「18歳で初段になれなければ難しい」「1年間、同じ段級なら即破門」師匠しか弟子に伝えられない将棋界の「プロを諦めるということ」
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 プロの道へと導くのも師匠なら、その道を諦めさせるのも師匠。将棋界が厳しい勝負の世界であることを改めて感じさせる経験談だ。「第1回ABEMA師弟トーナメント」の開幕に先立ち、師匠8人が集まり将棋界の師弟関係について語る「師匠サミット」が12月18日に放送された。師匠たちは、それぞれのテーマで弟子への思いや、師匠としての悩みなどを公開していったが、和やかな雰囲気の中でも、ピリッとした空気が流れたのが棋士になれない弟子たちについて。年齢制限、昇級・昇段ペースによって、師匠からプロへの道を断念するように伝えることもあると明かされた。

【動画】師弟について語る8人の師匠

 将棋のプロ、つまり「棋士」になるには、一部の例外を除いて育成期間である奨励会で勝ち上がり、三段リーグを抜けて四段に昇段する必要がある。腕に覚えのあるアマチュアたちが、少年・少女のころから入会し、6級からスタート。例外を除き26歳までに四段昇段を果たさないと、自動的に退会となる厳しいシステムだ。

 棋士・奨励会員合わせて22人もの弟子を持つ井上慶太九段(57)は「僕が奨励会に入ったのが40数年前ですが、奨励会の規定はそのころとあまり変わっていないが、入会の年齢は早くなっている」と、入会の低年齢化を感じるとともに「18歳までに初段になっていないと、プロは難しいと思っている。本人のやる気もありますが、その時点で初段になっていない場合は(他の道を)考えた方がいいんじゃないか」という考えを示した。

 最年少14歳2カ月でプロ入りした藤井聡太竜王(王位、叡王、棋聖、19)ほどではないにせよ、小学生から入会し、止まることなく昇級・昇段を繰り返して、あっという間に10代でプロになる者は珍しくない。20代半ばが、棋士としてのピークを迎えるという意見もある中、18歳で三段リーグの2歩手前にも届いていないということは、その先の未来が明るいものではない可能性も高い。当然、奨励会を続けたいという弟子もいるが「その時は説得するか、頑張れと言うか。見込みがないなら早く他の道に行った方がいいんじゃないかと」と、心を鬼にすることもある。

 同じく棋士、奨励会員の弟子がいる木村一基九段(48)も、思いは同じだ。「井上先生のように(年齢を)区切られるというのは、なかなか勇気がいる決断。うちはそこまできつくはない」とした上で、「例えば受験のことを考えて、そのきっかけで辞めさせたことはあります。厳しいようですけど、言ってあげるのも師匠しかできない優しさ。責任も感じますけど、そういう時が来たら言わなきゃいけない」と、進学を控えるタイミングで次の道を勧めるケースもあるようだ。

「18歳で初段になれなければ難しい」「1年間、同じ段級なら即破門」師匠しか弟子に伝えられない将棋界の「プロを諦めるということ」

 日本将棋連盟の常務理事を務める鈴木大介九段(47)は、師匠の大内延介九段の言葉を、そのまま引き継いでいる。「段位だったら1年間、同じ段級にいたら即破門。師匠の顔に泥を塗ることがあったら即破門。あとは師匠が黒といったら白でも黒ですね(笑)」。ちょっとしたジョークめいたものも含んだが、奨励会で停滞しているようでは、先が見込めないという点では、他の師匠と同じだ。「弟子の梶浦宏孝七段も、1年間同じ段級だったら破門というのが、一番ありがたかったと。同じところにいたら13、14歳でも辞めないといけないわけですからね。自分は二段に2年半いたんで、1年半は師匠から逃げ回っていました(笑)」。厳しいことには変わりがないが、盤に向かえば頼れるのは己一人という将棋界においては、これぐらいのプレッシャーを感じながらプロ入りを目指さなければ、届かないほどの世界なのだろう。

 各師匠の思いや、厳しいルールについて、視聴者からは驚きや、納得したといった意見が多く寄せられていた。

◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

【動画】師弟について語る8人の師匠
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【動画】師弟戦について語る日本将棋連盟会長・佐藤康光九段
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