「10万円一括現金も選択肢に」突然の方針転換は来夏の“参院選への色気”か
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 18歳以下に対する10万円相当の給付をめぐって13日、衆議院予算委員会で岸田総理は「5万円ずつ2回に分けた現金給付と、10万円を現金で一括給付することも選択肢とする」と述べた。

【映像】現金10万円&一括給付を希望する自治体(東京・足立区、大阪・箕面市など)※4分ごろ〜

 当初「現金5万円とクーポン5万円による給付」を原則としていた政府。自治体から「事務負担が重い」「全額現金給付を認めてほしい」という声が相次ぐ中、突然の方向転換となった。

 都内のある印刷会社では、給付金の5万円がクーポン券になるのかならないのか、やきもきした思いで決定を待っている。

 偽造防止の技術を持つこの印刷会社では、自治体からクーポン印刷の仕事の受注があるかどうか、期待していたが、岸田総理の発言で、雲行きが怪しくなってきたという。印刷会社の担当者は「コロナ前と比べると、仕事量的には減っている現実がありますので……」と頭を悩ませる。

「10万円一括現金も選択肢に」突然の方針転換は来夏の“参院選への色気”か
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 ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した公共政策に詳しい東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏は、今回の政府の方針転換について「困窮者対策としては良いことでもある」と評価する。

「もともと公明党の公約を自民党が丸呑みする形で実施することになった。『せっかく配るのなら経済対策も兼ねたほうがいい』『来夏の選挙にも効果があるようにしたい』『国民や野党の声にも耳を傾けたい』と色気が出た。さまざまな思惑が重なった結果、中途半端な仕組みになった。そもそも、困窮者対策を迅速かつ的確に行うには、現金給付が一番だ。そんな中で『一括現金で給付もいいですよ』となったのは結果的には好ましい」

 来年の夏には参議院選挙が控えている。西田氏は「参議院選挙でも勝てば、岸田政権と自民党は安定した政権運営ができる」と述べる。

「今年の秋に行われた衆議院選挙では、自民党が苦戦するのではないかと言われていたが、絶対安定多数を確保する“予想外の勝利”を掴んだ。ただし、もう1回選挙が控えている。来年の夏に行われる参院選だ。衆院選に続き、参院選でも自民党が勝てば、安定した政権運営が可能になり、岸田政権の求心力も高まるはずだ。自民党は、ここでも勝つ必要があり『なんとか参議院選で優位に立ちたい』といった思惑が出てしまったのではないか。普通に考えれば、一括して配ったほうがいいに決まっている。当初、それを原則2回にして、現金とクーポンに分けて配ろうとした。岸田総理は以前から『国民の声を聞く』と言ってきたところに、与党内や大阪府の吉村洋文知事から当初『バラマキだ』と強い批判しがでた。『現金だと貯蓄に回ってしまうからクーポンだ』といった声もあった。そんな中で『野党の声も聞いている』という中途半端な折衷案を示し、このような形になったのではないか」

 一方で、予想されるのは自治体の混乱だ。西田氏も「実際に所得制限を精査し、住所と口座情報を集め、給付する事務を担うのは自治体の仕事だ」と話す。

「閣議決定された11月の文書を見てみると、5万円を現金で先に給付する、残り5万円相当はクーポンを原則として春をめどに配るという書き方だった。だから、給付のオペレーションは2回に分けてやるものだと認識して、自治体は準備を進めていたはずだ。前述の印刷会社のように『クーポン印刷の仕事が請けられるのでは』と思っていた会社もあっただろう。それが、全部ひっくり返った。中には独自の仕組みで、所得制限を取り払う自治体もあるが、給付の準備を組み直す自治体も出てくるだろう。しわよせがいったのは自治体だ」
(『ABEMAヒルズ』より)

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