり昔のことのようにも語られ、今はソフトが提案する手に対して、それをどこまで人間が取り込むか、また取り込まずに人間として指しやすい手を選ぶかという、次のステージに進んでいる。棋士の中でも、早くからAI研究に取り組んだ千田翔太七段(27)も「人間はソフトに近づいていくものの、ソフトももっと強くなっていく。部分的には指せるようになっていきますが、全体的に見てどれくらい印象が変わるかと言えば、ちょっと疑問がありますね」と、コピーでもしたように全く同じ手を指すようになることもないという。そこで求められるのが、勝敗を大きく左右する終盤での「人間力」だ。

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 ソフトを効率的に活用し、研究を作り上げれば、場合によっては最終盤までその通りに進むことがある。それほどまでに、研究の精度は高まっている。「序盤は記憶、パターンで覚えられますから」と、ある程度の道筋が決まっていれば、一般の人々よりも記憶力に優れる棋士たちであれば、かなりの量を蓄えられる。ただし、当初の予定や前例から離れるほどに、選択肢はさらに広がり、未知の世界に突入する。そこから最善の手を模索するのは、短時間で膨大な量の手を読み込めるソフトと、読みと発想を頼りにする人間とでは、かなり差が出てくる。「特に終盤戦、詰む・詰まないが関わってくると、どこまで行っても人間とソフトの乖離は出ます。さすがに短時間ではなかなか判断できないですからね」。仮に長手数の詰みが発生したとして、それを詰将棋の問題ではなく、実戦でのことともなれば、人間にはそう簡単には見つけられない。さらに、たとえその道筋がおぼろげに見えたとしても、1手間違えれば大逆転という細い道なら、人としてその道を選ばないということもある。

 この細い道筋は、ソフトが強くなるほどに生まれやすい。「人間に指しにくい手というのは、もちろん存在します。10年前から言われていますが、今はもっと指しにくいかもですね」。ソフトがよりぎりぎりを鋭く攻め込むほど、人には無理筋に見える。また、対人競技であるがゆえに、細い筋で攻め込むよりも分厚い落ち着いた攻めの方が、相手に与える精神的ダメージが大きいこともある。1分将棋に入った戦いは、脳をフル回転させ、緊迫した精神状態にもなる。ここの心理戦は、対人競技ならではだ。将棋ソフトが一方の棋士の勝勢、さらに言えば詰み筋を見つけていたとしても、そこからひっくり返るのが「逆転のゲーム」と言われる将棋の醍醐味。最後に勝つためには、やはり「人間力」が必要であることには、今も昔も変わらない。
ABEMA/将棋チャンネルより)
 

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