国内最大級のプロアマ参加の麻雀大会「麻雀最強戦2021」のファイナルの2nd Stageが12月12日に行われ、プロ麻雀リーグ「Mリーグ」のTEAM雷電でもプレーする瀬戸熊直樹が決勝卓のオーラスで逆転の倍満ツモを決め、初の最強位に輝いた。
震える手でアガリ牌を掴み、もっと震える手でようやく裏ドラをめくると、そこには涙の優勝が待っていた。オーラスの南4局1本場、トップを走る宮内こずえをマクるには、倍満ツモ・跳満直撃という高いハードルが課せられていた。手がまとまらない限り、宮内を直撃することはほぼ不可能なだけに、自力でツモるしか栄冠には届かないことは、本人が一番わかっていた。南4局ではドラ2枚の手を配牌でもらいながらアガれず、チャンスを逃したかに見えたが、続く南4局1本場でまたもドラが2枚。進めるうちに3枚目、さらには4枚目まで引き寄せカン。裏ドラ1枚あれば条件達成のリーチをかけると、八万を引き、裏ドラも2枚。リーチ・ツモ・タンヤオ・ドラ4・裏ドラ2。9翻まで伸び倍満ツモをクリアし、悲願のタイトルに手が届いた。
試合後、瀬戸熊は「信じられないです。ずっとタイトル挑戦し続けて10年ぐらい勝てなくて、今日もダメだと思ったんですが、諦めることだけは許されないと思って、最後まで条件を満たすこと考えてやりました」とコメント。長きに渡り麻雀に対して真摯に向き合う姿勢、プロの鑑とも言われる男の大逆転優勝に対戦者、実況、司会と、周囲も涙が止まらなかった。
これまで数々タイトルを取ってきた瀬戸熊の目に、ひときわ大粒の涙が光ったことにも、多くの理由があった。最強戦では毎年のようにファイナルに進みながら、栄冠が遠かった。また所属する日本プロ麻雀連盟では、最高峰タイトルの鳳凰位に3度輝きながら、今期の成績不振が響き、A1リーグからの陥落が決まったばかりだった。Mリーグでも、TEAM雷電はリーグ最下位に沈み、人一倍責任感が強い瀬戸熊にとっては辛い日々だった。さらに、長年の戦友でもある前最強位の多井隆晴が、ファイナル1st Stageで敗退。より最強位への思いを強くした。「この大会を盛り上げたのは多井さんだと思っています。その多井さんが敗れて、最近落ち目の僕に対して『セトが本気になったらこんなもんじゃない』と言ってくれた言葉がずっと支えで…。久しぶりに勝ててよかったです」。少し落ち着きかけていた涙も、多井の名前を口にした途端、また溢れ出した。
「本当に今日はご声援のおかげで頑張れました。みなさんの応援のおかげで取らせてもらったタイトルです。次は自分の力で掴み取って、また瀬戸熊強いなと言ってもらえるようになりたいです」。多くのプロ、ファンたちが強者として疑わない瀬戸熊が、苦しい時を乗り越えて、ようやく手にしたタイトル。プロ雀士としてもっとも厳しい時に耐えて掴んだそれは、瀬戸熊をもう一つ上のステージに導くものだ。
【決勝結果】
1位 瀬戸熊直樹
2位 宮内こずえ
3位 一瀬由梨
4位 醍醐大
(ABEMA/麻雀チャンネルより)