高騰が続くガソリン価格。政府は先月27日から、レギュラーガソリンの全国平均価格が1リットル当たり170円を超えた場合、石油元売り会社に対し1リットルにつき最大5円の補助金を出すという異例の価格抑制策を導入している。ところが消費者やガソリンスタンド側からは効果に疑問の声も上がっており、期限が切れる3月末以降に不安が募っている。
8日の『ABEMA Prime』に出演した元経産官僚で政策アナリストの石川和男氏は「当局の人には申し訳ないが、今回の補助金制度は失敗だ」と断言する。
「納税者としては、例えば石油業界に流した税金の分だけ価格が下がり、ガソリンスタンドの値段にも反映されていれば、“ある程度はしょうがないな”と納得もできるだろう。しかし今回の補助金は小売りではなく、元売りに流しているので、流通までにはいくつかの段階がある。だから料金にうまく転嫁されるかというと、そういうわけではない。
だからこそ、“上昇抑制策”という、保険をかけた言い方にしているのだろうが、実際に抑えられたという立証も非常に難しいだろう。日本の場合、石油、石炭、天然ガスといった化石燃料は99.9%を輸入に頼っているので、補助金を出した後で国際金融情勢が変化し、為替相場が円安に振れた瞬間に吹っ飛んでしまう。だから効果が出るまでにタイムラグがあって、そこまでに円高に振れれば“何となくうまくいったな”と思えるかもしれないが、必ずしもそういうわけではない。
僕が“当局の人に申し訳ないが”と言ったのは、この政策をやりたがった人は一人もいないだろうと思うからだ。今みたいに簡単に責められてしまう政策を、誰も作りたいとは思わないはずだし、政治の指導力がなかったということだろう。僕は評価しない。考え直した方がいい」。
そこで注目されているのが、東日本大震災の復興財源確保のために凍結されている「トリガー条項」だ。ガソリン税の暫定上乗せ分の25.1円分を一時停止するというものだが、法改正が必要であることから、岸田総理は7日の衆議院予算委員会で「ただ今現在、触ることは考えていない」と否定的な考えを示している。
そんな中、JAF(日本自動車連盟)が「自動車ユーザーへの過剰な負担増や、到底理解・納得できない課税形態は早急に見直しをすべきと考えます」と、税制の見直しを求める声明を発表し話題となっている。
石川氏は「トリガー条項は効果抜群だ。ガソリンスタンドのレシートのガソリン税額が減っていれば、負担が減ったと感じられるだろう。条文をちょっと変えればいいので、実務的には午前の衆議院、午後の参議院と、やろうと思えば1日でできちゃうくらい簡単だが、政府、霞が関の中の“パワーバランス”がある。そういうことを考えると、おそらく法律改正はできないだろう」との見方を示す。
「慣例的に、税制改正というのは年度の途中ではやらない。それから、この税収は、以前は道路特定財源といって、道路工事などに使われていたが、15~16年前に一般財源といって、極端な表現をすれば道路以外に使いましょうということになった。つまり国交省から財務省に移っているし、エネルギーの所管でいえば経産省だ。ガソリンにはガソリン税に加えて消費税、石油税というのが入っているので、そういうのにまで響かせるのが嫌なんだろう。
やはりそれぞれの税収をメインにして予算の交付を受け、政策を実行しているところからすると、財務省にしてみれば消費減税は嫌だし、経産省にしても石油減税は嫌だ。国交省も、航空機燃料税まで安くしろと言われるのは嫌なわけだ。萩生田経済産業大臣が、あるいは総理がトリガー条項に触れると混乱が起こるというようなことを言っているのは、そのことだ。まさに“トリガー”というのは言い得て妙で、一つやっちゃうと全部に影響する。
僕もそうだったが、役人というのは、できない言い訳するのは天才的にうまいが、これをやれば道が拓けるということは、言いたくても言えないという変な空気がある。それでも、こういう時こそ政治、政権与党に慣例を打ち破ってほしい。役所から怒られるかもしれないが、僕の想像では、トリガー条項は民主党政権時代に作られたものだからやりたくないということもあるのではないか。これが民主党政権よりも前の自民党政権で作られたものであれば、意外とすんなりいけたと思う。だから選挙が近かったらやるかもしれないが、今の政治状況では無理だろう」。(『ABEMA Prime』より)
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