「ABEMAトーナメント」では記録係、というよりも振り駒の「と金ボーイ」として知られる若者が、ベテラン棋士の快進撃を支えていたというから驚きだ。「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Bリーグ1位決定戦、チーム鈴木とチーム中田の対戦が1月29日に放送され、チーム鈴木・鈴木大介九段(47)は2戦2勝と活躍、チームの勝利に貢献した。予選では無傷の4連勝と最高の成績を収めているが、この理由に鈴木九段は、奨励会員である小山泰希初段のアドバイスがあったと明かし、ファンから「小山システム!」「そんな参謀がw」と注目を浴びることになった。
鈴木九段は振り飛車党で、早見え早指しの棋士。迫力ある指し回しが特徴ではあるが、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算というフィッシャールールには手こずり、過去に出場したABEMAトーナメントでも、満足いく成績は出せていなかった。ところが同じルールで行われている師弟トーナメントでは、1回戦で2連勝、そして1位決定戦でも2連勝。個人としてはこれ以上ない結果を出した。この原動力となったのが、得意戦法である四間飛車の作戦だ。相手がフィッシャールールで頻出する居飛車穴熊を用いてきた時の工夫だが、これは1回戦で都成竜馬七段(32)を相手に成功。この1位決定戦では名人3期の実績を持つ順位戦A級棋士・佐藤天彦九段(34)に対して使った。
既に一度披露していた指し方ではあったが、結果的に作戦は大成功。敗れた佐藤九段が「どこが悪かったのか、すぐにわからない。しっかりした認識が事前にないと対応するのが難しい形」と、初見に近い状況で対応するのは困難だったと脱帽するほどだった。
対局後、弟子の梶浦宏孝七段(26)に「いやー、今日イチだったね。ナイスショット。250ヤード飛んだね」と上機嫌に語った鈴木九段だが、作戦については「普段、振り駒をする小山初段に聞いて、まんまやったら作戦勝ちできた。小山初段のおかげです」とニンマリ。これにはファンからも「まさかの小山アドバイスwww」「小山師匠」と、小山初段に向けて多くのコメントが送られていた。
小山初段は、ABEMAトーナメントほか、ABEMAのオリジナル対局番組で記録係を多数務めているが、振り駒の際に「と」が多く出ることから「と金ボーイ」とも呼ばれ、ファンに親しまれている。いつしかマスコットキャラクター的な認識も強まっていたところだが、トップ棋士の熱戦を間近で見てきた若者も、その棋力には確かなものがあった。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)