組織のトップにして、最も革新的。新たな事業を起こしたベンチャー企業の社長のような話だが、長い伝統を誇る将棋の世界でも今、それが起きている。日本将棋連盟の会長を務める佐藤康光九段(52)が繰り出す見たこともない将棋は、ファンだけでなく将棋関係者たちの目を丸くし続けている。かつて通称「島研」と呼ばれる研究会で、ともに腕を磨いた島朗九段(58)から見ても「(忙しくて)研究時間もないはずなのに、思いつきがすごい」と驚きが隠れない。直近の対局で指された銀を進める構想は、周囲から「棒銀」ならぬ「暴銀」とも呼ばれたが、それも全ては向上心に由来するものだ。