青空のもと、撮影を行うモデルたち。モデルたちが使っているのは車椅子や義足。彼女たちは“障がい者モデル”として活動を行っている。
彼女たちの写真が掲載されているのは、ウェブマガジン『porte』。現在は、Instagramで日々、写真が配信されている。
■“卵が先か鶏が先か” porte臼井代表「障がい者の可能性を世に」
「美容やファッションを楽しんでいる様子、楽しむ上でのマインド面だったり、自分たちの存在感をいかに社会にアピールしていけるかという目線で、福祉の目線ではなくあくまでも美容業界のみんなで作るウェブマガジンとして取り組んでいます」
こう話すのは、porteを手掛ける株式会社アクセシビューティーの臼井理絵代表だ。アクセシビューティーでは、障がい者モデルのマネジメントや障がいを持つ人に向けた美容技術講座などを行っている。
臼井さんは12年間勤務していたネイリスト時代、車いすの女性と出会ったことがきっかけで、障がいを持つ人が美容業界で働くことの難しさを知ったという。
「障がいがあると学校に入学するのが難しいとか、そもそもユーザーとして美容サロンに行くのが難しいとか。そういうところが壁としてあるんだなというのを、障がいのある方と出会って、初めて気付かされた」
去年8月、アクセシビューティーを設立した臼井さんは、障がい者の美容技術の促進に向けた活動を数多く行う。しかし、技術を身に着けても就職先がないのが現状だと話す。
「まだ就職口という受け入れ先がないのが現状で、なかなか難しいところではあります。健常者に合わせた部分で、一般的な仕事ができるのかというところもあったり。そういう部分でやんわり扉が閉まっている」
障がいを持つ人が輝ける場を広げるため、何ができるのか。臼井さんが出した答えは“障がい者モデル”の起用だった。
「“卵が先か鶏が先か”みたいな話で。就職先がなければ学び始める方もいないし、育っていなければ受け入れ先の改革も難しい。美容業界にいるプロたちと障がい当事者たちが一緒にモデルという写真撮影を通して、障がい者の可能性を世に。『障がいがあってもオシャレができるんだよ』とか、『オシャレが好きなんだよ』って自己表現できるんだよっていう可能性を発信して」
■夢が叶いモデルに「『障がい関係ないんだよ』ということを伝えていきたい」
障がい者雇用の促進のため、まずは彼女たちを知ってもらうところから。そんな思いから今年9月、障がい者モデルタレント専門の芸能事務所「アクセシビューティーマネジメント」を設立。現在はporteの専属モデルら4人が所属し、活動を行っている。
「とあるイベントのリポーターのオファーだったり、製薬会社さんの障がい者調査や一般企業の障がい者雇用の広告、写真撮影のキャスティングなどお声をいただいています。表舞台で活躍するところに、当たり前に障がい者の方もいるという、選択肢の拡大というところを目標にしています」
障がいがあったとしても選択肢を減らさない。その気持ちは活動するモデルたちも同じだ。事務所に所属する工藤星奈さんもその1人。彼女は先天性緑内障という目の病気を患い、視力は人の影がぼんやりと見える程度だという。
「モデルの仕事自体、視線が合わないといったことで難しいと思っていたので、諦めていたんですけど。障がいがあってもなくても関係ないんだということを知ることができたので、小学生からの憧れを実現することができてすごくうれしいです。あくまでも、障がいがあるよってことはちょっと伝える感じで、『健常者の方と同じを活動してるんだよ』『障がい関係ないんだよ』っていうことを伝えていきたい」
そして、現在はporteモデルのオーディションも開催。今月23日には最終選考が行われ、全国150人の応募の中から選ばれた新たなモデルが誕生することになっている。
「一人ひとりの可能性がちゃんと花開けるような道を増やしていきたいというところと、当たり前にある健常者の仕事の選択肢と同じぐらい、障がいのある方にも人生の選択肢が増えることが一番大切だなと感じています」
■ファッションモデルのギャビー「ジャンルに限らず壁や縛りがあると思う」
porteと代表の臼井さんの活動について、ファッションモデルのギャビーは「私も今モデルという仕事をやっていて、“ハーフだったら顔のインパクトが強いから女優の仕事は向いてないよ”とか、壁というか縛りを感じることがある」と明かした上で、期待を寄せる。
「ジャンルに限らず、みんなたぶんそういう縛りがあると思う。こうやって先陣を切ってやってくれることで、後の人が続いていろんな取り組みができるのは素敵な活動だと思う。最初に始めるとなるといろいろな壁があると思うから、諦めないで一つひとつ越えて最後まで。それこそ『当たり前に』とおっしゃっていたように、モデルでもタレントでも活躍できるように応援したい」
porteの活動により、先天性緑内障を患う工藤さんはモデルになるという夢を叶えた。ギャビーがモデルを目指したのは、「これしかない」という思いからだったという。
「幼少期あんまり学校に行けてなくて。中卒だったり、家庭環境で家族といることがあんまりなかったりした。学校行ってない、何もないどうしよう、ってなってたけど、ずっと小さい頃から『モデルになる』っていう夢があったから、根性だけでやってきた。そこだけがブレなかったから、頑張って努力してきた。ただ、やっぱり上には上がいるというか、“ここにいきたい”っていうある程度のラインにいっても、もっと上があると思ってぜんぜん満足できなくて、ずっと追いかけている感じ。でも、“自分が一番輝ける”と思うステージだから、そこを貫いて頑張っているところ」
こうした思いを受けて、フリーアナウンサーの柴田阿弥は「ギャビーさんのお話をうかがって、やはり挑戦できる土壌がまずあるということが大切になってくると思う」と述べた。(『ABEMAヒルズ』より)
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