「AD」の呼称変更、テレビ番組の制作現場は困惑?…カンニング竹山「仕事の中身が昔と同じままでは、誰もなろうとは思わない」
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 テレビ各局の制作現場で「AD(アシスタント・ディレクター)」の呼称を変えようという風潮が出てきていると14日の「東スポWeb」が報じ、議論を呼んでいる。

【映像】「呼び方」変える意味って? 誰も傷つかない名称ムリ?

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 番組制作を支える重要な役割である一方、長時間労働やパワハラなどもある“キツい仕事”の代名詞ともなっており、そのイメージを払拭するため、「YD」(ヤング・ディレクター)、「SD」(サブ・ディレクター)」と行った呼称が登場しているというのだ。

■カンニング竹山「仕事の中身が昔と同じままでは、誰もなろうとは思わない」

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 様々なテレビ番組の制作現場を見てきたカンニング竹山は「世間が誤解しているところも多い」と指摘する。

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 「同じADさんでも、報道番組、情報番組、バラエティ番組によって仕事の内容は違うし、ドラマ、映画の場合は“助監督”と呼ばれる。昔はD(ディレクター)・監督になるための修行の時期でもあって、3年くらいはキツい時期が続くことになる。ところがネット番組が出てきたし、学生の頃から動画編集をやっている人も増えたので、放送局や制作会社でADとしてこき使われなくても、あるいはDになれなくても、自分で映像が作れるし、YouTubeの会社だって作れてしまう。

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 そこで起こったのが、今の“AD不足“だ。番組の現場としては派遣会社から来た人を雇うことになるが、中にはディレクターになんてならなくてもいいという人もいるし、僕らのような世代の人たちはこき使うから、“家に帰れないし、なんでこんな使われ方しないといけないの?”となるだろうし、会社としてはパワハラ対策もある。将来Dになりたい、という人のためにも、今ADという仕事のイメージを払拭しないと、人が集まらない。だから違う呼び方にしようとか、“17時に帰っていいよ”というようにしているということだ。

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 もちろん呼び名が変われば人々の意識も変わるので、“おいAD、この野郎”みたいなことも無くなっていくかもしれない。でも、それ以上に肝心なのは、仕事の中身が昔と同じままでは、誰もなろうとは思わないということ。どこまでがADさんの仕事で、どこからはこの職種の人、というふうに変えていかないといけない」。

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 一方、元NHKアナウンサーの堀潤氏は「僕がいた報道番組には、ADさんがおらず、FD(フロア・ディレクター)という、スタジオやロケでカンペをめくったり、尺出しをしてくれたりする方がいた。専門の会社に所属している方々だったが、僕らにとっては命綱。その完璧な職人技に助けられていた」と振り返った。

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 『ABEMA Prime』(平日21時〜23時の生放送)でも、10人以上のAD職が日々、制作に携わっているが、多くが呼称の変更には反対のようだ。

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 新卒でADになって3年、Dになることが目標だという望月美乃里さんは「正直、名称が変わったところで何が変わるのだ、というのが大きい。まだ『ABEMA Prime』しか担当したことがないので他の番組とは比べられないが、入る前にイメージしていたような、“ずっと徹夜”と言うことはない。週によっては忙しい時もあるが、終電で帰れているし、現状に大きな不満はない。

 ただ、“アシスタント”というのは“Dのアシスタント”というよりは“仕事のアシスタント”という意味なので、どこまで自分がやるべき仕事なのか、ということは考えるし、そこは統一した方がいいと思っている。あるいは自分が担当の曜日にはDが4人いて、それぞれに違うことを言われて戸惑うことがあるので、そういうところも統一してほしい(笑)」。

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 番組の司会進行を務めるテレビ朝日平石直之アナウンサーは「望月さんの指摘は大事で、“徒弟制度”のようなところはあるものの、本来は仕事のアシスタント、番組のアシスタントということだと思う。それが“何でも屋“みたいになっているところがあって、担当するDによっても仕事の幅や、やらされることも違っている現状がある」と応じた。

■「足していく方向にするというのはどうだろうか」

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 『三省堂国語辞典』編集委員の飯間浩明氏は「私は言葉の専門ではあるが、テレビ業界の内情は全く知らないので、そこは一般の視聴者の声でもあると思って聞いていただければ」とした上で、“呼称変更”について次のような見方を示す。

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 「ここまでの議論の流れとしては、“別に呼称を変えなくてもいいのでは”という空気が支配的な感じがするので、あえて逆の視点から話をすると(笑)、変えれば、本当に変わるかもしれない、ということだ。突飛な例だが、明治維新後、ここは江戸から東京ー当時は“とうけい”と呼んでいたがーに変わった。“名前を変えたってしょうがない”、“江戸でいいではないか”という意見もあっただろうが、少なくとも“名前を変えたという事実は確かに残る”。その結果、昔話をする時に“東京がまだ江戸だったころ…”という言い方が出てくる。あるいは大蔵省が財務省になった途端に、どこかクリーンなイメージになった」。

 一方、「YD」「SD」など、呼称が乱立することには問題があると指摘する。

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 「呼び方によって男女を平等にしようという世の中の波に乗って、保母さんは保育士に、看護婦さんは看護師になり、今では定着した。ところがスチュワーデスをCA(キャビン・アテンダント)と呼ぶことが定着するためには、かなりの時間がかかった。実は80年代に、ある航空会社がキャビンアテンダントという言葉が使っていたにも関わらず、別の航空会社がフライトア・テンダントと言ったり、一般には“スッチー”と言い方もあったりしたので、2000年代に入るまで、あまり変わらなかった。今回のADについても、名前が乱立気味だと、数年は変わらない。ADさんは“3K”だよねという世間の理解を払拭するためであれば、例えば昇進するごとに“シニア”や“エグゼクティブ”のように、足していく方向にするというのはどうだろうか」。

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 テレビ朝日の田中萌アナは「“ヤング”というのは上の世代の方々が会議室で考えたみたいな雰囲気で、なんとなく今っぽくないなという印象」、堀氏や平石アナも「“ヤング”というのは響きが良くないし、逆にED(エグゼクティブ・ディレクター)は存在しているので、さらにその上を作らないといけなくなるかもしれない」と苦笑していた。(『ABEMA Prime』より)

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