将棋の藤井聡太三冠(王位、叡王、棋聖、19)が11月12、13日に行われた竜王戦七番勝負第4局で、豊島将之竜王(31)を122手で下し、同シリーズの成績を4勝0敗のストレートで竜王奪取に成功した。この結果、羽生善治九段(51)が保持していた最年少四冠記録22歳9カ月を大幅に更新する19歳3カ月で最年少四冠を達成。史上初の「10代四冠」になるとともに、竜王を含めた四冠を保持したことで、序列トップとなり全棋士の頂点に立った。
【中継】第34期 竜王戦 七番勝負 第四局 2日目 豊島将之竜王 対 藤井聡太三冠
プロデビューから5年余り。令和の天才棋士が、ついに棋士No.1の座についた。今年度、棋聖、王位と防衛し、叡王を奪取して迎えた将棋界最高峰タイトル、竜王戦の七番勝負。豊島竜王と、今年度3つ目のタイトル戦も好勝負必至と見られていたが、終わってみれば圧巻の4連勝という突き抜けた結果が残った。
今年度15局目となった藤井三冠と豊島竜王の対戦は、豊島竜王の先手番から角換わりでスタート。お互い、深く研究を進めている戦型とあってか、1日目の午前中は非常に指し手のペースが早く、昼食休憩まで64手目まで進行し、早くも中盤に入った。午後に入ると、激しい局面に両者ともに長考合戦。封じ手までに9手分しか進まずに74手目を藤井三冠が封じて、形勢互角で1日目を終了した。
明けて2日目、じりじりとペースを掴み始めたのは藤井三冠。自玉の頭で起きた戦いにうまく対応すると攻めの手番が回ってきたところで豊島陣を強襲。分厚い攻めで徐々にリードを拡大したが、最終盤では一時逆転され熱戦に。それでも持ち時間が残り10分を切った中でも、厳しい攻めを止めなかったことで再逆転。息詰まる勝負に決着をつけた。シリーズを通しては、研究家として知られる豊島竜王に対して、以前は課題に挙げていた序盤でも対等に渡り合い、研究や前例を離れた力勝負に入った中盤で少しずつ引き離し、勝ちが見えた終盤で確実に勝つ。19歳にして全く隙のない強さが、このシリーズ4連勝でも光り続けた。
対局後、藤井三冠は「中盤ずっと難しいと思って指していました。最後、3四桂と打って迫れる形になったかなと思いました」と振り返ると、竜王奪取には「まだ実感はありませんが、最高峰タイトルなので光栄に思いますし、それに見合う実力をつけていければと思います」とコメント。また棋士の序列1位になったことには「今期はここまで結果は出せていますけど、内容的には課題が多いので、そのあたりを改善したいです」と述べた。
最年少四冠の偉業は、本格的な「藤井時代」の到来を告げた。竜王を含めた四冠を保持したことで、渡辺明名人(棋王、王将、37)を上回り、ついに棋士の序列でトップに。8つあるタイトルのうち半数を占め、トップ棋士ばかりと対戦が続いた今年度も、勝率は8割を余裕を持って超えている。対局の内容自体は激戦もあるが、出てきた数字だけを見れば豊島竜王と戦った3つのタイトル戦、通称「十九番勝負」も王位戦(4勝1敗)、叡王戦(3勝2敗)、竜王戦(4勝0敗)と、11勝3敗と大きく勝ち越した。タイトル戦出場6回で、全て獲得に成功。この後に続くALSOK杯王将戦での挑戦者決定リーグで挑戦権を獲得できれば、五冠の期待も大きく膨らんでいく。
2016年10月、14歳2カ月に四段昇段、プロデビューを果たし話題になってから約5年。小さなスランプこそあったが、周囲から大きな壁にぶつかると言われてきたものを、ことごとく突き破り、そして頂点へと駆け上がった。羽生九段が七冠独占をした1996年から25年。その時にも似た天才棋士による一時代を築き始めた藤井“新竜王”がこの先、ファンに見せ続ける世界は、果たしてどんなものか。
(ABEMA/将棋チャンネルより)