女流棋界のトップ棋士が、仲間の力でさらに強くなった。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の予選Bリーグ第2試合、チーム西山とチーム加藤の対戦が11月6日に放送され、チーム西山のリーダー西山朋佳女流三冠が、個人3連勝を果たし、チームの勝利に大きく貢献した。里見香奈女流五冠と、女流タイトルを二分する実力者だが上田初美女流四段、山口恵梨子女流二段というパートナーからパワーを受け取り大活躍。「剛腕」と呼ばれる棋風で、相手を次々とねじ伏せた。
今大会に参加している18人の女流棋士において、里見女流五冠とともに抜けた実力を持つ西山女流三冠ではあったが、初の団体戦では不慣れな超早指し、初体験のプレッシャーを感じながらの戦いに苦しんだ。自身初対局となった第3局は18歳の新鋭・野原未蘭女流初段と対戦。対局前には「大丈夫かなぁ」と不安を口にすると、すかさず先輩・上田女流四段から「大丈夫、本当に大丈夫だから。元気づける大丈夫じゃなくて(持ち時間)5分は意外とある。自分の力を出し切ることに集中して」とアドバイスを受け、落ち着いた。得意の中飛車に、野原女流初段の袖飛車という出だしになったが、着実な攻めによる“横綱相撲”で快勝。監督を務める藤井猛九段からも「ちょっと想像以上の強さでびっくりしています」と脱帽の言葉が出た。
続く第4局にも連投すると、相手はタイトル経験もある香川愛生女流四段。香川女流四段の向かい飛車、西山女流三冠の三間飛車という相振り飛車から始まると、序盤から押され気味に。ただ、ここであっさり持っていかれないところが実力者。じりじりと形勢を戻していくと、自陣が安定したところで逆襲開始。激戦を制して、チームに勢いをつける2連勝を果たすと上田女流四段からは「いやあ、頼りになる!」、山口女流二段からも「強いぃぃ。すごいぃぃ」と、喜びの声が続いた。
この2局以上に、仲間がいることを強く感じたのが決定局となった第7局だ。直前の第6局、山口女流二段が相手のリーダー加藤桃子女流三段を激闘の末に下して帰ってきた。山口女流二段は第1局で野原女流初段に完敗。責任を感じてか、大きなプレッシャーを抱えての一局だったが、これに勝利したことで思わず涙。これに西山女流三冠は「いいものを見せていただいた。さっきは疲労がひどかったんですけど(体調は試合が)始まる前の状態です」と感動し、さらに強い心を持って盤に向かった。香川女流四段との再戦になったが、またも押され気味の展開になりつつ、終盤に向かうに連れて地力で上回り逆転勝利。対局後も「チームメイトが楽しくて頼もしい。直前の山口さんの将棋が、疲れが吹き飛ぶぐらいいい将棋で、元気をもらってこの対局に挑めたのが勝因になったかなと思います」と、自分のことよりも仲間について語り続けた。
チームを作るドラフト会議の前には、いろいろとパターンは考えつつも、最終的には「自分が勝ったことがない人」という理由で選んだ上田女流四段と、山口女流二段。ドラフト直後には「全然共通点がない。『チーム不協和音』ですね」と笑っていたが、今はもうまるで違う。西山女流三冠を主旋律としたハーモニーは、実に強く、美しくなった。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)