将棋のALSOK杯王将戦の七番勝負第4局が2月11、12日に行われ、藤井聡太竜王(王位、叡王、棋聖、19)が渡辺明王将(名人、棋王、37)に勝利、シリーズ無傷の4連勝で王将奪取に成功した。この結果、藤井竜王は史上4人目となる五冠を、最年少19歳6カ月で達成。従来の記録を1年以上上回り、初の「10代五冠」を成し遂げた。
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偉大な大先輩たちと肩を並べ、さらには上回るような快記録をまたも打ち立てた。8タイトルのうち四冠保持者と三冠保持者がタイトル戦でぶつかるという史上初の「頂上決戦」となったが、終わってみればスコアは藤井竜王の4勝0敗というストレート勝ち。その強さがさらに際立つ形となった。過去の五冠達成者は故・大山康晴十五世名人(五冠独占)、中原誠十六世名人(74)、羽生善治九段(51)という、永世名人にもなった3人だけ。さらに羽生九段が保持していた五冠の最年少記録、22歳10カ月を1年以上も上回っての五冠だけに、その突き抜けた力を誰もが認めざるを得ない状況になった。
王将奪取に王手をかけた第4局は渡辺王将が先手番から矢倉に向かうところ、藤井竜王が後手番から雁木で迎え撃った。1日目の午前中はお互いの研究範囲でもあったのか、午前9時の開始から昼食休憩までの3時間30分で61手目までハイスピードで進むことになった。ただ、休憩明けの午後1時30分からは封じ手の午後6時まで10手しか進まず、72手目を藤井竜王が封じ手。1日目から終盤に突入する激しい展開になった。
明けて2日目は、持ち時間でリードしていた渡辺王将が指しやすいかと思われたが、渡辺王将が受けに回ったタイミングで藤井竜王がグッと踏み込むと、ここからペースは徐々に藤井竜王に。渡辺王将もなんとか巻き返そうと蓄えていた時間をつぎ込み長考を入れたものの、その差は縮まることなく最終盤に突入。駒損よりも速度を重視した藤井竜王の攻めが、粘る渡辺王将を振り切る形で寄せ切り、力強い勝利を収めた。
8つあるタイトルのうち、ついに過半数の五冠を達成した藤井竜王。前人未到の八冠独占も、いよいよ夢ではなくなってきた。1996年に羽生九段が当時7つだったタイトルを全て保持する「七冠独占」を達成したが、それから四半世紀が経った今、大記録に突き進んでいる。残すタイトルは名人、王座、棋王の3つ。3月9日に行われる順位戦B級1組の最終戦で来期のA級入りを決めれば、来年度にも全冠制覇の可能性が生まれる。今がピークではなく、課題を見つけて強くなりながら勝つ令和の天才棋士には、油断や奢りは微塵も見られない。
(写真提供:日本将棋連盟)