「皆さんが理解できるスピードも、僕には追いつけない」学校や職場で、境界知能の“生きづらさ“に悩んできた男性
話したくても話せない"場面緘黙症"とは?
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 IQの平均値とされる85~115と、知的障害の判定基準でもあるIQ69に挟まれた「境界知能」。人口の14%、つまり7人に1人が該当するといわれ、会話や言葉を認知することが苦手でコミュニケーションが取れない、集中できない、漢字が覚えられないなど、学習の土台ができないまま成人を迎えるケースもあるというが、日常生活に支障がなかったり、自分でも気づかなかったりするため、顧みられることが少ないのが実情だ。

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 「初対面とか最初の印象は悪くはないと思うが、それが2回、3回と会っていくごとにボロが出る」。難波さん(仮名・30歳)の場合、5歳頃から違和感があったという。

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 「勉強が苦手だなと思い始めたのが中学校に入ってからで、一番苦手だった科目が数学だった。文字式が入ってくると、先生の言っていることがほとんど分からない状態で、聞こうにも聞けない状況だったというか、分からないまま過ぎてしまった」。

 分からない事を言語化することも苦手で、上司に相談することもできず、モヤモヤを抱えたまま疲れてしまうことが多いのだという。結果、友達もできず、周囲から「さぼってる」「要領悪い」などと言われ、うつ病を発症してしまった。

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 そんな難波さんが、自身が境界知能であることを知ったのは2年前のこと。宮口幸治氏によるベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』を読み、生きづらさの理由に初めて気がついたという。「かなり心がほっとした部分があった一方で、できるだけ早い時期に見つけられたら少なくとも今よりは楽しい人生だったのかなと思う」。

 現在は資格を取るために通信制の大学に通っている難波さん。「認知力が優れていないないので、理解するのに時間がかかってしまう。だから講義も、みなさんなら理解できるスピードでも僕には追いつけないことがある。動画であれば速度を0.8倍速とかにして聞くことができるが、そういうことも配慮してくれたらと思う」。

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 絵を書き写すなどのパズル的なトレーニングにより、幼少期から認知機能を向上させることができる可能性があることを知った難波さんは今、子育て世代に向けて啓発活動を行っている。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「昭和の時代までは、その人その人にきちんとはまる場所、仕事があったということもあり、そんなに気づかれなかった部分もあると思う。しかし21世紀に入る頃から、個人の能力を究極にまで高めなければいけないような競争社会になった結果、こぼれ落ちてしまう人たちがいるんだということが可視化されてきたのではないかと思う。

 また、自閉症などを総称して、最近では自閉スペクトラム症(ASD)と呼ぶことも増えたが、スペクトラムというのは連続体という概念で、重い症状の軽い症状までがグラデーションになっているということだ。やはり境界知能の人もADHDの人も、ここから先は病気や障害だと認定されるけど、その手前は認定されないとなると、その隙間の人は一体どうなるんだという問題が出てくる。我々の社会は、その連続体であるということを引き受けなければいけないと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
 

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