いよいよ投開票まで1週間を切った衆院選。『SHIBUYA109 lab.』の調べによると、都内在住の18歳〜24歳の学生400人のうち投票の意向を示しているのは約8割に達したという。また、『ハフポスト日本版』と『NO YOUTH NO JAPAN』による30歳以下を対象としたアンケート調査では、選択的夫婦別姓などの「ジェンダー平等」に関心を寄せる人が最も多かったのだという。
こうしたアンケート結果が盛んに報道される現実について、若者向けの悩み相談窓口を運営するNPO法人「あなたのいばしょ」代表の大空幸星さんは疑問を投げがける。
「例えば『SHIBUYA109 lab.』の調査の母集団は都内在住の学生に限られている。しかしこの世代の全員が高等教育機関に行けているわけではないし、大学であれば人口の半数くらいしか行っていない。僕自身も大学生だが、やはり恵まれている立場にいると思っているし、1日に1000件ほどの相談を受け付けていると、自ら命を絶ちたいとか、明日食べるものもないなど、とにかく生活に余裕のない学生からの声が非常に多い。仮に彼らを含めた母集団でアンケートを取った場合、果たして8割が“投票に行きたい”と答えるだろうか。そういう人たちに対して、“それは大変だよね。でも今週末には投票行ってね”とは、口が裂けても言えない。
単純に若者の投票率を上げるのであれば、義務化してしまえばいい。しかし大事なのは質の部分だ。僕たちの世代もメディアも、“若者も投票に行こう”と盛り上がっているが、それは社会問題に関心を持つ余裕のある若者たちの声であって、そこは注意しなくてはならない。政治とは本来、社会問題に関心を持つ余裕すらない人たちのためにあるものだとも思う。コロナ禍によってワクチン接種や学費など、身近な問題が政治と直結していることに気づいた若い世代も多いと思うので、投票権を行使しようという人は、余裕のない人たちのためにも、という考え方も持てるようになっていけばいいと思う」。
■「まずは自分が生きていく上で必要な問題の方が大事」
こうした状況に、アメリカ出身のパックンは「現状にそこまで不満はないということなのだろうか。夫婦別姓や同性婚など、ダイバーシティの問題もあるし、今の政策の尻拭いをさせられるのは若い世代だし、最も関心を持つべきだ。自分の思想に近い政党や政治家を探すサービスもたくさんある」と首をかしげる。
しかしeスポーツチームαD代表の石田拳智さんは、政治や選挙には関心がないとキッパリ。「全く興味がなく、選挙に行ったこともないし、今度も行こうと思えない側だ。本も全く読まないが、自分に関係のない本はもっと読まないと思う。例えば同性愛者の方の結婚の問題についても、気持ちに寄り添うことは大事だと思っているが、まずは自分が生きていく上で必要な問題の方が大事で、他のことについては目を向けて考えられる余裕があったら、だと思う。選挙も自分が行かなくても誰かが行ってくれるのではないかと思うし、現状にそこまでも不満もない。限られた中でどう生きていくか、そのためのことは自分でやると決めている。政治家の方が寝ていたりとか、悪いニュースが流れることも多いし、応援しても意味ないんだな、“選挙に行ったところで、何かが変わるわけではない”という気持ちも大きいと思う」。
先週には、二階堂ふみや菅田将暉、小栗旬、ONE OK ROCKのTakaなど著名人14人が投票を呼び掛ける動画『VOICE PROJECT 投票はあなたの声』が公開された。石田さんこうした取り組みについても「有名人が何かの商品を紹介していたからといって、絶対に買うかと言ったらそうではないと思う。自分に合っていて、良いものなんだとなって初めて手に入れる。無料だろうが同じだ。これで選挙に行こうということにはならないと思う」と話した。
また、BlackDiamondリーダー兼CGO(チーフ・ギャル・オフィサー)のあおちゃんぺも、「私もローラさんやワンオクのTakaさんのことはめっちゃ好きだが、“別に”という感じだった。そして投票先を決めるための情報を探そうと思うこと自体、そもそも興味を持っているからではないか。私も番組に出ているから色々な問題に触れる機会があるが、そうでなければ政治に興味は無かったと思うし、“不満があったら選挙に行って変えよう”というような思考には直結しなかった。そもそも学校でも選挙に行くことのメリットや、行かないとこういうことが起きるといった考えを植え付けられていない。だから選挙に行くことが自分なりの自己表現だ、みたいなことは全く思えないし、知らない人の命を気にして選挙に行く人なんて、ぶっちゃけいないと思う」と応じた。
■「選挙期間中もテレビで討論し続けないと」
ここでカンニング竹山は「勘違いしちゃいけないのは、この番組に出ている僕も興味があるからやっているわけだし、見ている人も興味があるから見ているということだ。でも、20代の頃なんか選挙に興味ないよ。だって楽しくないもん。ただ、家庭ができたり、社会とのつながりができたりすると、社会保障の問題は自分にも関係あるな、これは選挙にも関係あるなと、ちょっとずつ分かってくるものだ。極端なこと言うと、年寄りの人たちは暇だから行くというのもあると思うし、日本国民の約半数以上は興味ないし、新聞なんか読まない」と喝破。
そして「パックンの言うことは間違っていないが、ダイバーシティについてどう思うかと聞かれても、そもそもダイバーシティって何?と言う人が世の中いっぱいいるの。選挙制度なんか知らない20歳過ぎのヤツはごまんといるのよ。そういうことを分かった上で考えていかなければいけないし、石田さんとか、あおちゃんぺのような若い人たちが選挙期間中もテレビにバンバン出て、関係なくね?と討論し続けないと行けない」と提言した。
これについてテレビ朝日の平石直之アナウンサーも「メディアも選挙期間中以外はメチャクチャ政権批判も野党批判もするし、政治家のことをボロクソ言う。今回の衆院選は、4年に1回の機会だ。ところが選挙期間に入ると、今は具体名一切なしだ」と説明すると、
「テレビを見ていると、“分かっている”インテリがワーワー喋っているだけ。誰だよ、偉そうに。そんな番組、見たくもないしつまらない、って、すぐ消すよね。そして選挙期間に入ると放送法の枠があって、一人の候補の名前を出すなら、他の候補全員の名前を言わなきゃいけない。だからめんどくさくなって、むしろ一斉に選挙の話題をやめてしまう。アメリカでレディー・ガガが“トランプ反対”などと言っているように、日本でもテレビに出ている人が“俺は〇〇党だ”と言えるような環境を作っていかないと。
今回の選挙なんか事実上の総理大臣を決めるようなものなんだから、もっとガンガンやって、一つのムーブメントにして、この2週間を楽しい“祭り”にしていかないといけない。じゃあ行ってみるべ、と1票入れ出すと、投票率が上がる。投票率が上がると、如実に政党が変わっていく。世の中が変わっていくから、それで初めて変わるんだなと分かったりする。それをやらなきゃいけないのに、もう何十年もやっていない」と苦言を呈した。
■「半径5m以内にいる人達を思い浮かべてほしい」
議論を受け、大空さんは「竹山さんがおっしゃったことはものすごく重要で、政治的関心を持つきっかけを作るという意味で、ムーブメントを作るのもあり得ると思う。その意味では、テレビは投開票の日にだけ特番をやる。それでは何も意味ないし、争点になるようなものを示し続けるべきだと思う」と指摘。「一方で、投票に行ったとしても、すぐに社会が変わったという実感は持てないということも確かだ。もっと踏み込むのであれば、例えばオーストラリアのように、投票が権利ではなくて義務にする。そうすれば間違いなく政治的な関心は高まるはずだし、教育現場でも絶対に扱うことになる。ただ、すぐに実現するわけではない。まずはメディアとかSNSということだけでなく、半径5m以内にいる人達を思い浮かべてほしい。自分が気づかないだけで、うつになっていたり、自らの命を絶つことを考えてしまっている人がいたりする。そこで立ち止まることができれば、この人たちのためにも投票しようという考え方が出てくるだろうし、投票の質も少しずつ上がって来ると思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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