タイトル99期で永世七冠の羽生善治九段(51)と、十八世名人の有資格者・森内俊之九段(51)。小学生時代から何十年と戦い続け、プロの舞台だけでも138局も盤を挟んだ。名人位については、2003年度から2016年度まで羽生九段か森内九段、いずれかが保持するという時代もあった。2人を若いころから知る島朗九段(58)は、10代からその研究熱心さにも感心していたが、それは名人を争う立場になっても一緒。その象徴的なものが「徹夜の感想戦」だった。
【動画】今年4月には叡王戦でも戦った羽生善治九段と森内俊之九段
2003年度は、名人を保持していた森内九段に、羽生九段が挑戦。第1局から第3局まで羽生九段が3連勝し、奪取に王手をかけると、第4局は千日手に。指し直し局も羽生九段が制し、結果4連勝で通算4期目の名人となった。現場にいた島九段によれば「当時は今より休憩時間も長くて、封じ手時刻も早かった。決着がついたのは、2日目の夜中の1時くらい」で、タイトルが移動したこともあり、記者たちが感想戦の後のインタビューを待っているところだった。
ところが、ここからが長かった。決定局の感想戦が終わり、ようやくこれでインタビューかと報道陣が立ち上がろうとしたところ、千日手局の感想戦が始まった。「羽生さんも森内さんも感想戦が好きでねえ」。既に最初の感想戦も1時間ほど行い、時刻は午前2時ごろ。「その感想戦も熱心なんで、とてもじゃないけど、誰も『そろそろ』とは言えないんですよ」と、結局その感想戦も午前3時ごろまで終わらなかった。
季節は5月。あと数時間もすれば空も白んで来るような時間でもあり、島九段は「連れ立って4人ぐらいで、熱海発の新幹線で帰った記憶がありますね。徹夜のまま。若い頃の思い出ですよ」と、その時の光景を思い浮かべた。とにかく将棋が好きで、また考えるほどに強くなることも知っている2人。目の前で起きたものをクリアにせずに、そのまま床につくようなことなど、考えられなかったのかもしれない。通算139局目となる直接対決が実現した時、対局と同じくらい感想戦は将棋ファン誰もがじっくりと見たいものになる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)






