7日午後10時41分、埼玉県宮代町や東京23区などで、最大震度5強の地震が発生、都内で震度5強を観測したのは東日本大震災以来だった。
【動画】東京が火の海に? 内閣府による「首都直下型地震」のシミュレーション映像(2分30秒ごろ〜)
品川駅では一時停電が発生。そのほか舎人ライナーが脱輪するなど、多くの鉄道が一時運転を見合わせた。深夜の駅では電車の運転再開を待つ人たちでごった返しに。駅前や繫華街のタクシー乗り場には長い行列ができ、帰宅困難者が続出した。
東日本大震災から10年の月日が経過しても、変わらない首都圏のインフラ。首都圏の備えはこのままで問題ないのだろうか。
ニュース番組『ABEMA Prime』に出演したネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「7日はパキスタンでもマグニチュード5.9の地震があって、少なくとも20人が亡くなった」と言及。東京都で震度5強の地震があって、何千万人と住んでいるのに死者は出なかった。その時点でインフラ的にはすごく整っていると思う。東京はすごく優秀だ」と見解を述べた。
工学院大学・建築学部まちづくり学科の久田嘉章教授は「たしかに、今回の地震で倒れた建物がない。これで済んだのは相当な成果だ」とひろゆき氏に同意。その上で「ただし、想定されている首都直下地震を考えると、全然レベルが低い。今後、それに備える行動は当然必要だ。東京はかなり進んでいるが、地方はまだ古い建物がいっぱい残っている。『これで安心だ』といった話とは全く違う」と話した。
また、今回の地震でエレベーターおよそ7万台が停止。このうち、中に閉じ込められるケースが首都圏1都3県で合計28件発生した。
発生したエレベーターの大量停止に、久田氏は「大きな地震がくれば、今はエレベーターに停止システムが入っている。停電で止まったなどの事故もあると思うが、管制装置が作動して止まったケースが多いと思う。首都直下地震など揺れが大きいといきなり止まってしまうが、南海トラフからの地震であれば(本震までに)時間がある。多くはケースバイケースで最寄り階で止められるはずだ」と解説。
もし、地震でエレベーターに閉じ込められてしまった場合、どのような対策を取ればいいのだろうか。久田氏によると「基本的には救助を待つのが大原則」だという。
「インターフォンがあって、そこで押し続けて待つ。理想は非常時に備えた救出訓練をきちんとした指導のもとで習っておいたほうがいい。実際に起きた時の救出は、保守会社の人に来ていただいて、できたら警備員さんやプロの方と一緒にやる。最初に電気を止めてエレベーターを動かないようにしてから、特殊な装置を使えば、エレベーターのドアは開けられる。逆に上の階に行って、下からすくい上げるような訓練もある。予め訓練を受けておけば、閉じ込められた人を自分たちで救出できるが、訓練を受けていないのであれば、待つ以外できることがないだろう。映画であるようなエレベーターの天井を開けて救出するようなことは無理で危ないので、絶対にやってはいけない」
また、都心のタワーマンションでは、長周期地震動も問題になっている。久田氏は「東京や大都市は大きな盆地状になっていて地盤が悪い」とした上で「直下型の地震は大きい長周期地震動はないが、海溝型の巨大地震だと必ず(長周期地震動が)来る。特徴は長くゆっくり揺れる。日本の耐震技術はかなり優れているので、倒壊の危険は非常に低いが、下手すると10分間以上揺れることもあると思う。室内のドアが開かなくなるケースもある」とコメント。
東日本大震災から今年で10年。久田氏は「10年に1回、震度5の地震は来るだろう」と指摘する。
「関東大震災からは静かだった。誰も分からないが、歴史的にこれからはもっと(地震が)来るのではないかと言われている。大地震の200年間の前半は静かだが、後半の100年はたくさん直下型(地震)が起きている。タワーマンションに住むかどうか、人によるが、私は住まない。住みたいとも思わない。あとは地盤にもよる。地盤がいいところというのは長周期も小さい」
■地震翌日の朝も…一部の駅で大行列発生 アナウンスにも問題あり?
首都圏の混乱は翌日も続いた。埼玉県ではJR川口駅に入場規制がかかり、通勤時間帯を直撃。東口は繁華街にまで電車再開を待つ長い行列ができた。出社信仰、鉄道会社のアナウンス、メディアの報道手法……一体どこに問題があるのだろうか。
ひろゆき氏は「そもそも川口に住んで川口駅がああなったら、会社に電話して『見ての通りなので無理です』と言って家でゴロゴロしてればいいじゃないか。なぜそれを分かっていて、行こうとするのか。行こうとする側の問題だと思う」と意見。
「地震の後でも『電車は動いて当たり前』という思考が、そもそも間違っている。フランスは、なんでもないときでも電車が止まる。だから、電車が止まっても誰も文句を言わない。『止まるもんでしょ。地震があったんだから移動できないでしょ』という考え方を当たり前にしないといけないのに、鉄道会社に『なんとかしないのか!』と責めるのは、相手を間違えていると思う。中には病院で働いている人とか、本当に行かなきゃいけない人もいる。なんとかして行こうとする人たちが大勢いるから、余計に困るわけだ。本当に行かなきゃいけない人以外、家でゴロゴロする方が人を助けると考えたほうがいい」
ひろゆき氏の指摘に、久田氏は「過去の地震でも、1つの電車が動くとみんなそれに乗ってしまって、結局ターミナル駅で満杯になってしまった。行き先までちゃんと繋がっていないといけない。散々言われているのに、まだあまり(対策が)できていないのが現状なのかもしれない」と回答。
「もちろん、ひろゆきさんがおっしゃったように通院などで行かなきゃいけない人もいる。ただ、全員行く必要はない。だからそのルールを決めるべきだ。地震が起きたとき、会社として交通機関が復旧するまでどうするべきか。ビジネス・コンティニュイティ・プランニング(BCP ※事業継続計画。災害などの緊急事態時に、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画のこと)のルール作りがいかにできていないか。『こういうときには来なくていい』『こういうときは来る』といったルールを作っておく必要がある。あと、会社に行かずに残った人はゴロゴロするのではなく近所の人に声をかけてほしい。近所を回って『大丈夫ですか?』と助け合ってほしい」
首都圏を襲った10年ぶりの震度5の地震。個人だけでなく社会全体で、日頃から備えを怠らないことが必要だ。(『ABEMA Prime』より)
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