国立感染症研究所は14日、性行為などでうつる梅毒について今年の感染者報告数が過去最多の7134人になったと発表した。梅毒の報告数は2010年以降徐々に増え、2019年・2020年は減少傾向にあったが、今年再び増加した。
この梅毒について、感染症の専門医でKARADA内科クリニック五反田医院長の佐藤昭裕さんは「感染しても無症状の人がいる」と注意を呼び掛ける。
「性行為でうつると言えば終わりですが、濃厚なキスとか、そういったものでもうつる可能性があります。梅毒の難しいところは、(症状に)気づかないことが多いんです。無症候感染といいますが、梅毒は病気分類として、大きく第1期〜第3期の3つに分けることができます。第1期梅毒と言われる状態は、平均3週間くらいで発症し、陰部に痛くない潰瘍や傷のようなもの、皮下腫瘤ができます。第2期梅毒は、手のひらや体に発疹が出て、第3期梅毒になると、心臓や頭に梅毒がいってしまいます」
第3期梅毒のような症状は「現代ではあまり見られない」と話す佐藤さん。第2期梅毒で体の皮膚に発疹などが出たあとは「症状が勝手に引っ込んでしまう」と話す。
「そのあとは、周りにもうつすし自分の中も梅毒がいる状態がずっと続きます。これが潜伏期梅毒といわれる状態です」
無症状の人の場合、他の性感染症を発症し、その検査の過程で初めて梅毒にも感染していたことがわかるというケースも。そのため、不特定多数との性行為や、コンドームを使用しない性行為がある人は、一度検査して積極的にチェックする必要があるという。
佐藤さんは、梅毒の治療薬について「世界基準は、注射を1本打てば梅毒は治ります。その注射薬が、日本では今使えない状況なので、2週間とか4週間の間、抗生物質を毎日1日3~4回飲まないといけない」と説明。また、「飲み忘れそう」という声に対しても「本当にそうで、特に症状がない病気の薬は、飲み忘れがとても多いです。梅毒についてもそれが言えるので、『飲み忘れて薬が余っちゃった』という人はよくいらっしゃいます」と明かした。
海外での梅毒治療は注射による治療薬の投与が進んでいるが、日本では抗生物質の飲み薬による治療が行われている。そんな中、今年9月、ファイザーは厚生労働省の開発要請を受け、世界標準治療である注射薬の製造販売が承認されたと発表した。
「ペニシリンGという昔からある薬ですが、『ステルイズ』という商品名で発売することが決まっています。性感染症一般的に言えるのですが、受診される患者の中に『恥ずかしい』と思う人が多いです。一回外来にきて、例えば『陰部に症状があるから』と検査をするのですが、前述の通り、梅毒は勝手に症状が消えることがあります。消えたように見えても、実際は治ってなくて引っ込むだけですが、検査結果を待っている間に『症状がなくなったから』と、検査結果を聞きに来ない人もいます。今後、日本で注射薬が打てるようになっても、このあたりは問題ですが、梅毒の治療は内科でも困惑する先生がいます。感染症専門医がいるクリニックで注射を打てれば、ほとんどの方が治りますし、そういった面では注射に期待することはとても大きいです」
(『ABEMAヒルズ』より)
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