「私は決してサボっていたわけではありません」。ことし3月、JR西日本岡山支社の運転士の男性が、会社を相手取り異例の訴訟を提起した。
【映像】ミスしたら無給?1分遅延で56円カット ミスで無給&罰金はアリ?ナシ?
発端となったのは去年6月のこと。男性はJR岡山駅から回送列車を車庫へと移動させるよう指示を受けていたが、当該の列車が到着するホームを「2番線」ではなく「5番線」と勘違いしたことで交代で2分間、車庫への移動に1分間の遅れを生じてさせてしまう。
運行への影響はなかったものの、JR西日本は2分間の遅れについて“無価値労働”と判断、最終的に1分間分の賃金56円を給料から差し引いた。理由について、遅刻や欠勤と同じ“ノーワーク・ノーペイの原則」”を適用したとしている。運転士はこれを不当だとして、未払い賃金56円と慰謝料などを合わせ220万56円の支払いを求めている。
■鉄道会社の「ノーワーク・ノーペイ」はやむを得ないのか?
カンニング竹山は「基本的にはミスが許されない会社なので、こういう決まりもあるのかもしれない」とコメント、一方、タレントでソフトウェアエンジニアの池澤あやかは「そもそもミスの定義って難しいと思っていて、ちょっと遅延したとか、どこまでをミスとするかあやふやな中で、減額されるのは結構きつい職場だなと感じる」と疑問を呈する。
また、ジャーナリストの堀潤氏は「僕は“JR西日本と”聞くと、福知山線の脱線事故を思い出す。あの時の運転士は“日勤教育”というものを受けさせられる過酷な環境で働いていて、当日も1分20秒の遅れを取り戻そうと、無理な運転をしてしまったといわれている。今回の訴訟に関しても、ここまで時間をきっちり管理するというのは非常に厳しいことを強いるんだなということが伝わってきたし、本当に正しいやり方なのかということを問いかけているように思う」と指摘する。
元経産官僚の宇佐美典也氏は「組合側が経営側の顔色ばかり伺っていてもよくないし、対立し過ぎてもよくない。しかし働きやすい環境を作るという点では一致できるはずだから、健全な話し合いでルールを作っていけるかが重要だと思う」とコメント。
また、テレビ朝日の田中萌アナウンサーが自身の仕事に置き換えて「間違ってVTR振りをしてしまったとして、それで賃金を削られてしまうのはちょっと怖いなと思ってしまう」と感想を漏らすと、元NHKアナウンサーの堀氏は「転勤の対象になるとかね。あ、NHKのことだ(笑)。全国転勤があるので、“あのアナウンサーよく噛むな”とか“あそこであれは使えないな”となると、次の異動場所は自ずと…」と苦笑。「“ペナルティがある”ということを言葉に出しては言わないけれど、そういうことが自分を頑張らせるモチベーションになってしまっていたところはあるし、怖いところだとも思う。本来はマネジメントをする側の責任であって、社員が怯えながら自分を叱咤するような現場じゃない方がいいに決まっている」との見方を示した。
他方、テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「転勤をちらつかせてものを言わせない、というようなことでなければ、競争でもあるわけだし、噛み続けたらしょうがないじゃないか。クオリティーを高める意味ではいいのではないか」と反論した。
また、IT企業勤務のよんてんごP氏は「僕の場合、ヤバい現場を転々としてきたこともあり、“ミスや遅刻をしても、お金を払えばいんだろ”という方向に崩れる人も見てきた。そうなると、“罰金があることで頑張らなきゃ”、と思わせるような“最後の砦”も崩壊してしまう。そうなれば、他の方法を取るしかないと思う」と話した。
■「ノーワーク・ノーペイ」は他の業種でも成立するのか?SNSは?
トイレ休憩が全ての人に必要である一方、喫煙はそうではない。ただ、そんな喫煙所で物事が決まることもあるという点では、“タバコ休憩”も立派な仕事だという主張もある。堀氏は「実際、吸いながら決めていったこともあったし、パソコンを打っているように見えたチーフプロデューサーがソリティアをやっている。でも実はソリティアをしながら、ものすごく良い構成を考えていたということもあった」とした上で、SNSをしている時間はどうなのか?問題について次のように語った。
「(NHKは)当時、SNSの個人アカウント開設は内規違反だったが、僕は勝手にアカウントを開設した。“視聴者の皆さんと繋がれるツールだし、仕事にしたい”と説得したところ、“そういう思いだったら”ということで、NHKで初めて認められた。ところが取材内容が組織とそぐわなくなってくると、“やめろ”と言われるようになった。そこで“これは業務時間外に使う”といって、プライベートなアカウントを開設し、空き時間に取材のためのツイートをガンガンするようになった。それを今でも使っている」。
平石アナも「本番前にスタジオで資料を読んでいる時間は仕事だと思うが、待機時間にアナウンス部で新聞を読んでいる時間は仕事なのだろうか。取材の一つだと考えれば、雑談の時間も仕事になるし、いろいろなことが繋がってくるという意味では境目は無いし、時給換算のようなことがしづらい職業だ」と話す。その上で、「Twitterは良かったとして、Instagramはどうなのか。田中アナウンサーはInstagramで非常にいい仕事をしているが、パフェの写真を見て、“これは仕事なのか?”という人もいると思う」と問題提起。
すると田中アナは「私は仕事として写真を上げている。衣装の写真だけが並んでいても、人は興味を持ってくれないと思うので、ある意味でプライベートみたいなことを載せることで私に興味を持ってもらって、さらにそこからテレビ朝日やABEMAの番組を見ることに繋がったらいいなと」と応じた。
これにカンニング竹山は「マイナスになってしまうような写真をInstagramに上げる人はいないだろうし、自分が良くなるためにやっていると考えると、全てが仕事になる」。続けて「ただ、僕たちの場合、地方に営業で呼ばれて行って、スベりまくる可能性もある。依頼してきた側からすると、ちゃんと仕事をしたのか?と思われるかもしれない。それでもこちらとしては、契約どおり、お金はもらわなきゃダメだ。一方で、テレビ番組の場合、バラエティの収録であまり良い動きができないと、呼ばれなくなる。初回はギャラをもらえても、もう仕事をもらえないという過酷なことになってしまう。この番組でも、ゲストのコメンテーターとして呼ばれて2回連続で黙っていたら、さすがにもう3回目は呼ばれないだろう。芸人の場合の“仕事をした・していない”は、そういうところが難しい」と吐露。
企業のコンサルティングを生業にする宇佐美氏も「僕はTwitterは仕事じゃないと思って使っているが、そこで炎上したとしても、それをどう処理するかで評判が上がりもするし、下がりもする。それから僕の仕事は、すべてが契約だ。アドバイザリー契約や調査契約を結んで2カ月、3カ月経って、メチャクチャ頑張ったとしても更新されなかったら終わりだし、全然やった感がなかったとしても更新されれば仕事した、評価されたということだ。その意味では、自分の中でメリハリがなくなっている」と明かした。
■「マネジメントする側の指示や責任感があってこそ成り立つ」
堀氏は「今こうやって番組をやっている間、僕のメッセンジャーにはプロデューサーから“今のコメントすごく良かったですね。でも次はあれがありますよね”とダイレクトでコメントが飛んで来る。それこそ、それぞれがそれぞれの現場で仕事をしているな、と感じる。クリエイティブ職ではない場合も、マネジメントがしっかりした、エビデンスに基づいた指示を現場に対して出せるかどうかだと思う」、平石アナは「本当にそのとおりで、仕事上のミスは、そこに配置した人の責任でもある。ミスすることも加味した上でお願いをしているはずなので、“罰金”なんていうのはあり得ないと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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