「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(11枚)

 政府が2025年に取得30%を目指す「男性の育休取得」。ところが厚生労働省の調査によれば、2020年度の男性の育休取得率は12.65%。また、取得者の4人に1人が上司や同僚から嫌がらせや不利益な扱いを受けるなどの「パタニティ・ハラスメント」パタハラを経験しているという。

【映像】

 また、人材サービスのパーソルキャリア株式会社が男性管理職を対象に取得期間について調査したところ、「3日以内」は約86%、「1カ月以内」は約68%が賛成したものの、「4カ月以上」となると賛成は約50%と、長期になればなるほど周囲の支持を得にくい傾向にあることも見て取れる。

■益若つばさ「企業は育休を取らせたい、男性は取りたいって、本当に思ってくれているのか」

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 こうした現状について、モデルで商品プロデューサーの益若つばさは「会社側が育休を取らせたいと思っているのか、そして男性側も、本当に育休を取りたいって思ってくれているのかが気になる」と問題提起する。

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 「“3日以内だったら取得してもいい”と考えている人が多いようだが、それって病院でお産に立ち会ってすぐ終わりではないか。3日目なら赤ちゃんはまだ病院にいるはずで、本当の意味での子育てには参加していない。女性の立場から言えば、1カ月、2カ月、あるいは首がすわるまでは沐浴の手伝いをしてほしいし、“お産の確認”をして3日で職場に戻るというのは、“育休を取得した”とは言えないと思う。

 ただ、息子を出産して離婚をし、お母さんとしての経験もお父さんとしての経験もした立場からすると、正直なところ、働いている方が楽だなと思ってしまうこともあった。お仕事でも大変なことはあるが、外の空気を吸えることで、“あれ?なんか楽だな”って。逆にいうと、それだけ家で子どもに向き合い続けるというのは大変なこと。そして、男性の立場からすると、育休を4カ月以上も取ってしまったら、それまでと同じような立場でチームに復帰することは難しいんじゃないかと考えてしまうだろうし、お給料の保障という課題もあると思う」。

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 大正大学の田中俊之准教授は「益若さんがおっしゃったことは、すごく重要だ」と応じる。「私のゼミで卒論を書いている学生が無痛分娩について調査したところ、男子大学生はまず知らないし、それどころか、“お腹を痛めて産まないと愛情が持てないんじゃないか”といった回答もあった。制度も大切だが、そもそも男性の側が妊娠・出産ということについて無関心であるという問題も認識しなければならない」。

■4月に法改正、育休取得状況の“公表義務化”に期待感も

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 そんな中、今年4月には改正育児介護休業法が施行される。

 女性の場合、これまで産前休業6週間・産後休業8週間の休暇取得と子どもが1歳になるまでの取得、さらに保育所に入所できないなどの事情がある場合は2歳まで取得を延長することが可能となっていた。また、男性の場合は子の出生後8週間以内に取得、1歳までの間に再び取得できることになっているが、“3回目はできない”という課題もあった。

 今回の法改正では、まず4月以降に育休に関する個別周知と意向確認が事業者に義務付けられる。また、10月からは「産後パパ育休」として、男性は子の出生後2カ月以内に4週間までの取得が可能となる。

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 田中准教授は「有給休暇についても、“うちの会社にはない”とか“そんなものうちでは取れないんだ”と使用者側が言っていたが、今回の制度改正で、取得が進むことになると思う。また、先ほども指摘したとおり、妊娠・出産の非当事者には産休と育休の違いが分からないひともいると思うが、出産後8週間は産褥期といって、体を休めることに専念しなければならない。つまり、その間はいわば“病人”なのに、これまでの日本では夫が会社に行っている間は赤ちゃんの世話をし、家事をやっていたわけだ。つまり、とりわけこの8週間というのは“妻のケア”に充てるための重要な期間だし、男性が取得できるようになることは非常に有意義だ。また、分けて取得できるような柔軟性があるので、使い勝手もいいと思う」とコメント。

 さらに来年4月からは、従業員数が1000人以上の企業に対し、育休取得状況の公表が義務化されることについても、「四季報などを読んでいると“離職率”という項目があるが、企業によってはN/A(ノー・アンサー)というところもある。就活生がそれを見て“公表できないということは、ヤバい会社なんだな”と思うように、“働き方改革”だとか“ダイバーシティ&インクルージョン”というのが単なるアドバルーンなのかどうかの目印になると思う。この数字は、転職市場においてもかなり効いてくると思う」と期待感を見せた。

■中小企業、収入面で残る課題…育児休業給付金はいつまで持つのか?

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 一方、慶応義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「安倍政権以降の“働き方改革”に伴って、大企業は有給休暇や残業も含め規定をすでに変えていっていて、育休についてもパパの方が長く取得したといったケースも出てきているし、もっと先に行っている会社もいっぱいある。問題は、中小企業だ。産休や育休に入る社員がいても、大企業なら補える仕組みがあるが、中小企業は営業担当が1人抜けただけで大幅な戦力ダウンになることもあるだろう」と指摘する。

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 田中准教授は「中小企業においては女性が退職し、年収もキャリアも台なしになってきたという問題だ。やはり、“男性がいないと困る”という我々の認識の枠組みはよく考えて議論しないといけないと思う。加えて、家事や育児というのは無償だし、いくら頑張っても評価もされないし、誰も褒めてくれない。この、社会から置いてきぼりにされているという感覚を日本社会は女性に一方的に押し付けてきた。益若さんが無力感を感じたのも、そういうところにあると思う」とコメント。

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 テレビ朝日平石直之アナウンサーは「本当にそう思う。確かに制度は整ってきている、じゃあ、どうなのかとなった時に、男性は“ここから20年間、この子を育てていかなきゃいけない。頑張らなきゃいけない”と思う。そして“手伝いたいけど、休んでいる場合じゃない”と思ってしまう。要するに、制度は使ってもらわなければ意味がない。企業の中で“休まないといけない”と強制されるくらい、“休まないと弊害が出る”というくらいにならないと、なかなか取得は進まないかもしれない」と話した。

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 また、エンジニアの池澤あやかからは、現行の「育児休業給付金」の制度では、給与の3分の2までしか保障されないことについても疑問が出た。

 田中准教授は「3分の2というのは世界的に見ても手厚いし、社会保険料も免除になる、日本は世界で一番育児休業のシステムが整っている、として推進しようとする人がいるが、とはいえ、女性が取るという前提で制度設計されたもの。そもそも日本は男女の賃金の格差が大きく、フルタイムで働いていても10対7だ。平石さんが言った、男の人が“ここで頑張らないと”という考え方になるのも、賃金が圧倒的に女性の方が低いからだ。加えて、“3分の2”というのには賞与は入っていないので、かなりの減収につながるし、“貯金ゼロ”のような世帯ではリアリティがない数字だ。

「会社は育休を取らせたい、男性は育休を取りたいって、本当に思ってくれているのか」益若つばさと考える、日本企業と子育て支援制度
拡大する

 そして、そもそも育児休業給付金は雇用保険で賄われているので、男性が育児休業を取りだした場合、財源がいつまで持続できるかという問題も出ている。やはり“子どもを生んだほうが良いですよ”“育休を取りましょう”と言われても、あまりフォローされていない、社会に守られていないという感覚が生じています。これは長期的に解決していかなければならない問題だ」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)

この記事の画像一覧
男女平等が少子化救う?得手不得手で役割も変えるべき?専業主夫の葛藤と現実
男女平等が少子化救う?得手不得手で役割も変えるべき?専業主夫の葛藤と現実
給付制度は「世界一の水準」と言われる一方で…男性の取得率“2025年に30%”への課題
給付制度は「世界一の水準」と言われる一方で…男性の取得率“2025年に30%”への課題
4月法改正でパパ育休は進む? 管理職半数「4ヵ月以上 反対」
4月法改正でパパ育休は進む? 管理職半数「4ヵ月以上 反対」
「なんで昼間に公園にいるの」ママ友の輪に入れず…育休男性の悩み

■Pick Up
「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側

この記事の写真をみる(11枚)