3日、和歌山市を流れる紀の川にかかる送水用の橋が崩落、およそ6万世帯が断水している問題。崩落の原因について6日、尾花市長は鳥のふんによる腐食の可能性があるとの見解を示し、仮の水道管を通す工事により、9日にはほとんどの家庭で水道が使えるようになる見込みだとしている。
5日の『ABEMA Prime』に出演した水ジャーナリストの橋本淳司氏は、尾花市長が4日の会見で行った「平成27年に耐震の工事をやったばかりなので、なかなか老朽化そのものが落橋に繋がったとは考えにくいなと思っている」との説明に疑問を呈する。
「崩落した橋は1975年に完成したものだが、耐用年数48年ということなので、本来であれば2023年までは大丈夫ということだ。ただ、水道橋というのは地中にある水道管よりも過酷な環境に置かれているし、高さがあれば風の影響も受けやすい。点検についても、近づいて細かな破損がないか調べる必要があるが、実際どうだったのだろうか」。
厚生労働省によると、水道の漏水・破損事故は年間2万件を超えるといい、その原因の多くが老朽化だとされている。日本の水道事業を取り巻く環境について、橋本氏は“AKBの三重苦”だと表現する。
「穴が空いたら直す、穴が空いたら直すということで、“モグラ叩き”みたいにして水道事業が続いているというのが現場の状況で、まさにA=あきらめる、K=考えない、B=場当たり的という切ない状況にあるということだ」。
また、自治体のインフラを支える水道料金も、人口減少により危機に瀕しているという。
「水道は自治体が事業者になっているので、住民は水が出るのは当たり前だと思っているし、もっと美味しくなれ、もっと安くなれと思っているだろうが、現実は赤字というところも多く、持続性の問題を社会前提で共有していかなければ、今回のような事故が起きたときに本当に苦しいことになってしまう。
東京は全国的に見ても水道料金が低いのは人口が多いからだが、逆に北海道の場合は人口が少なく、水道管が長いためになかなか交換ができない。そこで料金も上がっていくという悪循環に陥っている。将来、過疎地の水道は縮小していかざるを得ないだろうが、一度に切ることはできない。やはり何らかの方法で補填が必要だろう」。
そこで厚労省が打ち出しているのが“広域化”という手法、そして“ダウンサイジング”だという。
「一つの自治体では経営基盤が小さいので、隣接する自治体で共同してやることにより、ノウハウ不足、人材不足も解消されるというのがある。もう一つが、ダウンサイジングだ。岩手で3つの自治体が合同で始めた水道事業団は、浄水場や取水施設を少しずつ減らし、補修にお金を回すことにした。さらにAIを使って将来の人口の動向を調べ、維持されそうな所を優先的に修繕、最適化を図っている。漏水が減れば浄水場も減らすことができ、効率が上がるので水道料金の高騰も防ぐことができる」。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「政治による地方へのインフラ投資によって、利権構造を生み出した結果、公共事業ではなく、ソフトにお金を回すことが正義だという流れになってしまったが、いよいよ1960〜70年代の高度成長期に完成を見たインフラが一斉に耐用年数を迎えてきているということだ。ところが地方財政は非常に厳しい。これはコンパクトシティ化するしかないのではないか。
例えばアメリカのオレゴン州ポートランドでは、“この境界線の外側に住んでいる人のところインフラ工事をしません、だからみんな内側に引っ越せ”ということをやった。これを日本でやれば私権制限だとテレビ局や新聞は大騒ぎするだろうが、もはや地方のインフラ維持にお金を回す余裕がない以上、政治やメディアはどう考えるのか。これからますます問題になってくると思う」とコメントしていた。(『ABEMA Prime』より)
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