「朝どうしても起きられない」「気持ち悪くて動けず遅刻する」
今月、発売された漫画「学校に行けなかった中学生が漫画家になるまで」では“ある病気”に悩み、向き合った漫画家・月本千景さんの経験が描かれている。
【映像】朝起きられない、気持ち悪くて動けない…「起立性調節障害」を描いた漫画
月本さんが経験したのは、10代の10人に1人が発症するという「起立性調節障害」という病気だ。この病気には、どのような症状があるのだろうか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』コメンテーターで、実際に患者の診療にあたる臨床心理士の藤井靖氏はこう話す。
「立ったときや起きたときに、自律神経の働きが悪くなって、体とか脳への血流が低下する病気です。特に午前中に症状が強く、子供の不登校のうち、3~4割はこの疾患が関わっていると言われています」
主に起き上がったり立ち上がったりした後、めまいや動悸などが起きるという起立性調節障害。他にも、吐き気や頭痛、思考力低下、疲れやすい、失神など重症度などによって症状は様々だ。月本さんに前兆が現れたのは、小学6年生の頃だった。
それまでは普通に過ごしていたのに、ある時、急に授業の内容が耳に入ってこなくなり、ひどい時には記憶がなくなることも……。やがて、月本さんは授業についていけなくなってしまう。
他にも言葉が出てこなくなったり、親しかった人によそよそしくなってしまったり、その症状が日に日に月本さんの生活を蝕む。「なんか変だ」「どうしちゃったんだろ私」と自分でも異変を感じていた月本さん。しかし、何が起きているのか分からず、誰にも相談できないまま月日が過ぎていった。
起き上がったときに動悸がするなど、中学生になるとその症状は、さらにひどくなっていく。それなのに病気なのか分からない。もどかしい日々を送っていた中で、たどり着いたのがこの起立性調節障害だった。
専門医も少ない中、母親の支えもあり、月本さんは検査を受けることができた。結果は重度の起立性調節障害と知らされた。
「ただ名前を知っただけそれだけでこんなに安心するものなのか」
薬を処方されて、少しずつ体が楽になっていったという月本さん。その後も、症状が続いていく中で、漫画では、小学生の頃に好きだった「漫画を描くこと」を仕事にしようと奮闘する姿も描かれている。
薬だけでは中々解決しないという起立性調節障害。月本さんにとっての母親のように、環境づくりや周りのサポートが大事だと藤井先生も語る。
「まずは‘‘怠け’’や‘‘根性がない’’などと決めつけないことが大事。そして『この疾患がどんなメカニズムで起こるのか』というのを家族や本人と理解をする。小学生や中学生であれば、学校にも共有してもらって、症状がありながらもその子なりに学校生活が送れるような環境を作って『自分がどんどん何もできなくなっていく』と自信を失わないように、その子ができるレベルや範囲で勉強なり、活動や生活をしていくことが大事です。不調になる身体の部位が日によって違ったり、症状の強さにも波があるので、周りの方は日々の変化に一喜一憂せず、長い目で見守っていただくことが本人の安心感や症状のコントロールにもつながります」
番組の取材に対し、著者の月本さんは「ネットで検索すれば出てくる病気の情報は、必要最小限に抑え、『経験者からの意見の押しつけ』や『決めつけにならないように…』などたくさんのことを考えながら描くのは難しかった」と苦労を告白。
また、病気については「症状の心当たりがある人にも、その周りの人にも知ってもらって理解に繋がれば、少しずつでもいい方向に向かうはず」とコメント。続けて「病気の向き合い方はありませんが『自分だったらどうするか』と考えてもらえるきっかけが、この本の中にあればいいなと思います」と考えを述べた。(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側