「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Aリーグ2位決定1回戦、チーム井上とチーム木村の対戦が1月1日に放送され、チーム木村がスコア3-1で勝利し、2位通過での本戦出場にあと1つとした。次戦では予選で1度敗れているチーム深浦と、本戦出場をかけて再戦する。敗れたチーム井上は、予選での敗退が決定した。
木村一基九段(48)・高野智史六段(28)の師弟に、ようやく本来の笑顔が戻ってきた。優勝候補の一角に数えられていたチーム木村だが、初戦ではチーム深浦の前にスコア0-3でよもやのストレート負け。試合後、木村九段も苦笑いしながら「つまんない」と語るなど、めったにない師弟でタッグを組んでの戦いで、1つも勝てなかったことへのフラストレーションが溜まっていた。それだけに、この勝利はようやく大会に参加できたと実感できるものだったろう。
同じく初戦でストレート負けしていたチーム井上との一戦は、黒星スタートだった。木村九段が第1局に登場したが、名人挑戦の経験もある稲葉陽八段(33)と相掛かりの一局から、積極的に攻めに出た。だが、稲葉八段も冷静で的確な対応で逆にリズムをつかまれると、攻めの手番を渡してからは一気に押し込まれる苦しい将棋に。「大幅に仕掛けたのが結果的に無理だった。お恥ずかしいところを見せてしまった」と反省した。
これで予選は試合をまたいで4連敗。悪い流れを断ち切ったのは、弟子の高野六段だった。ベテラン井上慶太九段(57)を相手に第2局は急戦矢倉になると、師匠の背中を見るように序盤から機敏な動きでリード。「結構、積極的に動けた」と、得意とする受け将棋ではなく、強く出たことがチーム初勝利につながった。
弟子の勝利に気持ちも明るくなったのか、木村九段は第3局で稲葉八段と再戦になったが、ようやく手が伸びた。相掛かりからの一局は、序盤から作戦勝ちになると、「1つ食い破られると逆転してしまう。結構丁寧にやった」と、絶対に逆転を許さない確実な攻めに終始し、隙のない完勝。過去に出場したABEMAトーナメントでは、ベテランながら超早指しで若手もなぎ倒してきた強さを、ついに取り戻した。
チームの勝利に王手がかかった第4局は、高野六段が井上九段と再戦し94手で快勝。スコア3-1での勝利で、本戦出場への希望をつなぐことになった。試合後、木村九段は「せっかくいただいた機会ですので、精一杯力を出したい。全体的には運がよかったです」と振り返ると、高野六段も「苦しい将棋、局面が多かったんですが、崩れずに行けたのがよかった」と自己評価した。超早指しのフィッシャールールの経験値も、参加している8チームの中で最もあると言われるチーム木村。勝つことで調子を上げていけば、改めて優勝候補に名が挙がる
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)