荒々しいところがあったとしても、対局は勝ち切る。そんな力強さを持ったチームが誕生した。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の予選Bリーグ第1試合、チーム加藤とチーム渡部の対戦が10月30日に放送され、チーム加藤がスコア5-1で快勝した。リーダーの加藤桃子女流三段、香川愛生女流四段がそれぞれ2勝と貫禄を見せ、18歳の野原未蘭女流初段も相手のリーダー渡部愛女流三段を相手に1勝1敗。大混戦になっても最後は勝利を持って帰る、たくましさを備えた3人組が、緊張の初戦を制した。
チーム名は「野生の桃」。メンバーの名前から1字ずつ集めて作ったものだが、その名のとおり戦い様は時に荒々しく、そして力強かった。チームとしての開幕局に出てきたのはリーダー加藤女流三段。奨励会出身の実力者で、タイトルも通算8期。現在も、大成建設杯清麗戦五番勝負に出場中だが、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算という超早指しでも、勝負強さに変わりはなかった。大会最年少、17歳の内山あや女流2級を相手に先手番から相掛かりの将棋になると、形勢としては拮抗した場面があったものの、終盤での落ち着きで上回り、初勝利をもたらした。チームの勝利を決める第6局にも登場し、レジェンドの一人・中井広恵女流六段と後手番から相矢倉になると、終盤では絶体絶命のピンチに陥りながら、粘りの勝負手が刺さり逆転。「序盤がひどすぎて、ごめんなさい!って感じでした。なんとか逆転できてよかったです」と、いたずらっぽく笑ってみせた。
「番長」の異名を持つ香川女流四段は「何度も(過去の)番組を拝見したんですが、実際に座ってみると違った緊張感があって、非常にドキドキしました」と振り返ったが、その指し手は強気そのものだった。自身の初戦は第2局。先手の中井女流六段の居飛車穴熊に対し、三間飛車(石田流)の対抗形を選択した。このフィッシャールールでは、玉が遠い穴熊が活躍することも多いが、この一局では香川女流四段の攻めが上回り、一気に攻略。124手で勝利した。第4局では内山女流2級の居飛車に対して、またも三間飛車を選んで対抗形に。持久戦模様の一局は、最終盤で激戦になったが、秒に追われた内山女流2級に二歩の反則があり、132手で勝利。ただこれも終始プレッシャーを与え続けた結果での勝利だった。
頼もしい先輩2人に背中を押されたのが野原女流初段だ。第3局で相手のリーダー渡部女流三段に相居飛車の出だしから序中盤でリードした。タイトル経験者を相手に堂々たる指し回しを見せたが、時間が少なくなってきたところで逆転を許し、痛い敗戦を喫した。ただ、負けん気の強さを見せリベンジを希望すると、第5局で実現。最終盤に入ってから、形勢が二転三転どころか、何度も目まぐるしく変わる大激戦となり、289手という長手数の末に勝利を収めた。先に必勝となってから逆転を許した末での再逆転勝利に「先輩のお二人、渡辺明監督をすごく心配させたと思うので、時間は安心してもらえるように」と、笑顔の中に次戦への決意を込めた。
里見香奈女流四冠、西山朋佳女流四冠というトップ2を追う加藤女流三段に香川女流四段、さらに若手期待の野原女流初段と、総合力では優勝候補の一角に数えられているチーム加藤。和気藹々とする中にも勝負に対する執念を滲ませる、そんな戦闘集団が開幕戦勝利で1つレベルアップした。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)